「世間の見方」を知る2つの手法――「キーワード比較」と「イメージ分析」【連載】使えるソーシャルビッグデータ分析 第3回

実際の分析作業でまず難題となるのが検索キーワードの選定。中でも難しい「自社がどう見られているか」を探るための手法について解説する。

» 2015年11月25日 08時00分 公開
[佐藤弘和株式会社ホットリンク]

 前回「上司の反応がさえないのはなぜ?ーーソーシャルだと意外に忘れがちな「正しい比較分析」のポイント)では、「比較分析」の重要性や分析結果の評価の方法について紹介しました。今回は別の視点からの活用手法をご紹介したいと思います。

 まずはおさらいから。分析プロセス全体の流れを見てみましょう。

 前回は上の表のうちステップ4と5において、比較分析を正しく行うためのポイントを解説しました。そして、まず課題になるのが「検索キーワードの絞り込み」であると述べました。今回は、キーワードの選定を、自社目線から少し離れて世の中のトレンドから探る方法について見ていこうと思います。

検索キーワードにも種類がある

 皆さんが検索する際に指定するキーワードの多くは、企業名や商品名・サービス名など、その企業が独自で有しているものだと思います。つまり、既にあなたの会社や商品・サービスといったものを知っている、利用しているなど、“具体性の高い“クチコミが分析対象のケースが多いでしょう。

 しかし、ソーシャルビッグデータ分析においては、世の中のトレンドをもっと抽象度の高いキーワードで把握します

 検索キーワードには2種類あることを覚えておきましょう。

  1. 指名ワード:企業名や商品名・サービス名など 口コミされている内容自体を分析する
  2. 一般ワード:一般名称やカテゴリーワードなど

 ここでは、2の「一般ワード」で世の中の流れ(トレンド)を把握する分析の手順について紹介したいと思います。今回は、一般ワードを用いた分析としてよく行われる「キーワード比較」と「イメージ分析」の2パターンをご紹介します。

忘年会の口コミはいつがピーク?(キーワード比較)

 いきなりですが、皆さんに質問です。

 これからの忘年会シーズン、忘年会が一番話題になる(口コミされる)タイミングはいつだと思いますか。周囲の人にも意見を聞いてみてください。恐らく「11月下旬当たりじゃない?」「12月中旬かな?」と、人によって答えが異なることでしょう。

 人に聞いてもはっきりしない世の中の動きを把握するのに役立つのが、ソーシャルビッグデータです。

 分析は必ず「比較」して行い、相対評価をしようというのが前回のポイントでした。比較することで、得られる知見は一気に増えます。ぜひ、「比較分析」を意識的に使ってみてください。

 そこで早速、例として「忘年会」「新年会」「飲み会」の3つの一般ワードで比較分析してみましょう。

【分析期間】2014年11月〜2015年1月

【調査対象】「忘年会」「新年会」「飲み会」

【調査媒体】ブログ、Twitter、掲示板、2ちゃんねるの合計


 キーワード間の比較結果は、次のようになりました。下のグラフは3つのキーワードの書き込み数の推移を表しています。

「忘年会」「新年会」「飲み会」の口コミ推移《クリックで拡大、以下同》

 ここから、以下のことを読み取ることができます。

  • 11月17日を過ぎた当たりで「飲み会」の口コミ数を「忘年会」が抜き、多くの飲み会が忘年会を兼ねるようになる
  • 「忘年会」の口コミは週末ごとにピークを迎えつつ、全体的には右肩上がりで、最大のピークは12/27
  • ただし、12/24〜25のクリスマスは口コミがガクっと減る(恋人や家族とクリスマスを過ごす人も多いためと考えられます)
  • 「新年会」は「忘年会」ほど口コミのボリュームがない(皆さんも経験的に「忘年会の数>新年会の数」なのではないでしょうか)
  • そして1月末に「飲み会」の口コミ数が「新年会」を抜くことから、「新年会」の開催も落ち着いてくると思われる。

 というわけで、「忘年会が一番話題になる(口コミされる)のは、12月27日ということになります。つまり仕事納めぐらいのタイミングです。

 また、「忘年会」というキーワードに対して「飲み会」「新年会」というキーワードを掛け合わせて比較することで、忘年会モードへ突入するタイミングなど、得られる知見も増えるのではないかと思います。

 ちなみに口コミされるのは実際に行われる(感想を語る)タイミングであって、お店探しのタイミングを知りたいという場合、実際はこのタイミングより少し前倒しで行われていると思われますので、そういったユーザーの行動も意識して、分析結果を解釈すると良いでしょう。

○○といえば?(イメージ分析)

 世の中のトレンドを分析するだけでなく、企業にとってのブランドイメージを推定することも可能です。一般ワードは常時、一定数の口コミ数が発生しているケースが多いですが、その口コミの中に企業名がどれくらい出てくるかを分析することで、「○○といえば●●社」というイメージの解釈も可能です。

 それでは、「アンチエイジング」と「スキンケア」というキーワードを例にとって調べてみましょう。

【分析期間】2015年4月28日〜2015年10月27日

【調査対象】「アンチエイジング」「スキンケア」

【調査媒体】ブログ、Twitter、掲示板、2ちゃんねるの合計


 以下のグラフは、2つのキーワードの口コミ数を比較したものです。

「アンチエイジング」「スキンケア」の口コミ推移

 アンチエイジングとスキンケアの口コミボリュームは、多少の変動はあるものの、常に一定の割合で発生しています(ちなみにスキンケアというキーワードの方がよく使われるようです)。

 次にそれぞれのキーワードを含む口コミの中に各企業(ブランド)名がどれくらい含まれているかを検索します(※)。

※対象企業は「「オルビス」「シーラボ」「富士フイルム(アスタリフト)」「DHC」「再春館製薬」の5社

 結果は、以下の通りです。

「アンチエイジング」と「スキンケア」を含む口コミに現れる各企業名

 上記のグラフの結果から次のことがいえるかと思います。

  1. アンチエイジングならアスタリフト
  2. スキンケアならオルビス

 また、化粧品は年齢ごとに移り変わる商品なので、現状オルビスを利用しているユーザーが将来的にはアスタリフトにシフトしていくことも考えられます。

 このように自社が世間からどのように見られているか、イメージを把握するための分析も一般ワードとの掛け合わせで行うことが可能になります。

 もちろん、掛け合わせるのは企業名だけでなく、「クリスマスといえばチキンなのかケーキなのかプレゼントなのか」といった具合に、消費者が興味を持っているポイントを探るための分析も同様の方法で可能になります。

 一般ワードは他にも「ダイエット」や「ハロウィーン」「お正月」などたくさんありますので、ぜひ試してみてください。

 今回のポイントのポイントを2つにまとめると、以下のようになります。

  • 比較分析のための検索ワードには「指名ワード」と「一般ワード」があるので、一般ワードでも分析してみよう
  • 一般ワードと自社名で「『○○』といえば」というイメージ分析をしてみよう

 次回は、「口コミがどのように広がったのか」「インフルエンサーとは誰なのか」といった、皆さんが特に興味を持つ分析について紹介できればと思います。

寄稿者紹介

佐藤弘和
さとう・ひろかず ホットリンク シニアコンサルタント。ブログ・メールを中心としたマーケティング会社を経て2009年ホットリンクに入社。現在はさまざまな業界において、お客さまのソーシャルメディア分析・運用方法を第一線でサポート・コンサルティングをしている。また、WOMJマーケティングサミットなど各種イベントのスピーカーとしても活動の場を広げている。


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