第2のレベルは、「カスタマー・リレーションシップ・マーケティング(顧客との関係作り)」だ。ここでは、セグメントから一歩進んで、購買履歴から傾向をとらえ、購入頻度の高い商品の購買促進や、関連商品の販売を提案していく。
企業としてどうつきあいをすべきかをはっきりさせる必要があるため、顧客別に家計支出の中で自社のウエイトを計るワレット・シェアや、利益をどれだけ上げてくれるのかを示す利益性の指標、さらには、長期間でのつきあいを表すライフタイムバリュー(LTV)の指標を設定する。顧客情報を適宜分析することによって、顧客の変化を分析し、適切な対応策を実施する。
数十万、数百万に上る顧客の過去2年/3年の購買記録となると、データ量としては膨大であり、この中から顧客行動を探り出すのは容易ではない。度重なる仮説と検証の試行錯誤では限界に達してしまうかもしれない。このため、データマイニングツールやビジネスインテリジェンスアプリケーションが開発され、実用化されてきている。
これらの技術を駆使して、個々の顧客のワレットシェアを高めるのか、利益性の向上を狙うのか、長期間のつきあいを通じてLTVで勝負するのか、ビジネス上の意思決定の方向性を占う。
第3のレベルは、カスタマーセントリックマネジメントだ。これは、顧客を中心に据えた経営と言える。顧客との関係を構築させたら、次は、企業経営も顧客を中心としたものに進化する。商品、販売、経理財務、広告宣伝といった機能主体で構成されている現在の組織は、顧客セグメント別に再構築される事になるだろう。
顧客別の取引記録を基に、顧客層を仮に、超優良顧客、優良顧客、一般顧客と分類したとすると、それぞれの顧客層への対応は異なってくるはずである。
超優良顧客に対しては、売り上げや利益の貢献度は極めて高く、個別の要請への対応、商品の配送、総合生活提案、コンサートやディナーへの招待、投資や金融に関しての情報提供など特別の対応をする必要がある。顧客担当のみでは重要顧客を満足させることはできない。商品、宣伝広告、デザイン、販売、サービスのセクションが一体となった組織対応が必要であり、さらには経理/財務からの参画や詳細データを分析するためのアナリストの参入も考えられる。新しく構成されたチームの目的は、重要顧客のライフタイムバリュー(生涯価値)をいかに高めるかで、損益計算書もこの顧客カテゴリーに対して作成され適時分析される。
また、優良顧客に対しては、リテンションレート(顧客維持率)をいかに高めるかが主要目的となる。この目的実現に向けて、販売、商品、宣伝広告、サービス、経理/財務の各部門からメンバーが集められチームが構成される。同様に一般顧客に対してもチームが編成され、このカテゴリーの目的である一般顧客の優良顧客へのステップ・アップに向けてのビジネスが推進される。
著者:舟本秀男氏(舟本流通研究室代表)
日本NCRにおける33年間の業務経験と、5年間の米国勤務経験を基盤に、流通業を革新するための最新の取り組みを研究することで知られる。平成11年に舟本流通研究室設立、米国ムーンウォッチメディア社と業務提携し『リテール・システムズ・アラート』日本語版を発行。日本経済新聞が主催するRetail Technology Summitの企画も手がける。
経済産業省委託、2002年「SCM推進のための商慣行改善調査委員会」委員。総務省、2002年「国際競争力回復のための企業IT化戦略研究会」委員、ほか。著書『流通再生戦略(同友館)』『図解CPFRがわかる本(日本能率協会マネジメントセンター)』など。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.