個人情報保護の観点から、広告・マーケティングにおけるCookieの利用をはじめとしたデータ活用の規制が進もうとしている。現状の課題を整理し、企業がこれから取るべき行動についてエキスパートがまとめた。
前編では、Cookieをはじめとするデータ利用規制強化の潮流は「生活者が率先して選んでくれる企業・製品・ブランドとなるために顧客との新しいつながり方を模索せよ」という導きだと述べた。
では、顧客との新しいつながり方とは何か。それは、ゼロパーティーデータの強化である。ゼロパーティーデータ、つまり顧客が明示的な同意をもって自ら提供してくれるデータを預かり、それをサービスに生かし、顧客ベネフィットに変換するのだ。D2C(Direct To Consumer)やサブスクリプションといったビジネスモデルの台頭は、ゼロパーティーデータの強化という文脈と一致している。
D2C企業の例を見てみよう。例えば2020年にIPO(新規株式公開)を果たしたCasper。D2C企業としては初めてのIPOとなった。同社はマットレスなどの寝具をオンライン販売しているが、自社をマットレスメーカーではなくウェルネスカンパニーと定義している。Casperは睡眠を運動、食事に次ぐ第3の健康の柱とし、睡眠と健康に関わる製品・サービス、コンテンツを提供する。コンテンツとしては、質の高い紙の雑誌を発刊しているが、これは製品カタログとしての位置付けではなく、ベッドサイドにおいて寝る前に読むのにふさわしいウェルネスコンテンツを作り込んだものだ。また、入眠を助けるオーディオコンテンツをポッドキャストで配信している。Instagramでもコンテンツを発信しており、フォロワーは16万人を超える。Instagramのコメントを見ると、フォロワーがCasperに話しかけ、問い合わせをしているのに対し、Casperアカウントが丁寧に返信しているのが分かる。ただし、距離感が驚くほど近い。例えば、
顧客:休暇で出掛けている間、キャスパーのベッドシーツがなくてとってもさみしい!
Casper:私もさみしいよ、早く帰ってきてね
こんな恋人同士かと思うようなやりとりもあれば、
顧客:お昼寝枕って1歳半の子に使っても大丈夫? Webサイトで見たような気がするけど念のため確認!
Casper:もちろん!
といった具合に気軽なカスタマーサポートが繰り広げられることもある。
そもそもオンラインで製品・サービスを販売している会社であれば、顧客と直接つながる情報を持っているものだが、Casperの場合はブランドが持つ価値観を顧客とシェアし、顧客に応援される、愛されるという状態ができている。また、データドリブンを徹底し、ソーシャルメディア上でのフィードバックや製品モニターから送られてくるセンサー情報に基づいて次世代商品の開発を積極的に行っている。これらの取り組みを通じて顧客にとっての価値を継続的に提供し続けているのだ。
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