アイティメディアとユーザベースが「ABM時代のデジタルマーケティングとは」をテーマに共催したセミナーの内容を、ダイジェストで紹介する。
アイティメディアは、ユーザベースと共同で「ターゲット企業との接点を開拓する ABM時代のデジタルマーケティングとは」と題したセミナーを開催した。今回のセミナーでは、アイティメディア リード研究所所長の小柴 豊が、B2Bマーケティングの課題を整理しながらABMの概要および導入のポイントを解説。続いて、ユーザベース 日本事業統括執行役員の佐久間 衡氏が、自社製品である企業・業界分析のオンライン情報プラットフォーム「SPEEDA(スピーダ)」を活用してABMに取り組み、成果を挙げた軌跡を紹介した。
小柴は冒頭、昨今のB2Bマーケティングの課題と、その解決手段としてのアカウントベースドマーケティング(ABM)の意義を説明した。
リードの数を増やすべく、外部の展示会でのリード獲得やデジタルのリードジェン施策を導入するも、営業からは「案件化率が低い」と不興を買い、マーケティング担当者もリストを精査するだけの時間や手間がない。こうして、せっかく獲得したリードもフォローのタイミングが遅れたり放置されたりして、機会損失が起こってしまう。
多くの会社で共通して抱えるこうした悩みを解決するメソッドとして注目を集めるようになったのが、ABMだ。旧来のデマンドジェネレーション施策はリード(個人)が主な成果となっており、アカウント(企業)視点で考える営業部門とは目指すゴールが異なっていた。ABMでは最初にターゲットとなる企業を定義し、マーケティングと営業の目的意識を一致させ、個別のマーケティングシナリオを展開する。リードの「量」よりも「質」にこだわると言ってもいい。
では、ABMを実践しようとしたとき、どのようなフローを踏めばいいのか。小柴は、ABMの実践に当たっては以下の3つのフェーズがあると解説した。
まず、理想的な顧客像を定義する。取引履歴や企業規模、業種の傾向から、ターゲットとなる顧客像を明確にすることで、ターゲット企業を選定する。理想的な顧客像の定義に当たっては、定量分析/定性分析の両方を行うこと、また、社内各部署で「理想の顧客像」のイメージを共有することが重要となる。この理想の顧客像をベースに、企業データを分析し、予測(Predictive)分析/購買意向(Intent)分析をしながら、対象となるアカウントを選定し、ターゲットリストを作成していく。
次に、ターゲット企業へのリーチ状況を把握し、状況に応じたリーチを進める。ポイントは、マスな手法による不特定多数へのリーチではなく、ターゲット企業内の意思決定関与者にリーチすること。そのために、紙のDM送付や電話でのヒアリングといったアナログ手法と、企業指定のターゲティングメールやオーディエンスターゲティングを利用したメッセージングなどのデジタル手法を、リーチしたい企業や組織に応じて使い分ける。ここで重要なのは、リード獲得の量ではなく質に意識を転換すること。
ターゲット企業への到達頻度と内容を管理する。ABMでもコンテンツマーケティングを使うわけだが、ABMでは個別ターゲット企業ごとにカスタマイズを行う。クオリファイにおいては、リードスコアではなくターゲット企業ごとのエンゲージメントの状況を可視化し、判断する。また、コールについても短期的な案件発掘やアポ取りをするテレマーケティングから、長期的な関係構築を目指すインサイドセールスへのシフトが必要となる。
上記3つのフェーズの中で、Identifyは既存のMAにはない要素であり、ABMを成功に導くポイントとなる。ABMを成功に導くためには、「どのような企業が理想的な顧客なのか。全社的に共通理解を持ち、的確なターゲットリストを作ってアプローチすることが大切だ」(小柴)という。
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