こうして、女性目線を重視した梅酒の開発が推進されることとなった。では、彼女たちに企画をさせるに当たって、どのようなこだわりに基づき、あるいはどのようなルールや基準に基づいて行わせていたのだろうか?
「『何であれ、やってみないと分からない』というのが私の持論です。言い換えるならば、『先入観は新商品をカットする』という考え方です。だから、『こんなことをやったって、うまくはいかないだろう……』などと言って、アイデアを否定するようなことは一切ありません。
その証拠に、これまでに試作した梅酒の数は100種類を超えます。和歌山県産の柑橘類は例外なくすべて試しましたし、柑橘類に限らず、和歌山名産ということで、魚のクエやサンマの一夜干しも試したんですよ(笑)」
100種類以上を試作して、市場に出ているのが30種類。ということは打率3割ということになるが、これを高いと見るか、低いと見るか? その質問に対し、中野さんは「イチローだって打率3割ですからね」と言ってニッコリほほえんだ。誇るべき打率ということだろう。
「今後も、この打率を向上させようとは思いません。そういうことにこだわること自体が、発想の幅を狭め、新しい可能性を閉ざすことにつながるのですから」
全部を紹介することはできないが、中野BCの梅酒の主要なラインアップは次のようなものである。「ゆず梅酒」「イチゴ梅酒」「シークァーサー梅酒」「赤い梅酒」「緑茶梅酒」「ブルーベリー梅酒」「じゃばら梅酒」「山椒のうめ酒」「高麗人参梅酒」「一根六菜」(=ホウレンソウ・レタス・クレソン・パセリ・セロリ・キャベツ・人参)……。
それぞれに思いのこもった個性的な商品であるが、中でも「ブルーベリー梅酒」は、その名も「ミルティーユ」(フランス語でブルーベリーの意味)。2009年から女性社員が企画して、今年夏に発売された商品で、梅酒特有の日本風の雰囲気を排し、ボトルやラベルはワインを想起させ、フランス語によるネーミングはリキュールをイメージさせるなど、若い女性を強く意識した商品となっている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.