“いつの間にか富裕層”を狙え JCBが高額利用者だけに用意する「特別体験」クレカ値上げが相次ぐ中での独自戦略(1/3 ページ)

富裕層の在り方に変化がみられる。40〜50代の会社員が、株式や確定拠出年金の運用益で気付けば資産1億円を超えている──NRIはこうした層を「いつの間にか富裕層」と呼ぶ。クレジットカード各社は富裕層向けサービスの強化に動いている中、独自の戦略を打ち出しているのがJCBだ。

» 2025年12月24日 06時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]

 野村総合研究所(NRI)の調査によれば、純金融資産1億円以上を持つ富裕層・超富裕層は165万世帯、資産総額は469兆円に達した。いずれも過去最高である。

 だが、数字以上に変化しているのは「誰が富裕層になっているか」だ。40〜50代の会社員が、株式や確定拠出年金の運用益で気付けば資産1億円を超えている──NRIはこうした層を「いつの間にか富裕層」と呼ぶ。代々の資産家とは異なり、自らの判断で消費を選ぶ新しい富裕層だ。

 彼らの消費意識も変わりつつある。「安ければ安いほどよい」と考える人は22.1%まで低下し、「プレミアム消費」への志向が高まっている。こうした変化を受け、クレジットカード各社は富裕層向けサービスの強化に動いている。年会費60万円近いカードが登場し、外資系は相次いで値上げに踏み切った。

 この市場で独自の戦略を打ち出しているのがJCBだ。2025年、同社はプレミアムカード向けサービスを矢継ぎ早にリニューアルしたが、最上位カード「ザ・クラス」の年会費は5万5000円に据え置き。価格ではなく、独自のパートナーシップで差別化を図る構えを見せる。

 その狙いはどこにあるのか。イシュイング本部販売促進部の堤若菜次長らに話を聞いた。

「本当の富裕層」かどうかを見抜いている

 クレジットカード会社は、あなたが「本当の富裕層」かどうかを見抜いている。

 JCBのプレミアムカードは4段階に分かれている。ゴールド(年会費1万1000円)、ゴールド ザ・プレミア(招待制、1万6500円)、プラチナ(2万7500円)、そして最上位のザ・クラス(5万5000円、招待制)である。上位カードへの招待基準は非公開だが、単純な利用額だけでは決まらない。

プレミアムカードのラインアップ

 「どこで使っているかを見ている」と堤氏は明かす。利用額が同じでも、消費の「質」が異なれば評価は変わる。JCBが重視するのは「強い購買力を持つお客さま」であり、富裕層という定義にはこだわっていない。プレミアムな消費行動を取る層を見極めようとしているのだ。

 一般カード会員とプレミアム会員では、求めるものが違う。前者はポイント還元率を重視する。後者は「お得さだけでなく、特別な体験」に価値を見いだす。

 「『持っててよかった』と思っていただける方に満足いただくのが目標」と堤氏は語る。この「特別な体験」への期待に、JCBはどう応えようとしているのか。

「お得」から「特別」へ、消費スタイルの地殻変動。「安さ納得消費」は24年間で半減し、付加価値に対価を払う「プレミアム消費」層が倍増した(出所:NRI「生活者1万人アンケート調査」
       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アイティメディアからのお知らせ

関連メディア