より原点に近いところからPDCAの考え方を深める本連載。今回は、Webサイト改善の実例について「AbemaTV」を運営するサイバーエージェントの須磨守一氏に対談形式でお話を聞きます。
この連載の第1、2回では「何についてPDCAを回すのか?」を設計するための考え方とプロセス、そしてPDCAを評価するKPIの重要性について説明しました。また、続く第3回は、私が以前に改善活動に携わった「@nifty不動産」の担当者にご登場いただき、KPIを設定する考え方のプロセスが具体的にどのようなものであったか、対談形式で聞きました。
今回は、私がCAO(Chief Analytics Officer)を務めるUNCOVER TRUTHが改善活動をご一緒したサイバーエージェントの須磨守一氏から、同社の「AbemaTV」の事例についてお話をうかがいます。無料でテレビ番組が見られるインターネットテレビ局のサイト改善とあって、KPIに対する考え方も前回ご紹介した内容とはずいぶん違うものですが、サイトの特性に応じた柔軟なKPI設定の重要性をお伝えできればと思います。
小川 須磨さんはどのようないきさつで現在の業務を担当することになったのでしょうか。
須磨 もともとは、グラフィックデザイナーとしてキャリアをスタートしました。2011年にサイバーエージェント(以下、CA)に入社してからは、デザイナー兼Webディレクターとしてサービスの開発に携わっていました。開発をする中でさまざまな施策を実行しましたが、事業指標はあるものの個々の施策を評価する仕組みがなく、“肌感覚”に頼ることが多かったんです。そのような状況から脱却し、データに基づいてきちんと評価する環境を作りたいと思い、2014年にWebアナリストに転向しました。小川さんの著書を読んだりセミナーに参加したりと、独学でのスタートでした。
小川 AbemaTVというサービス自体、全く新しい取り組みだったと思いますが、開発当初の状況を教えていただけますか。
須磨 2016年4月に開局が決まっている中、前年10月に分析の準備を始めました。もともと担当していたニュースメディアやブログなどのメディアサービスの延長線上で考えていたのですが、24時間365日無料のインターネットテレビ局は全く新しい取り組みで、どの数字を追いかければいいのかも、そのためのツールをどうすればいいのかも、一から決めていかなければならない状況でした。ツールは結果的にGoogleアナリティクス360を活用することにしましたが、これはもともと契約があったことに加えて、開かれた解析プラットフォームとしての使いやすさやを社内で共有できていたためです。
Googleアナリティクスの活用に関しては、各担当者が自走できるように勉強会を行ったり、Googleアナリティクス公式個人認定資格「GAIQ」取得プロジェクトを立ち上げたりして、AbemaTVだけでなくサイバーエージェントのメディア管轄向けの人材育成も行っています。今では、事業責任者をはじめプロデューサー、エンジニア、デザイナーなど50人ほどがGAIQを取得し、日々の運用・開発に役立てています。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.