AIは広告業界のスピードをはるかに超えて進化している。その一方、AI倫理に関する議論はまだ道半ばだ。
以下は、インテグラル・アド・サイエンス(Integral Ad Science)の最高コンプライアンス責任者であるケビン・アルヴェロ氏による寄稿である。本文に述べられる意見は、筆者個人のものである。
AIは広告業界のスピードをはるかに超えて進化している。2025年のカンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルは、AIをいち早く導入しようとするムードで満たされていた。
ただ、米Metaが広告主向けにクリエイティブ制作を自動化するAIツール群を発表する一方で、広告代理店を中心にAI投資を拡大するとともに人員削減を発表し、雇用喪失への不安も広がっていた。AI倫理に関する議論もなされていない。
マーケター、出版社、メディア、プラットフォーマーは現在、ほとんどの業務をAIに依存している。AIはメディアバイイング(広告枠の購入)を支えるだけでなく、不正を検知・遮断し、広告文の作成を含めてクリエイティブまでも生成する。
応用範囲は日々拡大しており、パーソナライズされたレコメンデーションから顧客対応、高度なコンテンツ生成に至るまで新しい利用例が次々に登場している。しかし、AIの利用、検証、開示について、明確かつ普遍的な基準はまだ存在しない。各社が手探りで進めているのが現状である。
業界横断で見れば、すでに米国の州政府は透明性や説明責任といったテーマを軸に、AI規制の試行を始めている。広告業界がこうした「つぎはぎ」の規制を待つだけなら、主体的な規範作りではなく、後手に回った受け身のコンプライアンスを強いられるリスクがある。
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