米国ではまたしてもTikTok禁止措置が議論されている。これまでは結局実現に至らなかったが、今回の状況は以前と異なっている。
TikTokは、現在上院で審議されている法案の下で、米国で全国的な禁止の脅威に再び直面している。この法案は、TikTokが米国にとどまりたいならばアプリの売却を強制するもので、進化するソーシャルメディアの状況がTikTokの運命にどのように影響するか、そしてマーケターにどのような影響を与える可能性があるかという問題を提起している。
TikTokに対する最新の法案は、ByteDanceが所有するこのプラットフォームが、その中国の所有権や米国データの取り扱いに起因する国家安全保障上の懸念を煽り続けている中で提出された。「外国の敵対勢力管理アプリケーションから米国民を保護する法案」と名付けられたこの法案は、下院で352対65の大差で可決され、現在は上院に向かっている。ジョー・バイデン大統領は上院でも法案が可決されれば法案に署名するとすでに表明しており、TikTokは可決後165日以内に米国内で事業売却または禁止されることになる。
インフルエンサーマーケティングエージェンシーBillion Dollar Boyの共同創業者でグループCEOのエド・イースト氏は「下院の圧倒的な支持を得て法案が上院に提出され、バイデン氏が法案を支持すると表明したことが、この法案をより現実味のあるものにしている。しかし、まだパニックに陥るときではない」と、メールでコメントした。イースト氏は、上院の決定がまだ宙に浮いており、法案成立からTikTok売却までに時間がかかることを考えると、最終的には全面禁止が発効するとは考えていないと指摘した。
一方で上院もまた、決定が下されるまでしばらく時間がかかるだろうと示唆している。今回の禁止措置はこれまでと何が違うのか、誰が利益を得るのか、ソーシャルメディア広告費はどこに移動するのかといった疑問が浮上するのは当然である。
TikTokは欧米で登場して以来、繰り返し政治的な標的にされてきたが(すでにほとんどの米国政府のデバイスでTikTokは禁止されている)。しかし、2020年にドナルド・トランプ前大統領が大統領令によってTikTokを禁止しようとした件は、その後取り消されたものの、間違いなく現在以上に深刻な脅威となるものだった。当時はMicrosoftやWalmart、Oracleなど、複数の関係者がTikTok買収に名乗りを上げた。
Forresterのバイスプレジデント兼リサーチディレクターであるマイク・プルクス氏によると、今回の禁止措置は過去の禁止措置を彷彿とさせる面もあるが、現在と過去の議論の重要な違いは、時間の経過によってTikTokを取り巻く問題に対する認識が広がり、風通しが良くなったことだ。2020年以降の数年間で、ソーシャルメディアがメンタルヘルス、誤報、子どもの安全といった側面に与える影響に関する疑問が高まる一方、消費者のプライバシーに関する懸念や独占禁止法を巡る議論は沸点に達している。
「これらのことが全て重なって、政府がソーシャルメディアに関して何らかの規制措置を講じる必要があるという“パーフェクトストーム”(複数の厄災が同時に起こることが招く最悪の事態)が形成されている。これは以前から醸成されていたものであり、たまたま今、行動を強化するための条件が整ったのである」とプルクスは語る。
政府がソーシャルメディアを規制したいという願望を強めていることを示す事例には事欠かない。1月にTikTok、Snap、Meta、X(旧Twitter)などのアプリと、その能力(あるいはその欠如)について議論した上院公聴会では、トム・ティリス上院議員(ノースカロライナ州選出)がソーシャルメディア各社のトップに対し、「われわれはその気になればあなたたちを廃業させることもできる」と断言し、議会が現在このプラットフォームをどのように見ているのか、緊張した面持ちで語った。
データの保護もまた、大きな関心事となっている。TikTokはで2023年、10億ドル規模の米国データ分離プロジェクト「Project Texas」を発表し、自社のデータ慣行に関する懸念に対処しようとしてきた。しかし、内部文書や現役または元従業員からの情報に基づく1月の調査結果では、TikTokは依然として米国のユーザーデータを中国の親会社と共有しており、Project Texasはこれを回避するために設置されたものであることが判明した。
ソーシャルそのものだけでなく、より広範な経済情勢も変化している。バイデン大統領はトランプ前大統領よりも中国に貿易制裁を課すことに前向きだ。ByteDanceが売却を拒否した場合、ワシントンは中国の経済支配の試みに対抗するため、TikTokの禁止に踏み切る可能性がある。
(「現実味を帯びる『TikTok禁止』で得をするのは誰?」に続く)
© Industry Dive. All rights reserved.