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» 2012年09月26日 08時00分 UPDATE

【連載】田中弦のアドテクノロジーで吠える!:第2回 なぜ田中は「アドテクアドテク」とワーワー言っているのか (1/2)

アドテクノロジーの進化がインターネット広告市場にもたらすのは、「ネットワーク効果などのネットビジネスの概念」による価値の増大である――。アドテクが注目される意味を独自の視点で解き明かすFringe81 田中氏の連載コラム第2回。

[田中弦,Fringe81]

 連載第2回がやってまいりました。ブログや講演などで「アドテクアドテク」と、Fringe81および田中はワーワーと言って参りました。なぜ、私はこんなに盛り上がっているのでしょうか。ポジショントークでしょうか? それはあります。否定はしません。ただ、私は起業家として自分を定義してしまった以上、「時代感」「使命感」を大事にしています。そして、Fringe81はなぜ、このマゾで素敵な市場に突っ込んでいるのか、その理由を書こうと思います。今回かなり概念的に色々端折って書きますので、全てを正確に表しているわけではありませんが、そこは汲み取っていただければ幸いです。

ネットワークの価値が上がっていく

 アドテクノロジーの進化は、インターネット広告市場を「ネットビジネス化」する――。

 私はこう思っています。私のキャリアの始まりはヤフー動画の原型にあたる動画配信システムの開発だったりするので、実は根っからの広告人ではありません。インターネットビジネスが好きで好きで会社を作ってしまったほどです。インターネット広告市場は、ものすごい勢いで拡大してきました。一方で、ネットビジネスと同じような仕方で市場規模が拡大してきたか? というと、どうもそうではなかったように思います。

 例えば、「ネットワーク外部性」(注1)や、「収穫逓増論」(注2)、「集合知」(注3)、「参加のアーキテクチャ」(注4)などの、ネットワークに参加している参加者(ユーザー数だけではなく商品点数なども含む)の数が多くなればなるほど、ネットワーク自体の価値や生産性が増す、といったニューエコノミーの概念があります。これらの概念を(意識している、いないはともかく)活用することにより、インターネットビジネスは価値や生産性の圧倒的な向上が可能であり、急成長を遂げてきたと思っています。多数の開発者が参加することで発展してきた「Mozilla」「Linux」、参加者と出品者が集まれば集まるほど圧倒的に勝っていった「Yahoo!オークション」などが代表例でしょうか。

(注1)ネットワーク外部性

ネットワーク型サービスにおいて、利用者数が増えれば増えるほど、一利用者の便益が増加する現象を指す。電話やインターネットが代表的なネットワーク型サービス。


(注2)収穫逓増論

投入量を増やしたときに追加的に得られる産出量の増分が次第に増加すること。例えば、生産規模が3倍になると、生産が効率的になり、生産量が3倍以上になるという考え。ビジネス的には、ある市場で最初に最大のシェアを獲得した企業が最大の利益を得て、結果的には勝ち残る、という風に理解される。


(注3)集合知

大多数の人間によって集められた膨大な情報をベースとした知識のあり方。「検索エンジン」や「ソーシャルブックマーク」はその代表例。


(注4)参加のアーキテクチャ

ユーザーを無意識に(あるいは意識的にでも)、あるサービスやコミュニティに参加させる仕組み。ユーザーが増えれば増えるほど、サービスやコミュニティの価値は向上する。


 ではインターネット広告市場はどうでしょうか? 多くのネットビジネスの概念は、BtoC市場の特色をその発端としたものであり、ネットワークで全ての情報がつながっていることを前提にしてきました。インターネット広告はBtoBがメインであり、ネットワークでつながっていない場合も多いもの(例えば、媒体社は通常コンバージョンデータを取得していません。広告主が管理する効果測定ツールのみにデータが蓄積されており、独立したデータとなっていた)ですので、上記のネットビジネスの概念は当てはまらない、そう思われる方もいるでしょう。ただ、私は2012年から、インターネット広告にもネットビジネスの概念が持ち込まれて、圧倒的な生産性および価値の向上が成し遂げられるのではないか、と感じているのです。なぜこのタイミングかというと、特にDSPと第三者配信とSSP、これらが整備されることによって、「大規模なデータ」が「システム」によって「通信・相互接続」し、「データが蓄積」される時代になってきたのではないか、と感じているからです。

 下記の図をご覧ください。

fringe02_01.jpg

 緑色(「自社サイトデータ」「顧客データ」「商品データ」)は、2010年までにすでに存在していたデータです。「自社サイトデータ」は、主にアクセス解析によって得られるデータです。「顧客データ」は顧客データベースに蓄積されています。そして、「商品データ」は、特にEC事業者さんや旅行事業者さんなど、商品点数が多いところは豊富に保持されています。

 青色(「大規模最適化配信と広告買付け」「広告接触データ」)は、2011年から急速に整備されてきたデータです。「大規模最適化配信と広告買付け」データというのは、例えば、DSP経由で配信されるデータです。マイクロアドさんが発表されているように(「2016年のRTB市場規模は2011年の16倍超へ――マイクロアド調べ」)、数千社の広告主が利用を開始しています。数社、ではありません。これは非常に大規模なデータです。2010年以前は、このような広告主サイドのコンバージョンデータから、媒体サイドの面の情報まで、ネットワーク化はされてきませんでした。したがって、このデータは、存在すらしていなかったのです。アドネットワークはその走りではありましたが、現在のDSP並に広告主が多数利用するものではなかったと思います。これだけのデータが、ネットワーク化(相互通信)され、リアルタイムに最適化されていくわけです。参加者が増えれば増えるほど、ネットワークの価値が上がっていく気がしませんか。まさにネットビジネス的なのです。

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