「第3世代のBI」の進むべき道とは。Qlik TechnologiesのCMOを務めるリック・ジャクソン氏に聞いた。
2019年はGoogleがLookerを、SalesforceがTableauの買収を相次いで発表し、BIツールベンダーの業界再編が一気に加速した感がある。そうした中で今日、独立系ベンダーの行方が注目されている。
IT部門の力を借りなくてもビジネスユーザー自身でデータの可視化と分析を進められる「セルフサービスBI」のビジョンを掲げて業界をけん引してきたQlik Technologies(以下、Qlik)もその中の一社だ。同社でCMO(最高マーケティング責任者)を務めるリック・ジャクソン氏に話を聞いた。
――まず、再編の進む現在のBI市場をどう見ているか聞かせてください。
ジャクソン ちょっと時間をさかのぼって説明しましょう。まず、2000年頃のBIベンダーといえば、Cognos、BusinessObjects、Hyperionの名前が挙がるでしょう。これら第1世代のBIベンダーの製品は、IT部門がデータを持ちビジネス部門の要求に応じてレポートを提供するものでした。それぞれのベンダーは独自にBIソリューションを提供してきたわけですが、その前提となる顧客データの価値に気付いたのがIBM、SAP、Oracleでした。これらの大手ベンダーは第1世代のBIベンダーを買収し、イノベーションが始まったのです。
続いて2010年頃に登場したのが、ビジネスユーザーが主体的に使えるBIツールです。Qlikはこの第2世代のBIのパイオニアであり、この他にTableau SoftwareやMicrosoft(Power BI)が第2世代に分類できるでしょう。ところがSalesforceやAmazon.com、Googleのようなクラウドネイティブのベンダー、Microsoftのようにクラウドにビジネスをシフトさせたベンダーが、自分たちの環境に顧客データを置いてもらい、アナリティクスを活用してほしいと考えるようになりました。その結果、第1世代と同じように第2世代のBIツールベンダーも買収の対象となったのです。
Qlikのビジネスにおける基本的なスタンスは「お客さまのデータを所有しないこと」にあります。お客さまのデータはどこにあっても構わない。これはQlikが独立性を維持していることで、提供できる価値だと考えています。他の第2世代ベンダーはクラウド大手に買収されたことで、戦略的方向性を変えざるを得なくなりました。一方で、私たちは既に「第3世代のBI」として、従来同様に顧客の抱えるデータに関する問題の解決に取り組んでいます。
――「第3世代のBI」とは具体的にどのようなものでしょうか。
ジャクソン 第1世代が「集中型」、第2世代が「分散型」だとすると、第3世代のBIの特徴は「民主化」にあります。
第2世代のBIベンダーが行ってきたことは、IT部門の力を借りることなくビジネスユーザーが自身でBIを使えるようにすることでした。その意味でQlikが重視してきたのが、組織の中にBIを使えるナレッジワーカーがどれだけいるかです。本来は100%であるべきですが、実際には25%程度という状況です。第3世代では、BIを活用するナレッジワーカーをまず50%超の水準に増やす民主化を実現することに焦点を当てています。
――具体的にはどうやって他社と差別化するのでしょうか。
ジャクソン Qlikでは、第2世代から第3世代にBIを移行するために必要なことを「データの民主化」「拡張知能(Augmented Intelligence)」「あらゆる領域へのアナリティクスの組み込み」の3つの柱で整理しています。
1つ目が、データの民主化。企業内でBIを有効活用できない最大の原因はデータのサイロ化にあります。ビジネスユーザーが必要とするデータに容易にアクセスできるようにするため、私たちはエンタープライズレベルのデータカタログを提供しています。
2つ目が、拡張知能。QlikではAIを機械の知能ではなく、機械に人間の知能を合わせて拡張(Augment)するものと捉え、ビジネスユーザーのデータリテラシーの向上に役立てるためのものと位置付けています。データリテラシーとは、データを理解して分析し、データドリブンな意思決定ができる能力を意味します。テクノロジーは人間のデータリテラシーを補完するのに有効だと信じているからです。
3つ目が、アナリティクスをあらゆるビジネスプロセスに組み込むことです。ビジネスユーザーとBIとの関わり方を見ていると、ダッシュボードやレポートを作る作業とビジネスプロセスとの間に分断があるのが問題です。本当の意味でデータドリブンな組織に変わるには、どのような環境からでもBIを使えることが重要なのです。
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