“いつの間にか富裕層”を狙え JCBがプレミアムカードだけで用意する「特別体験」クレカ値上げが相次ぐ中での独自戦略(3/3 ページ)

» 2025年12月24日 06時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]
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定員は約30人のみ 非公開「Special Offer」の設計思想

 4つの新サービスとは別に、「Special Offer」という非公開の枠もある。年間利用額上位の会員だけに届く、招待制の特別体験だ。

 内容はほとんど公開されていない。堤氏が明かしたのは、有名な花火大会や祭りの特別観覧席といった事例だ。

 抽選制ではあるが、「希少性のあるイベントはどうしてもキャパの問題がある」と堤氏は説明する。当選しなくても「いつか届くかもしれない」という期待感が、カード利用のモチベーションになるというわけだ。

【お詫びと訂正:2025年12月26日午後3時、「Special Offer」の内容に関する記載を一部修正いたしました。お詫びして訂正いたします。】

 なぜ非公開にこだわるのか。「非公表だからこその優越感がある」と堤氏は言う。加えて運営上の理由もある。「少人数しか呼べないイベントを大々的に告知するわけにはいかない」。希少な体験を、それを求める人だけに届けるためには、あえて公開しない方がいいのだ。

 興味深いのは、この非公開性自体がマーケティング装置として機能している点である。JCBはSpecial Offerの「存在」だけは公表している。ただし内容は見せない。「『なんか分からないけれど、いっぱい使ったらいいことがありそう』と思ってもらう」と堤氏は狙いを明かす。あえてモヤモヤさせることで、利用意欲をかき立てる仕掛けだ。

左からプレミアムサービスグループ担当の堤若菜次長、牛越祐太主任、司茂真理子副主担

「意味ある消費」の時代へ

 富裕層向けサービスで今後注力する領域を尋ねると、「ただのぜいたく体験ではなく、意味ある消費」という言葉が返ってきた。

 単なる高額消費への回帰ではない。「自分にとって価値があるもの」「ここでしか得られないもの」への支出を厭わない──そういう選別的な消費行動が広がっている。予約困難店へのアクセス、テーマパークのアトラクション貸切、非公開の祭りの特別観覧席。いずれも「お金を出せば誰でも買える」ものではない。

 堤氏は音楽やスポーツの領域にもニーズを感じていると話す。「JCBは日本で一番の老舗カード会社。いろんなところと組んで、スペシャルなものを出していきたい」。パートナーシップを武器にした「お金で買えない体験」の拡充は、今後も続くだろう。

 ザ・クラスの年会費5万5000円は、アメックス・プラチナの16万5000円、三井住友Visa Infiniteの9万9000円、JAL Luxury Cardの59万9500円と比べれば控えめだ。だが「目指したくなるブランド」として、ゴールドやプラチナで実績を積んだ人が次のステージとして手にする——その設計に、JCBの戦略がある。

 価格競争には乗らず、パートナーシップと非公開の希少体験で差別化する。「持っててよかった」と思える瞬間を、いかに設計できるか。その答えが、2025年のリニューアルに凝縮されている。

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