PDCAサイクル――デジタルマーケティングにも不可欠、継続的な改善に取り組む管理手法トレンドキーワードを知る

「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Action(改善)」のサイクルを回すことでビジネスを継続的に改善しようという、生産管理から生まれた考え方は、デジタルマーケティングにも応用されている。

» 2016年10月07日 13時00分 公開
[ITmedia マーケティング]

 ビジネスの第一線で働く人ならば、「PDCA サイクル」という言葉を頻繁に耳にしていることだろう。その歴史は意外に古く、第2次世界大戦前後の米国においてAT&Tベル研究所のウォルター・シューハートとその業績に触発された統計学者のエドワーズ・デミングらによって提唱されたとされている。これにより「シューハートサイクル」(Shewhart Cycle)あるいは「デミングサイクル」(Deming Cycle)」と呼ばれることもある。

 PDCAサイクルは、サイクルを構成する以下の4段階の頭文字をつなげたものだ。

  • Plan(計画):目標を設定し、それを実現するためのプロセスを設計する
  • Do(実行):計画に沿って業務を実施し、パフォーマンスを測定する
  • Check(評価):測定結果を評価し、計画に沿っているかどうかを確認・点検する
  • Action(改善):プロセスの改善・向上に必要な措置を行う

 この4段階をKPI(Key Performance Indicator/重要業績評価指標)に基づいて回し、最後のActionを次のPDCAサイクルにつなぐ。すなわち、不断の改善を実施していくのである。

 改善の成果を次のプロセスに生かし、より良い結果を生み出し続けていくためには、PDCAサイクルの回転は速いに越したことはない。とりわけ、パフォーマンスがリアルタイムに計測可能なデジタルマーケティングにおいては、PDCAは「高速」であることを暗黙の前提とする。

 例えばWebサイトにおいてはページを公開した瞬間からアクセス解析などを実施して訪問者の動向がつぶさに可視化される。KPIとして設定した数値(ページビュー数やユニークユーザー数が基本だが、それだけではない)などを計測し、コンテンツが実際のユーザーニーズに適しているかどうかを分析するのだ。具体的には「ページビュー数とユニークユーザー数が増えたのに、サイト滞在時間は計画よりも短く、ドロップ率も高い」という分析結果が明らかになれば、「SEO が成功して集客には成功したものの、コンテンツに魅力がなかった」と判断できる。こうした分析結果を参考に、コンテンツの改善に取り組み、次の計画に反映させていくのである。

 近年はCRM(Customer Relationship Management/顧客関係管理)ツールを導入し、顧客を中心に据えてマーケティングや営業の業務プロセスを一元管理する場合があるが、CRMツールにはPDCAサイクルを意識した使い勝手となっている製品が多い。これらの製品は、個人や部署のスケジュールから計画を立案すると、そこから顧客管理や商談管理のデータベースを作成したり、日々の活動内容を入力すると、データベースに情報を即座に反映する。その状況はリアルタイムに可視化され、すぐに活動や進捗を分析・評価することが可能になっている。そして、分析・評価した結果から改善施策を策定するというPDCAサイクルで業務プロセスを支援する。

 この他、ログデータやセンサーデータといったIoT技術やビッグデータ解析技術を活用し、より精度の高い分析結果を分かりやすく表示したり、AIによって分析結果から確度の高い新たな提案を行ったりするツールも提供されている。

 また、マーケティングオートメーションツールの中には、PDCAサイクルを自動化して顧客の購買履歴やメールマガジンの送付履歴、Webサイトのアクセスログなどのデータを管理・分析し、顧客一人一人に最適なキャンペーンを展開するという機能を備えたものも登場している。

 これらの作業を人手で漏れなく効率的に回すのには限界があるため、こうしたツールを利用することが、効果的なPDCAサイクルの実践につながるのは間違いない。

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