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» 2018年12月26日 12時00分 公開

事業拡大のヒントを共有する:パソナ、バニラエア、DHCのマーケターと小川 卓氏が振り返る2018年のPDCA (1/2)

2018年のWebサイト改善の取り組みをどのように進めたのか。現場でPDCAを回す各社のマーケターが、業種の違いを超えて施策の進捗(しんちょく)を共有した。

[織茂洋介,ITmedia マーケティング]

 WebサイトのUI/UX解析ツール「USERDIVE」およびWebサイト改善コンサルティング を提供するUNCOVER TRUTHは2018年11月14日、創業5周年を記念して初の大規模プライベートイベント「USERDIVE connect」を開催した。

 本稿ではさまざまな業界のマーケターがデジタルマーケティングに関する有益な情報をシェアする場となった同イベントから、「事業を拡大させるデータを活用したマーケティングのPDCA」というテーマで行われたパネルディスカッションの概要を紹介する。

 登壇者はパソナ CE募集企画室 webディレクターの石井邦利 氏、バニラエア 販売促進部 シニアマネージャー 桑本豊彰氏、ディーエイチシー IT推進部 IT戦略課 課長の小森谷 裕之氏の3人。モデレーターはWebアナリストでUNCOVER TRUTH CAO(Chief Analytics Officer)の小川 卓氏が務めた。

左から小川 卓氏、小森谷 裕之氏、桑本豊彰氏、石井邦利氏

PDCAを回す上で一番大事なこと

 データはうそをつかない――小川氏は、ことあるごとにそう言い続けてきた。Webサイト運営に王道はない。数値を見れば顧客のインサイトが分かる。Webサイトを訪れた人は、気に入れば長く滞在するし嫌ならすぐ離脱してしまう。コンバージョンの有無で、見ているコンテンツは明らかに異なる。

 どのようなコンテンツ、どのようなUI/UXを用意するにしても、それを成功に結び付けるには、まず成果を正しく数値で把握し、日々改善を重ねるというPDCA(Plan/Do/Check/Action)が欠かせない。そこで小川氏は初めに、PDCAを回す上で気を付けていることについて、各登壇者に尋ねた。

失敗から学ぶことの重要性

 パソナの石井氏のミッションは、Webを中心としたデジタルチャネルを経由して、働きたい人がパソナに出会うきっかけを作ることだ。派遣社員は雇用主と職場が異なる。まずそこをきちんと理解してもらわなければいけない。数字を見て、またヒートマップなど視覚化ツールの力を借りながら、顧客のインサイトを読み解くことはとても重要だ。

 同社では、サイト全体を分析した際に「お仕事開始までの流れ」というコンテンツに触れたユーザーのCVが高いことが分かっていた。そのため、案件詳細ページの中にも「詳しく見る」ボタンを設置して、そのコンテンツへのリンクを埋め込んだ。そうすることで興味関心が十分に醸成された人に対して最後のひと押しとなる……はずだった。ところが、実際には、コンバージョンが22%も下がってしまったのだ。

 改善施策に関わった小川氏は、コンバ―ジョンへの意思がある程度固まっている人に対して「詳しく見る」というアクションを取らせることがかえって手間だったと分析する。そこで、リンク先を申し込みフォームに変更したところ、改修前を100として138%までCVRを引き上げることに成功した。途中の失敗から、結果的に新しい発見を得られたといえる。

国内外で全く異なるカスタマージャーニー

 バニラエアの桑本氏も、データを見て初めて得られた気付きについて語った。

 LCC(格安航空会社)であるバニラエアでは、国内向けのみならず台湾向けのWebサイトも運営している。同社にとってのWebサイト運営は、桑本氏の言葉を借りれば「多言語の越境ECサイトを運営しているようなもの」だ。LCCは売り上げの多くをWeb経由が占めるが、バニラエアではこの台湾向けWebサイトの貢献度が非常に大きいのだという。

 Webサイト改善はもともと国内だけで進めていたが、そちらで一定の成果を挙げたことで、台湾向けにも横展開することになった。まず両サイトでユーザーが予約に至るまでの過程でどういう行動を取っているのかを比較分析すると、驚くほど傾向が違うことが分かってきた。

 台湾向けのサイトではこれまで、予約への動線がはっきり分かればいいという程度の考えしか持っていなかった。しかし、ユーザーの実際の行動を見ると、グルーバルナビゲーションでタブを細かく切り替えながら、かなり多くのページを念入りに見た上で予約に進んでいることが分かってきた。

 考えてみれば、もっともな話だった。日本でならまだしもバニラエアは台湾ではまだそれほどの知名度はない。知らないキャリアで海外に渡るユーザーができるだけ多くの情報を収集しようと努めるのはごく自然なことだ。

 グローバルサイトにおいて個別の市場最適化のために施策を打つべきかは悩ましいところではあるが、データとして顕著に表れている違いを無視する手はない。バニラエアでは、予約に不安があることを踏まえて必要なページへの動線を分かりやすくし、コンバージョンへの貢献度が高かったコンテンツをトップページのヘッダーに追加するといった改善で、CVRを向上させることができた。

 小川氏は「ひと口にWebサイト改善といっても、背景が違えば打ち手が変わってくる。提供しているサービスが一緒でも国によって探し方が違うのであれば、それに合った見せ方の設計が求められる」と語る。

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