急成長スタートアップ企業のマーケティング戦略とは?――野田洋輔氏(Kaizen Platform)リード研所長が聞く(1/2 ページ)

世界が注目するスタートアップ企業はマーケティングにおいて何を重視しているのか。Kaizen Platform マーケティングリードの野田洋輔氏に話を聞いた。

» 2016年10月13日 13時15分 公開
[織茂洋介ITmedia マーケティング]

リード研究所とは

小柴所長イラスト

 マーケティング×ITの最先端の動向をB2B中心にお伝えしているITmedia マーケティングですが、発行元である当社アイティメディア自体もまた、「TechTargetジャパン」「キーマンズネット」といったメディアを核にした「リードジェネレーション」を事業とするB2B向けデジタルマーケティングカンパニーとしての一面を持っています。

 具体的には、コンテンツを閲覧した会員のプロファイル情報を、関連商品に興味関心を抱くリード(見込み客)情報として、本人のパーミッション(同意)を得た上でスポンサー企業に提供しています。

 そこでサービスの企画開発とコンサルティングを担う社内シンクタンク的存在が「リード研究所」なのです。


 この連載では、アイティメディア リード研究所所長の小柴 豊が、B2Bマーケティングの現在とこれからについて、業界のソートリーダーに話を聞きます。

 今回のゲストはKaizen Platform(カイゼンプラットフォーム)マーケティングリードの野田洋輔氏。クラウドソーシングによるWeb改善というユニークなビジネスモデルで注目される同社は2013年3月の創業から急成長を遂げ、累計で約21億円の資金調達に成功するなど、市場で高く評価されています。

 グローバル展開も視野に入れ、さらなる飛躍を期待される企業だけに、マーケティングは重要課題の1つ。急成長するビジネスを少人数で効率よくドライブさせるため、マーケターは何を優先させるべきなのか。大手ITベンダーやメディア企業のマーケティングも経験してきたエキスパートならではの視点で語ってもらいました。


名刺情報集めから始まったマーケティングの体制作り

小柴 野田さんは経験豊富なB2Bマーケターで、これまでにSAPジャパンや日本オラクルなど大手ITベンダーを含むさまざまな企業でキャリアを積んでいらっしゃいました。ちなみにかつてはアイティメディアに在籍していたこともある(笑)。現在のKaizen Platformでのお仕事について、読者向けに簡単にご紹介いただけますでしょうか。

野田洋輔
のだ・ようすけ マーケティングとPR担当第1号として2015年1月にKaizen Platformに参画。リード作りから営業商談につなげるマーケティングと、Kaizenファンを増やすPR活動に奮闘。それ以前は、グローバルIT企業でのマーケティングの他、アイティメディアにも在籍歴あり、「TechTargetジャパン」の立ち上げを営業と企画の立場で推進した。

野田 当社は企業WebサイトのUI、UX改善を支援するためのプラットフォーム「Kaizen Platform」を運営しています。一般的には「A/Bテストのツール」を売る会社と認知されているようなところもありますが、このツールとわれわれが「グロースハッカー」と呼ぶクリエイターのネットワークを使って「Webサイトの売り上げをどれだけ上げられるか」「CPA(顧客獲得単価)をどれだけ下げられるか」といったビジネス課題を解決するサービスを提供しています。企業のWebサイトというのは、昔のいわゆる「ホームページ」と呼ばれたころには看板のようなものにすぎなかったわけですが、今は店舗であり店員のような存在です。そのWebサイトが抱える課題は、ただツールを導入すれば解決できるものではありません。単なるA/Bテストツールならたくさんあるし、無料で使えるものもあるわけですが、それを活用して改善施策を実現できる人材はなかなかいない。そこをわれわれが支援させていただく形です。

小柴 どういう企業が顧客ターゲットとなるのでしょう。

野田 これまでのKaizen Platformの顧客はどちらかというとB2C企業、それも大手が中心です。業種でいうとカードローンなどの金融業や人材系企業、それから不動産情報サイトなど、Webサイトのコンバージョンが事業収益に直結しているようなところが多いです。ROI(投資対効果)が見えやすいというのは、当社がアプローチする企業を決める際の重要な要素になります。

小柴 大手のB2C企業を対象に、スタートアップ企業の中でB2Bマーケティングを手掛けるのが野田さんの仕事ということですね。

野田 私が入社したのは2015年1月です。まだ創業から2年にもなっていませんでした。マーケティングとPR担当の第1号社員として入社した当時はまだマーケティングの体制も整っていなくて、見込み客がどれだけいて、どこに当たったのか、当たれるのかということすら十分に共有できていませんでした。セミナー集客しようにもハウスリストがない(笑)。PR担当としては当時、最初の大仕事として、グロースハッカーのアワードである「Japan Growth Hacker Awards 2015」というイベントを企画遂行していたのですが、それと並行してマーケティング担当としては、社内の名刺を集めてコンタクト情報を集約するという非常に地道な作業からスタートしました。

案件に結び付くリードを見極める

小柴 いかにもスタートアップらしい(笑)。

野田 もちろん、それだけやっていてもしょうがないので、商談を増やしていくためにイベントに出展したりコンテンツを作ったりと、いろいろなことに取り組むようになりました。いろいろやっていくうちに分かってきたのは、こちらが狙いたい会社のリードでないと、なかなか導入まで至るのは難しいということですね。

小柴 興味関心が高いリードだからといって案件に結び付くとは限らないということですね。

野田 当社の場合、リードをスコアリングするための情報を行動データと属性データに分けるとすれば、後者の条件適合が大前提です。営業から話を聞いても、実際に受注のあったケースを見ても、そう思います。まず企業情報、そしてどういう立場の人か。ROIが見えやすい企業が主なターゲットと言いましたが、そのROIを判断できる立場の人と話ができなければいけません。Webのシステム管理のような立場の方から問い合わせがあっても、先ほどお話ししたように、Kaizen Platformを使って売り上げをどう伸ばすかという話にならなければ意味がないので、商談には必ずROIを判断できる人に出てきてもらうようにお願いしています。

小柴 SQL(Sales Qualified Lead)は厳密に定義する感じでしょうか。

野田 ターゲット企業リストにある企業からの問い合わせは基本、そのまま営業に渡していますが、リストに載っていなかったけれどポテンシャルがありそうなところをどうするかですね。先方のお財布事情もそうですが、ここでもわれわれが金額に見合った効果をお返しできるかというのが判断基準になります。インサイドセールスでは、営業に渡せば半分くらいの確度で商談になるリードの見極めをしてパスするようにしています。当社の営業スタッフの数は、まだ1桁しかいません。できるだけ無駄足は踏ませたくありませんから。

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