文化があり、戦略があって、最後にようやくツールの話ができる。しかし、現実には流行のツールさえ買えば結果を出せると安直に考えているマーケターが少なくない。ベンダーの側にも、売れればそれでよしとしてしまう傾向があるという。成果を売るどころか製品だけ売り逃げているともいえる。
例えばマーケティングオートメーション。そもそも自動化すべきマーケティング戦略やシナリオがきちんと設計されていなければ、、ツールだけ入れても何の意味もない。また、マーケティングオートメーションというと、とかくリードナーチャリングやリードジェネレーションといった顕在層へのアプローチが注目されるが、そこは本質的な成長を促す部分ではないと飯室氏は指摘する。「マーケターはナーチャリングに60%近い労力と時間を費やしているともいわれるが、どんなに頑張ってもコンバージョン率は100%より上には上がらない。売り上げやシェアを10倍にするという課題を抱えたマーケターならば、母数の変わらないナーチャリングよりも潜在層へのエンゲージメントとファン作りにこそ投資すべき」というのだ。
そのために、Webサイトをリニューアルし、顧客がカスタマージャーニーの中のどこにいるとき、どんな事前期待を持つかという顧客体験設計方針に従って、適切なコンテンツを用意し、適切なタイミングで見せるようにした。KPIも、従来のページビュー(PV)や来訪ユーザー数(UU)、直帰率といった指標でなく「見積もり依頼金額」とした。「最高の顧客体験を提供し、売り上げに貢献できる商談獲得サイト」をゴールに定めたのである。
グローバルB2B企業におけるマーケティングデジタル化のプロセスには、さまざまなエピソードがあり、必ずしも一筋縄では行かない面も多かったようだ。飯室氏は、自らのキャリアを通じて得た1つの答えとして、あらためて「ツール<戦略<文化」の優先順位を掲げ、講演を締めくくった。
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