2025年1月のフジテレビの記者会見を機に、CMの差し止めを決めた企業は75社、公益社団法人ACジャパンの公共広告への差し替えは350本以上と言われています。フジテレビのCM問題が波紋を広げる中、「信頼される広告枠」について、マーケターは考えていかなくてはいけません。
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2025年1月のフジテレビの記者会見を機に、CMの差し止めを決めた企業は75社、公益社団法人ACジャパンの公共広告への差し替えは350本以上と言われています。そんなフジテレビのCM問題が波紋を広げる中、広告業界は岐路に立たされています。
電通による2024年の日本の広告費の調査レポートによると、インターネット広告費は3兆6517億円で純広告費の47.6%と過去最高を更新する一方で、広告詐欺による被害は世界で年約13兆円にも上ります。
こうした状況下で、マーケターはどの媒体に注目すべきなのでしょうか? 本記事では、最新データをもとに企業の投資先として“信頼される広告”とは何か、考えていきます。
2024年の純広告費は3年連続で過去最高を記録し、インターネット広告費は全体の約半分(47.6%)を占めるまでに成長。特にSNS上の縦型動画広告を中心に動画広告市場が活況を呈しており、サイバーエージェントの調査によると、2024年は昨年対比170.9%成長の900億円に達し、この傾向は今後も続くと予測しています。
一方で、テレビCMなどのマス広告は3年ぶりに前年比を上回ったものの、広告費の割合としては30.4%まで減少。インバウンド需要の回復に伴い、プロモーションメディア広告費は増加傾向にありますが、やはりインターネット広告の勢いが際立っている印象です。
マーケターとしてはこの変化を的確に捉え、成長著しいデジタル領域への投資と共に、伝統的なメディアとの最適な組み合わせを模索する必要があるでしょう。
マス広告の苦戦が続く中、2025年にはフジテレビのCM差し止め問題が発生し、逆風に拍車をかけました。コンプライアンス意識が一層高まる令和の時代において、この出来事は企業が広告出稿先の“リスク管理”を強く意識している姿勢を改めて浮き彫りにしました。
では、フジテレビCMの減少は実際に広告効果へ影響を与えたのでしょうか? ノバセルが独自に調査した「指名検索スコア」によると、CMの放映本数は大きく減少した一方で、1本あたりの検索誘発力はむしろ上昇しています(※)。問題への注目度の高さや、CM枠が限られたことで広告の印象が強く残ったことがその要因と考えられます。なお他局への波及は限定的で、テレビ広告全体の効果が一律に落ち込んだわけではないことも示唆されました。
※AdverTimes.(アドタイ)「テレビCMは本当に終わりなのか? 指名検索スコア推移から分析する」
CM広告への出稿については、今後の展開次第で予測不可な部分が多いものの、現時点ではテレビCMという枠組み自体を否定するものではありません。むしろ今後、企業がいかにリスクと向き合い、メディアミックスをどう最適化していくかが問われる契機になっているとも言えるでしょう。
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