ビジネスチャンスを創出する、これからのWeb戦略とはWeb最適化で勝つ(1/2 ページ)

Webサイトがビジネスチャンスを作り出すメインエンジンになる――。以前から語られてきたが、それを実現できる企業とできない企業の差がはっきりと出るようになった。実現に成功した企業の取り組みを紹介しよう。

» 2010年10月12日 12時00分 公開
[大西高弘,ITmedia]

 ITmedia エンタープライズ編集部の主催によるソリューションセミナー「Web最適化がもたらす 新たなビジネスチャンス」が9月28日、都内で開催された。Webを軸としたビジネス強化法ともいうべきさまざまな話題が展開された。

着実な成長を支える解析ツール活用術

鈴木尚氏 楽天 取締役 常務執行役員 鈴木尚氏

 冒頭の基調講演には、楽天 取締役 常務執行役員の鈴木尚氏が登壇した。「オンラインビジネスで勝ち続ける 楽天のWeb最適化戦略」と題した同氏の講演では、まず6400万人の会員を軸としたワンストップの循環型インターネットサービス――いわゆる楽天経済圏と称される――によるビジネスモデルの効果測定をどのように進めるかという問題が語られた。

 「いかにWebサイト内の回遊性を高めるかがこのビジネスで成功するポイントだ。旅行のための宿を予約する、株を購入する、日常品を買うというように、できるだけ多くの生活シーンで楽天を利用してもらいたい。成長の鍵はそこにある」(鈴木氏)

 鈴木氏によると、普段から複数のサービスを利用するマルチユースの顧客は、単一のサービスを利用する顧客に比べて、1つのサービス当たりの購入額がはるかに大きいという。

 しかし、Webサイト内の回遊率を高める秘策があるわけではない。一口で言えば、試行錯誤の積み重ねしかない。楽天は、「仮説・実行・検証・仕組み化」というフレーズで試行錯誤の中身を表現している。中でも「仕組み化」は独自のコンセプトであり、ルーティン化してしまうということである。

 鈴木氏によれば、「属人的にならず、誰でもその仕事ができるようにならなければ、ある仕事が“仕組み化”されたとはいえない。“仕組み化”されなければ成長は鈍化してしまう」という。「仕組み化」は、成長のために必要不可欠な作業なのである。

 Webサイト内の回遊率を高めるためには、約40ある同社のすべてのサービスで誰もが実行できなくてはならない。楽天ではそのように考え、アクセス解析ツール「SiteCatalyst」を全サービスに導入することを1997年に決定した。

 導入プロジェクトのリーダーに任命された鈴木氏は、スクウェア・エニックスの取締役を務めた経歴を持つだけに、最初のうちは全社導入をそれほど難しいことではないと考えていた。だが、すぐにその考えが甘いことを思い知らされた。

 「開発を担当する技術スタッフを説き伏せるのにも、スタッフにツールを使ってもらえるようにするにも、細かな配慮が必要だった。要するにこのツールを使えば、良いことがきっと起こるということを知ってもらうということ。事業部横断型の『アクセス解析・最適化推進チーム』を組織したが、このチームが社内で認められるようになったのは、導入した事業部で明らかに効果が見えるようになり、ほかの事業部も注目し始めた時からだった」(鈴木氏)

 楽天では、ツールをすぐに全社導入し、担当者がそれを使って成長のための試行錯誤を開始した。鈴木氏によるとツールを使うことで、「根拠のない仮説は立てない」という傾向が社内でそれまで以上に徹底されたという。

 「何となくこちらの方が良いのではないかという意見が出されるが、採用はされない。コンバージョン率やページビュー関連の数字も、できるだけ細分化して指標にしている。数字で説明するときも、大まかな数字でプランニングした計画では認められない」

 楽天の国内の流通総額は今や1兆円を超える。アクセス解析ツールによるWeb最適化の取り組みは、Webビジネスの基本的な戦略とされるが、それを明確なポリシーとして周知徹底させ、運用していくことが勝負の分かれ目であるようだ。

安全性の高いWebサイトが生き残る

平岩義正氏 日本ベリサイン SSL製品本部部長 平岩義正氏

 日本ベリサイン SSL製品本部部長の平岩義正氏によるセッション「ウェブの安全性『見える化』によるコンバージョンアップ術」では、インターネットユーザーがWebサイトに求めるセキュリティがテーマとなった。

 昨今はサイバー犯罪が増加傾向にあると言われる。ECサイトのショッピングでは、「金銭に直接つながるような脅威が存在するのではないか」と不安がるユーザーが増えていると、平岩氏は指摘する。さまざま調査資料からも、「ECサイトでの買い物にクレジットカード情報を入力したくない」「個人情報の保護に不安がある」といった意見が目立つという。

 つまり、ユーザーは何らかの要因でWebサイトを「信用できるもの」か「信頼できないもの」に大別する。Webサイトをビジネス成長のエンジンとするには、まずユーザーに「信頼できるWebサイトだ」と判断してもらう必要がある。

 信頼感や安心感を与える要素には、さまざまなものが挙げられる。例えば、Webサイトの運営者、スタッフの顔写真、ブログなどが掲載されているといったことに効果があるだろうし、Webサイトが雑誌などに紹介されると、信頼が一気に広まる傾向もある。

 しかし、インターネットユーザーが最も気にするのは、そのWebサイトでやりとりされる情報が暗号化されているか、あるいは、そのWebサイトが本物であるかという点だ。平岩氏は、「当社の調査でも85%以上のインターネットユーザーがSSLサーバ証明書の必要性を挙げている。SSLはWebサイトとの送受信データの暗号化、そして、Webサイトの運営者に対する認証を行っている点で、個人情報を提供できるという安心感をユーザーに与えられる」と語る。

 日本ベリサインは、最新のSSLサーバ証明書「EV SSL証明書」によってセキュリティの見える化に取り組んでいる。EV SSL証明書を導入したWebサイトを表示すると、Webブラウザのアドレスバーが緑色に変化する。これは同社が各ブラウザベンダーと共同で進めている施策だ。

 また、ユーザーの協力も仰ぎ、EV SSL証明書の導入効果も測定している。EV SSL証明書でアドレスバーが緑色に変化するのは、Internet Explorerではバージョン7.0以降となっている。アドレスバーが緑色になっていることが見えるユーザーの対応の違いを、それ以前のバージョンのユーザーと7.0以降のユーザーとの間で測定したのだ。

 その結果、多くの企業のWebサイトでコンバージョン率や購入率に違いが現れた。EV SSL証明書を導入しているケースの方が、10〜20%程度良い結果が出たのだという。「EV SSL証明書だけが信頼性を高める手段になるとは思われないが、安全なWebサイトであることをEV SSL証明書によってユーザーに知らせるだけでも、これだけの成果が出る」(平岩氏)

 攻めの戦略ばかりに気を取られている企業にとって、Webビジネスの成長には信頼性や安全性も重要だとする平岩氏のメッセージは、重要な提言となりそうだ。

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