影響力のある個人の情報発信が消費にレバレッジをかける。いわゆる「インフルエンサー」と組んだマーケティング活動が注目されて久しい。スマホ時代に進化するインフルエンサーマーケティングの新潮流とは?
スパイスボックスの物延 秀と申します。Web上での「話題」と「共感」をテーマに、コンテンツを核とした企業のデジタルコミュニケーション支援を手掛けています。
今回は、広告コミュニケーション施策の1つとして現在注目を集めつつある「インフルエンサーマーケティング」について書きたいと思います。インフルエンサーマーケティングとは一体どういうものなのか。注目を浴びる理由や活用事例、課題についてまとめることで、その現状と活用のコツについてお伝えしたいと思います。
私たちの生活にスマートフォンとソーシャルメディアが普及し、今や誰もが自らのコンテンツを手軽に発信できる社会となりました。その結果、「YouTuber」や「Instagrammer」と呼ばれる、各SNSプラットフォームを活用してコンテンツを発信して影響力を持つ新たなインフルエンサーが誕生しました。
こうした環境の変化に対応するように、広告コミュニケーションの設計思考にも大きな変化が表れてきました。これまで「オーディエンス」、つまり企業にとって情報を届ける対象でしかなかった生活者が、情報を流通させる「ネットワーク」として捉えられるようになってきたのです。
海外のマーケティングかいわいでは、各施策がネットワークにもたらす価値(影響力)を「ネットワークバリュー」と呼び、広告コミュニケーション設計においては、これを考慮したコミュニケーション設計が一層重要視され始めています。
そうした中、商品やサービスのターゲットとなる生活者コミュニティーにおいて存在感を持つオピニオンリーダー(的存在)が、商品、サービスについての好意的なメッセージを自らのネットワークに流通させるインフルエンサーマーケティングが選ばれるようになっているのです。
しかし、国内デジタルマーケティングの歩みを振り返ると、インフルエンサーマーケティングは、原理的にはブログの登場以降もてはやされた「口コミマーケティング」や「バズマーケティング」などと大きく変わりません。
かつては自身のブログで情報を発信していたタレントや読者モデル、ブロガーなどが現在でいうインフルエンサーの役割を果たしていました。彼らが企業から依頼された内容を投稿している行為は、インフルエンサーマーケティングそのものです(※1)。行われていることだけを見れば、発信の場がブログからYouTubeやInstagramに移り変わっただけとの見方もできます。
※1 後述するように、広告としての投稿を他の投稿と区別する必要があることは大前提です。
さらに過去にさかのぼって考えれば、例えばゲーム実況というジャンルは、かつて高橋名人がその代名詞であったように、コミック本やテレビを起源とし、年月を経てその舞台がYouTubeに移ったといえるかもしれません。
しかし、今のインフルエンサーマーケティングは以前のそれとは決定的に違います。一番の違いは、有名人でなくても、誰もがクオリティーの高いコンテンツを自ら自由に発信できる時代になったということに他なりません。つまり、Facebook、Twitter、InstagramといったSNSのアカウントを持つごく一般の生活者までインフルエンサーになり得る時代になったということです。
私たちは、インフルエンサーを右の図のように4種類に分類しています《クリックで拡大》
インフルエンサーマーケティングが進んでいる米国では、フォロワー数1万人以内のSNSユーザーを「マイクロインフルエンサー」と呼んでいます。上図の分類では1の一部と2がそれに該当します。
インフルエンサーとマイクロインフルエンサーとは、フォロワー数の違いに加えて、以下のような違いがあります。1つ目は、マスタレントやタレントインフルエンサーに比べ、マイクロインフルエンサーは高いエンゲージメント率(※2)を誇るという点です。
マイクロインフルエンサーのフォロワーは、少数であっても当人と友達だったり同じ職場の人だったりと、比較的関係性の濃い人が多いのが特徴です。そのため、インフルエンサーが投稿したコンテンツに対してエンゲージメントしやすい傾向にあります。
※2 フォロワー数に対する、投稿のエンゲージメント数の割合。エンゲージメントとは、ここでは「いいね」やシェア、コメント、リツイートなど、FacebookやTwitter、Google+での総アクション数に加え、対象コンテンツについて取り上げた記事、およびSNS上における口コミなどの総数を指す。スパイスボックスの独自ツールにて計測。
また、マスタレントやタレントは訴求力が一番の強みですが、数が限られる分、活用できる業種やサービスなどが限定されやすいといった側面があります。その点、マイクロインフルエンサーは一人一人を通じたリーチこそ大きくないものの、SNSアカウントさえ持っていれば誰でもなれる可能性があり、総数は多いと言えます。そのため、企業側が自社のキャンペーンの条件に合った対象者を選びやすいメリットがあります。
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