生成AI活用がどんどん広がっています。生成AIは今後、B2Bで特に威力を発揮すると予想しています。
この記事は、『顧客価値を劇的に高める生成AIマーケティング』(大広WEDOテクノロジーチーム著、日本能率協会マネジメントセンター)に掲載された内容に、編集を加えて転載したものです(無断転載禁止)。
生成AIを活用した顧客接点を運用することにより、コールセンターや問い合わせ窓口の役割も、そちらへと移管することができます。
生成AIを導入するメリットとして分かりやすいのは、「即座に」「的確に」「誰にでも公平に」「複数人に対して同時に」「スタッフの属人的なスキルに左右されることなく」対応ができる点です。
実は、購入した顧客が「この商品は悪い」と不満を抱いたところで、企業活動に大きな支障を来すことはそうそうありません。もちろん、よっぽどの不良品を大量に世に出してしまっていたのならば話は別です。ただ、基本的には人それぞれ好みがあり、合う・合わないがあることは、顧客もよく分かってくれています。
たとえ一人が「自分には合わなかった」と不満を抱き、その感想をレビューとして書き込んだとしても、それが大きな売り上げの落ち込みにつながることはあまりないのです。
企業にとって命取りになりうるのは「窓口の対応が悪い」ことです。
そもそも電話がつながらない。メールの返信がない。連絡がついたとしても問題点の把握に時間がかかる。顧客の側に非があるような受け答えをする。アドバイスが高圧的。
これらはいずれも、顧客の怒りに火をつけ、大きく炎上する要素です。しかし同時に、人間のスタッフが対応する以上、どうしても生まれ得る要素でもあります。
その点、対応を生成AIに任せれば、「即座に」「的確に」「誰にでも公平に」「複数人に対して同時に」「スタッフの属人的なスキルに左右されることなく」対応ができます。この安定感は、企業にとって大きなメリットとなります。
コスト面でも、生成AIは優位に働きます。
コールセンターにはどうしても「お客さまのクレームに対応する」という重労働のイメージがつきまとうため、スタッフの定着率が低く、慢性的な人材不足を抱えています。その中でスタッフを採用し、顧客の要望に応えられるまでに育て上げるには、大きなコストがかかります。
また、コールセンターを置く余裕もない小規模経営の企業では、顧客対応のためだけにスタッフを雇うのもなかなか難しいところがあります。
「そのような小規模経営の企業では、そもそも問い合わせ業務なんて発生しないのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、頻繁に発生します。
例えば、新潟県にある小さな鮮魚店は、新鮮な魚を産地直送で全国に配送する業務を行っています。品質の確かな魚を、丁寧な梱包(こんぽう)で配送するのですが、商品に関する問い合わせは毎日やってきて、大きな負担になっています。
「そんな質問、Webサイトを見てもらえれば、いちばん目立つところに書いてあるよ」と言いたくなるような質問まで、お構いなしにやってくるのです。しかし邪険に扱ってしまえばすぐに炎上してしまいますから、真摯(しんし)に対応しています。
ここまで、「問い合わせ窓口の代行」としての役割にスポットライトを当ててきました。しかし私たちとしては、生成AIは「問い合わせ窓口の代行」というよりむしろ「顧客との接点となるさまざまな人および装置の代行」としての役割が大きいと考えています。
生成AIは、顧客情報や会話履歴、商品知識の膨大な蓄積を武器に、常に相手に合わせた対話をすることができます。
この特性は、B2Cのビジネスモデル以上に、B2Bのビジネスモデルで威力を発揮すると私たちは考えています。
例えば、膨大な量の化学製品を扱っているある化学メーカーがあるとします。それぞれの製品に営業パーソンが1〜2人、自身が扱う製品の「専門家」的な役割で担当を任されています。
それぞれの営業パーソンは、自身の専門分野については細部まで詳しく話せますが、顧客との対話の中で担当外の製品のことを聞かれたときには、その製品の担当に話を引き継がなければなりません。扱う製品の専門性が高すぎ、また営業パーソンの専門性も高すぎるために、担当外の分野について営業パーソンが不用意に顧客に説明するわけにはいかないのです。
その点、膨大な知識を蓄積するのは生成AIの得意分野です。複数の製品にまつわる膨大な情報を、全て飲み込み、顧客が必要とする情報を的確に発信することができます。
生成AIを導入することにより、複数の営業パーソンで引き継ぎ合う時間的コストも、コミュニケーションコストも減らすことができるのです。
メーカーの営業パーソンも、コールセンターのスタッフと同様に、常に人材不足であるのが実情です。そのために、会社として、顧客の要望に応えきれないことも多々あるといいます。
生成AIが「営業代行」としての役割を果たしてくれれば、人材不足という課題も低コストで解消することができます。それどころか、営業パーソン5人分、10人分の働きを期待できるのです。