集合知は“とがらない” 「abrAsus薄い財布」はなぜ生まれたか「スーパーコンシューマー」とはなにか(1/3 ページ)

「文具王手帳」や「保存するメモ帳」など、文具好き、ガジェット好きが気になるアイテムを続々と発表しているブランド「スーパーコンシューマー」。同ブランドを主催するバリューイノベーションの南和繁社長に話を聞いた。

» 2012年03月01日 11時35分 公開
[舘神龍彦,Business Media 誠]
バリューイノベーションの南和繁社長。新宿のオフィスにて

 「文具王手帳」や「保存するメモ帳」など、文具好き、ガジェット好きが気になるアイテムを続々と発表しているブランド「スーパーコンシューマー」。

 ネットを使いながらも、作り手のこだわりをとがらせたプロダクトを発信している。同ブランドを主催するバリューイノベーションの南和繁社長に開発の狙いを聞いた。


畑違いの分野から飛び込んだ異才

 スーパーコンシューマーを手がけるバリューイノベーションは元々、ITプロモーションや事業開発、海外事業開発などの事業を行っていた。そんな中、スーパーコンシューマーはアパレルブランド部門の事業として展開している。次から次へと新しいアイテムを登場させているから、その道に通じたプロフェッショナルかと思いきやそうではない。社長の南氏はそれまで、プロダクト制作の経験が全くなかった。もともとは金融業界出身で、ITベンチャーキャピタリストとしてのキャリアはあったが、革製の小物はもちろん製品開発自体の経験がほぼなかったのだ。

 その南氏自身が欲しいと思って作ったのが「abrAsus薄い財布」である。この財布は、カードや紙幣、コインを入れるスペースの重なりを緻密に計算し、素材の革が複数枚重なる部分を極力減らすことで絶妙な薄さを生み出しているのが特徴。一般的な二つ折り財布の厚さは30ミリ程度なのに対し、薄い財布はその半分以下の13ミリ。また強度を保つため、革自体は薄くしていないという。


薄い財布。もともとは南氏自身が欲しいと思って作ったアイテムだ。革の重なり具合を計算して革自体を薄くすることなく厚みを抑制。また、収納するカードや紙幣の数を小銭にいたるまで想定することで薄さを実現した。紙幣とカード、コインの収納スペースを順に配置。また革の切り欠き部分が重ならないように配慮した(左)。右はコイン収納部。2つのホックでホールド性を確保した。

 試作の薄い財布を見た南さんの友人たちは「すごい」「欲しい」と口をそろえた。そこで商品化を検討し、発売にこぎ着けた。その結果、今では各種雑誌や新聞などにたびたび紹介されるほどのヒット商品になった。今では有名デパート(=リアル店舗)でも販売するようになっている。「ネットで説明を読んだ人が実物を見たいと思って店頭に行き、購入するようです」

 南さんはこう話す。「一般的な製品の場合、メーカーが市場や売り場、制作コストやバイヤーの意見などを考慮して作ります。それらは手堅いかもしれませんが、冒険のないプロダクトだと思うのです」

 たいていのメーカーの場合、製品を店頭に展示し、店員が説明して売ることになる。ただ、1アイテムごとに細かく説明することはあまりない。店頭に来たお客さんに、商品の細かなコンセプトがきちんと伝わる可能性は低いのではないか。「ならば真逆を行こう」。南氏はそう考えた。

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