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» 2018年06月11日 07時00分 公開

【連載】ワンイシューで語り下ろすデジタルマーケティング:中国のマーケティングトレンドを理解するキーワード「KOL」「MCN」とは?――番匠達也氏 (1/2)

中国向け越境ECとインバウンドプロモーションに関心を寄せる企業は多い。この領域で成功の鍵を握る中国のインフルエンサー「KOL」について専門家が解説する。

[野本纏花,ITmedia マーケティング]

 デジタルマーケティング業界のトップランナーに、現在それぞれの専門分野が抱える課題と今後の展望を語り下ろしてもらうこの連載。第4回は、アライドアーキテクツ グローバル事業部部長でVstar Japan代表取締役の番匠達也氏が、中国インフルエンサーを活用した越境ECとインバウンドプロモーションの現状と、この領域で成功するためのポイントについて語る。

番匠氏 番匠達也氏
2011年にアライドアーキテクツ入社。ファンサイト構築サービス「モニプラ ファンブログ」の拡販に従事し2014年に最年少で営業部門の局長に就任。2015年、日本企業の中華圏へ向けたマーケティング支援を行う事業部の立ち上げを行う。2018年4月、グループ会社であるVstar Japan株式会社の代表取締役に就任。YouTuberなど日本人の動画クリエイターの中国進出を手掛けている。

中国向け「インバウンド」と「越境EC」に取り組むべき理由

 2015年に流行語になった「爆買い」はやや落ち着いた感がありますが、訪日中国人観光客は依然として増え続けています。2017年5月に中国人に対するビザの発給要件が緩和されたこともあり、今後もこの流れは続くでしょう。

 旅行業や小売業などのマーケティングにおいて、訪日客向けの「インバウンドプロモーション」に注力する動きはますます活発化しています。また、中国人を呼び込むだけでなく、ECサイトを通じて日本の製品を中国の消費者に購入してもらう「越境EC」にも2016年以降、関心が高まっています。

 インバウンドと越境ECは、どちらかだけに取り組めば事足りるというものではありません。団体旅行から個人旅行へ、初訪日から再訪日へと、中国人が旅慣れてくるにつれ、「日本で見つけた製品を中国に持って帰る」「また同じモノが欲しくて越境ECでリピート買いをする」「売れている日本製品が気になった人が、来日してそれと同じモノを買う」という好循環があるからです。

中国のECは「C2C」が中心

 中国向けのマーケティングプランを立案する上では、この消費者から消費者への流れを強く意識する必要があります。つまり「C2C」です。

 ECの市場環境も、日本と中国では少し様相が異なります。日本では「Amazon.co.jp」や「楽天市場」などB2Cのサービスが利用されることが多いですが、中国では「淘宝(Taobao:タオバオ)」に代表される個人間の売買も取引形態の一つとして注目されています。ここで重要な役割を担うのが「ライブコマース」であり、その担い手となるのが「KOL(Key Opinion Leader)」と呼ばれる中国のインフルエンサーです。

 ライブコマースの強みは、KOLが生放送の動画を通じて紹介した製品が売れるというだけでなく、それ自体がコンテンツとしてSNSで拡散されることで、プロモーションにもなるところにあります。さらに、その反響を見て日本の店頭で商品を大量購入し、タオバオやWeibo、WeChatなどで転売する「ソーシャルバイヤー」と呼ばれる代理購入業者を通じた商流もあります。

ニッチな専門家ほど信頼度が高い

 中国では、人の評判でよしあしを判断するという価値観が深く浸透しています。政府によって情報が統制されているという背景もあってか、一方的に発信される情報をうのみにする人は少なく、いわゆるソーシャルフィルタリングが強く機能している印象です。

 購入に当たっても、誰が言っているのか、どれくらいの人が良いと言っているのかという情報が、意思決定に大きな影響を与えるのです。それゆえ、専門的な知見を持った人の意見が重視され、そういう人がKOLとして注目されることになります。また、同じ専門家でも、その専門性が深いほど信頼される傾向にあります。例えば単に「美容のプロ」というより「美白専門家」のようなニッチな領域に特化した方が、信頼度が高いのです。情報を流通させる際には、そうした点を踏まえて起点となるコンテンツを作ることが非常に重要であり、さらに皆が買っている感じをうまく演出できるかどうかが、マーケティングの成否を分けるといえます。

 KOLのコンテンツをマーケティングに活用するポイントは、専門性の深さと動画のクオリティーです。いかにも広告然としたコンテンツは受け入れられません。だからこそKOLを起用するわけですが、ここでも、普段投稿しているコンテンツとPRコンテンツのクリエイティブに大きな乖離(かいり)があると、ユーザーからネガティブな反応が起こりやすくなります。KOLのフォロワー数だけを見て専門外、ジャンル違いの製品のプロモーションを依頼したり、本人の心にもないことを無理やり言わせようとしても、かえって逆効果になるわけです。

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