TikTokに限らず、さまざまなSNSに共通するのが、画面をスクロールすれば、ユーザーの好みを反映した動画が次々と現れる仕組みだ。ユーザーが直接、好みを伝えたわけではないのに、興味のある投稿が提示される。自分を知られ過ぎていると感じ、不安になるユーザーもいるかもしれない。
TikTokによると、ユーザーの好みを反映した動画は、多くの要因に基づいて決められる。例えば、ユーザーが動画に押した「いいね」や「シェア」、アカウントのフォロー、コメント投稿、作成したコンテンツなど。さらには動画のキャプション、サウンド、ハッシュタグなどといった情報も加味される。こうしてユーザーごとに最適化されたフィードは、一つとして同じものは存在しないという。
一方で、好みが最適化されたフィードには落とし穴も存在する。似たような情報や視点の投稿ばかりに囲まれてしまう「フィルターバブル」の問題だ。フィットネスやダイエットに関心のあるユーザーが、その投稿ばかり見続ければ、自身の体型を気にし、過度なダイエットに走る恐れもある。これはユーザーにとって健康的とはいえない。
「こうした状態を避けるために、私たちが取る対策は非常にシンプルです。いくつかの動画を削除し、異なるものに置き換えることで、隣接する複数の動画の類似度スコアを60%未満に抑えるのです」(担当者)
そのほか、TikTokではユーザーが見たくない動画があれば、長押しして「興味がない」をタップできる機能や、最適化されたおすすめフィードをリセットできる選択肢も用意している。
最後に担当者が「われわれが最も重視する優先事項」だと強調したのは、若者のプライバシー保護だ。TikTokアカウントを作成できるのは13歳以上という年齢制限を設け、ダイレクトメッセージを利用できるのは16歳以上に限定している。
これらのルールに違反した場合、アカウントの停止など強制的な措置を講じると担当者は説明した。
この説明があった翌日の8月2日、TikTokが13歳未満のユーザーの個人データを違法に取得していたとして、米司法省がByteDanceを「児童オンラインプライバシー保護法(COPPA)」違反で提訴したというニュースが報じられた。
司法省の発表によれば、TikTokは2019年以降、親の同意なしに、13歳未満のユーザーがTikTokアカウントを作成し、他者とショート動画やメッセージを作成、共有することを故意に許可していたなどとしている。
米メディアによると、TikTok側は「これらの申し立ての多くは、事実に反する、あるいはすでに対処済みの過去の出来事や慣行に関するものであり、当社は同意できない」と反論している。
TikTokの影響拡大を阻止する包囲網は着実に拡大しており、TikTok側には引き続き、困難な局面が続く。それでも今は安全性と透明性への取り組みを粛々と続けることで、個々のユーザーレベルでの不安を少しでも取り除こうとしているようだ。
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