「テック・クラッシュ」を乗り切るにはどうすればいいのか。AccentureのCEOおよびCTOの記者会見と「テクノロジービジョン2020」調査結果から読み解きます。
Accenture日本法人のアクセンチュアは2020年2月20日に記者会見を開催。Accenture最高経営責任者(CEO)ジュリー・スウィート氏が来日し、成長市場(アジア太平洋、アフリカ、中東、中南米)担当最高経営責任者(CEO)のジャンフランコ・カサーティ氏との対談形式で同社の成長モデルなどについて説明した他、最高技術責任者(CTO)兼高イノベーション責任者(CIO)であるポール・ドーアティ氏が年次調査レポート「Accenture Technology Vision 2020」の概要について説明しました。
2019年9月にCEOに就任したスウィート氏は冒頭「成功するためには新しいことをやっていかなければならない」と語りました。スウィート氏はこの半年間で世界中を回り、50人以上のCEO、100人以上のリーダーと面会したとそうです。その中で2020年が「デジタルとテクノロジーの新たな可能性を提供する10年間の始まりである」と確信したといいます。
Accentureでは2019年1月に組織再編を実行し、2014年に設置したデジタル部門をなくしてサービスを「ストラテジー&コンサルティング」「インタラクティブ」「テクノロジー」「オペレーションズ」の4つに再編しています。売りであった「デジタル」が看板から外れたのは、事業の65%がデジタルを前提としており「既に働き方、意思決定、人とのつながり方の全てがデジタル化している」(スウィート氏)という背景があるようです。
Accentureの現在は「あらゆる企業はデジタル企業である(Every Business Is a Digital Business)」という2013年のTechnology Visionで示された考え方を体現したものともいえそうです。ドーアティ氏によると20回目のレポートとなる今回の「Technology Vision 2020」は「既にデジタルは大前提。差別化のために何をするか」という視点でまとめられているということです。
同レポートは、25カ国21業界において6074人の企業経営者やIT担当幹部を対象に実施した調査と中国、インド、英国、米国の消費者2000人を対象にした調査に基づいています。サブタイトルは「ポストデジタル時代を生きる 企業が『テック・クラッシュ』を乗り切るには」です。
テクノロジーに対する反発を表す言葉としてTech(技術)とBacklash(反発)から成る「テックラッシュ(techlash)」という造語が広く使われるようになっています。一方で、基本的に人々はテクノロジーを活用することを好みます。Accentureが「テクノロジービジョン2020」の作成に当たり実施した調査では、日本を含む全世界の企業や組織の上級役職者およびIT担当幹部の83%が「テクノロジーは人の体験を形作る上で欠かせないものになった」と回答しています。また、2000人の消費者の70%が「今後3年間でテクノロジーと自分の関係が深まる、もしくは大幅に深まる」と答えています。これらを考慮すれば、問題はテクノロジーが提供する価値が人々の価値観と必ずしも一致しないことにあるといえるでしょう。顔認識技術がプライバシー侵害につながったりディープフェイク(本物と見分けがつかない偽の動画や画像)が悪用されてさまざまな弊害が生まれたりすることなどが懸念されているのはその具体例です。
そこでAccentureでは、企業や組織が提供するテクノロジーが必ずしも期待に応えていない状況を「テック・クラッシュ」と呼んでいます。ドーアティ氏は「企業がテック・クラッシュを乗り切る鍵になるのが信頼(Trust)だ。信頼を最優先に据えてビジネスとテクノロジーを見直し、競争と成長のための新たな基盤を築いていく必要がある」と語っています。顧客を理解し、一人一人に最適な製品・サービスを提供する上でデータの取得は欠かせませんが、信頼のない企業にはそもそもデータが集まってきません。「信頼こそはポストデジタル時代の通貨」(ドーアティ氏)となるのです。
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