すなわち自分が欲しいものを、できるだけ練り上げて作る。そしてネットで販売する。ネットならば作り込みのポイントも画像やテキストで十分に説明できるからだ。ユーザーがネットにあるバックストーリーを理解することで、購入につながるというわけである。
「例えば薄い財布にはホックが2つあります。なぜ2つなのかはオンラインショップ上で説明していますが、具体的には、コインのホールド性を高める役割です。ただこれがいきなり店頭にあっても、ホックが2つである理由は、説明がなければ伝わりません。それよりはオンラインショップのWebページで伝える方が有効なはずだと考えたのです」
南氏は「薄い財布」をオンラインショップで販売することにした。今でこそ外注しているが当初は自ら梱包と発送も担当。オペレーションの単純化も心がけた。ネットで販売するものは、最近はCGM的に開発するものも多い。エンドユーザーがネット上のコミュニティに集い、いろいろな意見を反映させるような作り方だ。
南氏はそのアプローチもとらなかった。「それだと“とがらない”と思います。そうではなくマニアックな人が考えて、マニアックな人に刺さる製品を作ります」。一握りのマニアがこだわりまくり、とがったままの仕様で出すのがスーパーコンシューマーだ。
例えば文具王手帳では表面にベルクロが貼ってある。もし集合知的な作り方なら、ここは省かれてしまったかもしれない。だがそれでは製品としてとがらない=誰かを感動させることはできない。南氏は大きな市場ではなく、“マニアに刺さる”ことを考えているのだ。
最初からコストを決めるようなこともしない。まずマニアックな人が自分が納得できる製品を作る。価格を決めるのは最後だ。そして「じゃあ○個売ろう」というふうになる。最初に製品ありきであり、販売する数の目標はあとから決める。通常とは逆なのだ。
そうやって高畑正幸氏によって作られた文具王手帳は、スーパーコンシューマーの製品第5弾にあたる。ちなみに、第1弾から第4弾までは以下のアイテムですべて南氏の発案による。
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