富裕層の在り方に変化がみられる。40〜50代の会社員が、株式や確定拠出年金の運用益で気付けば資産1億円を超えている──NRIはこうした層を「いつの間にか富裕層」と呼ぶ。クレジットカード各社は富裕層向けサービスの強化に動いている中、独自の戦略を打ち出しているのがJCBだ。
野村総合研究所(NRI)の調査によれば、純金融資産1億円以上を持つ富裕層・超富裕層は165万世帯、資産総額は469兆円に達した。いずれも過去最高である。
だが、数字以上に変化しているのは「誰が富裕層になっているか」だ。40〜50代の会社員が、株式や確定拠出年金の運用益で気付けば資産1億円を超えている──NRIはこうした層を「いつの間にか富裕層」と呼ぶ。代々の資産家とは異なり、自らの判断で消費を選ぶ新しい富裕層だ。
彼らの消費意識も変わりつつある。「安ければ安いほどよい」と考える人は22.1%まで低下し、「プレミアム消費」への志向が高まっている。こうした変化を受け、クレジットカード各社は富裕層向けサービスの強化に動いている。年会費60万円近いカードが登場し、外資系は相次いで値上げに踏み切った。
この市場で独自の戦略を打ち出しているのがJCBだ。2025年、同社はプレミアムカード向けサービスを矢継ぎ早にリニューアルしたが、最上位カード「ザ・クラス」の年会費は5万5000円に据え置き。価格ではなく、独自のパートナーシップで差別化を図る構えを見せる。
その狙いはどこにあるのか。イシュイング本部販売促進部の堤若菜次長らに話を聞いた。
クレジットカード会社は、あなたが「本当の富裕層」かどうかを見抜いている。
JCBのプレミアムカードは4段階に分かれている。ゴールド(年会費1万1000円)、ゴールド ザ・プレミア(招待制、1万6500円)、プラチナ(2万7500円)、そして最上位のザ・クラス(5万5000円、招待制)である。上位カードへの招待基準は非公開だが、単純な利用額だけでは決まらない。
「どこで使っているかを見ている」と堤氏は明かす。利用額が同じでも、消費の「質」が異なれば評価は変わる。JCBが重視するのは「強い購買力を持つお客さま」であり、富裕層という定義にはこだわっていない。プレミアムな消費行動を取る層を見極めようとしているのだ。
一般カード会員とプレミアム会員では、求めるものが違う。前者はポイント還元率を重視する。後者は「お得さだけでなく、特別な体験」に価値を見いだす。
「『持っててよかった』と思っていただける方に満足いただくのが目標」と堤氏は語る。この「特別な体験」への期待に、JCBはどう応えようとしているのか。
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