「ニュース」に広告を出すのはリスク? 数字が語ることMarketing Dive

Stagwellの調査によると、広告主は「ブランドセーフティー」を気にし過ぎるあまり、機会を逃している可能性がある。

» 2024年07月01日 16時00分 公開
[Sara KarlovitchMarketing Dive]
Marketing Dive

 ブランドセーフティーは広告主にとっての最重要課題になっている。分断をあおるようなコンテンツや偽情報のまん延、広告の配置場所に対するコントロールの喪失など、いまやブランドセーフティーを確保することは困難な状況にある。さらに問題を複雑にしているのは、多くのコンテンツがグレーゾーンに入る可能性が大きく、広告主は自らのブランドへの影響について確信を持てないでいることだ。2024年に予定されている(米国大統領)選挙やイスラエル・パレスチナ紛争など、物議を醸すようなトピックを扱うニュース記事は、この不確実性の領域に入る可能性がある。しかし、ニューストピックへの注目は広告主にとって有益なのだろうか。物議を醸すニュース記事の隣に広告を出すことのメリットと、ブランドセーフティーと購買意欲への影響について、広告代理店のStagwellが評価している。

「ブランドセーフティー」を気にし過ぎる広告主の機会損失

 Stagwellのレポート「Future of News Study」によると、インフレや犯罪などの「リスキー」な題材の記事の隣に配置された広告は、スポーツのような「安全」な題材の記事とほぼ同じパフォーマンスを示すことが分かった。さらに、米国人の25%が「ニュース中毒」と認識していることから、リスクの高い記事を避けることはキャンペーンのリーチを制限し、広告主が大規模な消費者グループを取り込む機会を逃す原因となっている可能性がある。

 Stagwell傘下の調査コンサルティング会社HarrisXのCEOドリタン・ネショ氏は「この調査が本質的に示しているのは、質の高いジャーナリズムを提供するチャネルは全く安全だということだ。広告が差し控えられているために、彼らが被害を受けるべきではない。ブランドセーフティーはもちろん重要だが、他方では、健全な報道の繁栄は民主主義にとって不可欠だからだ」と言う。

 このレポートは、Stagwellが最近規模を拡大している「Future of News」プロジェクトの一環だ。同プロジェクトはニュース広告のあり方を評価するための調査やイベントなどを扱っている。この調査は、今年の春に約5万人の成人を対象に行われたオンライン調査に基づいており、回答者の51%が女性、49%が男性だった。年齢別では、回答者の18%が18〜29歳、19%が30〜39歳、17%が40〜49歳、23%が50〜64歳、24%が65歳以上だった。回答者の64%が白人、16%がヒスパニック系、11%が黒人またはアフリカ系米国人、9%が「その他」だった。

レポートが示す重要なポイント

 このレポートの重要なポイントは、ポジティブでエンターテインメント志向の記事の近くに広告を掲載した場合と、インフレ関連の記事のようなネガティブなニュースの近くに広告を掲載した場合を比較したときに、購買意欲への影響が比較的小さいことだ。

 例えば、Z世代の消費者では、中東紛争に関する記事の隣に置かれた広告の平均購入意向は65%で、スポーツに関する記事の隣に置かれた場合よりもわずか4ポイント低いだけだった。また、インフレ関連記事の近くに掲載された広告の購入意向は66%、犯罪関連記事の近くに掲載された広告の購入意向は67%だった。

広告が近くに表示されたニューストピックに基づくZ世代消費者の平均購入意向。ニュースの種類(中東紛争、インフレ、犯罪、スポーツ)によって、購入意向にほとんど変化はなかった(グラフはStagwellのレポート「Future of News Study」を基に原著者作成)

 「簡単に言えば、米国人はコンテンツと広告の違いを見分けることができる。そして、コンテンツの複雑さは必ずしもアプリのブランド指標に影響を与えるわけではない。これは、特にブランドセーフティーに関する疑問に取り組んでいる当社にとって、調査結果の重要な部分だ」とネショ氏は話す。

 購入意向は、収入など多くの要因によって左右される可能性があることに注意することが重要だ。高所得の消費者に注目すると、質の高い政治ニュースの隣に置かれた広告の購入意向は72%で、エンターテインメント記事の隣に置かれた広告よりわずか2ポイント低いだけだった。母親の場合、中立的な記事とよりネガティブな記事の隣に置かれた広告の購買意欲は、どちらも70%だった。

ターゲットにリーチするなら彼らに最も身近な媒体で

 Stagwellのレポートは、特に質の高い出版社を対象としている。結局のところ、これは今日のブランドセーフティーを取り巻く問題の核心を突いている。つまり、ブランドコンテンツがどこに表示されているのか分からないということと、ニュース記事が全て同じように作られているわけではないという事実だ。GoogleやMetaのような大手のネットワークの場合、広告がどこに表示されているかを細かく把握するのは難しい。調査結果では、目的の読者にリーチするためには、情報源であるパブリッシャーに直接アクセスする方が効果的であることが証明された。

 「自らをニュース愛好家と公言または認識している人は米国人の25%を占める。この大規模な視聴者層にリーチすることは広告主にとって非常に重要だ。これらの人々は毎日非常に熱心にニュースを追っている。そして、正直なところ、これらの人々の多くはエンターテインメントやスポーツなど他のチャネルでは捉えられない。この視聴者層を回避するのではなく、むしろターゲットにすることで、広告主には非常に大きなチャンスが広がっていく」とネショ氏は述べた。

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