Googleは2024年末までに完了する予定だったWebブラウザ「Chrome」でのサードパーティーCookie廃止を再延期すると発表した。延期はこれで3度目になる。デジタル広告業界の声をまとめた。
Googleは2024年4月23日(米国時間)、公式ブログ(外部リンク/英語)を更新し、「Update on the plan for phase-out of third-party cookies on Chrome(Chrome でのサードパーティーCookie の廃止計画に関する最新情報)」として、サードパーティCookieの段階的廃止が当初予定されていた2024年第4四半期後半に完了しないことを明言した。「業界、規制当局、開発者からの相違するフィードバックを調整する上で継続的な課題がある」(日本語訳は編集部、以下同)というのが理由。GoogleがCookie廃止を延期したのはこれが3度目だ。
Googleは、サードパーティーCookieに依存しなくてもユーザーのプライバシー保護しながら関連性の高い広告を配信する仕組みとして「プライバシーサンドボックス」を提唱している。しかし、この仕組みについて英国の競争・市場庁(CMA)が競争上の懸念を示している。GoogleはCMAの間でコミットメント(公約)を締結し、プライバシーサンドボックスが市場の競争を阻害することなく十分な機能を備えていることをCMAが評価・確認するまでサードパーティーCookie廃止を実行しないことを約束していた。
2024年1月には全世界のChromeユーザーの1%においてサードパーティーCookieのテストが始まっていたが、テスト結果をCMAが期限と定める6月末までに提出し、CMAがそれを検討するための十分な時間を確保するには時間が足りなかったようだ。
Googleは「私たちは引き続きCMAおよびICOと緊密に連携することに尽力しており、年内にそのプロセスを完了したいと考えている。合意に達することができれば、来年初めからサードパーティーCookie廃止を進めることを想定している」と述べている。
今回のGoogleの決定について、広告テクノロジーを提供する各社はITmedia マーケティングに以下のようなコメントを寄せている(各社コメントは順不同。随時更新予定)。
GoogleはサードパーティーCookieの廃止スケジュールを更新し、CMAとICOとの合意を待って2025年初頭の開始を目指しています。当社Index Exchangeは、この延期は私たちの業界に追加の準備時間を少し与えるだけであり、テスト活動を遅らせるべきではないと考えています。
当社は、このバージョンのプライバシーサンドボックスを引き続きV1と認識しており、パブリッシャーやDSPのパートナーと協力して、大規模なテストができるように努めていきます。並行して、Google、CMA、IAB Tech Labにデザインに関するフィードバックを提供し続けます。業界に対しては、緊急性を高く保ち、アドレサビリティの未来を形作る新しいソリューションをサポートし、テストし、フィードバックを提供することを奨励します。
4月23日のGoogleのサードパーティーCookie廃止の延期決定は、同社が成熟し安定したソリューションを開発することを目指しているならば、賢明な判断です。RTB Houseが参画したプライバシーサンドボックスのテストキャンペーンの初期結果は有望でしたが(関連記事:「テストして分かった『Protected Audience API(旧FLEDGE)』 Cookieよりも期待できそうなこととは?」)、テストを重なる中でRTB Houseが当初から提起してきた遅延に関連する課題などが明らかになってきました。Googleがエコシステムの技術協力参加者からのフィードバックに継続して耳を傾けてくれていることに感謝します。業界が前進するためには、Googleが、何がどの閾値に達すればいいかというマイルストーンを定めるなど、段階的な廃止プロセスの具体的な手順を明確に示すことが必要です。これにより、ユーザーはプライバシーサンドボックスで利用可能な強力な機能を最大限に活用できるようになります。
Googleは、サードパーティーCookieの廃止をこれ以上遅らせるつもりはありませんでした。この数カ月間、Googleは業界全体をより準備の整った状態にするために全力を尽くしてきました。しかし同時に、エコシステム全体として関係者の関与が十分でなかったため、提案されたプライバシーサンドボックスのギャップや欠点を全て洗い出すことは困難な状態になっていました。現在、より多くの企業が参入し始めたことで、遅延の問題など様々な問題が明らかになってきました。これらはテスト参加者が増加したことによってようやく分かってきたことです。
PrimeAudienceはプライバシーサンドボックスの方向性は正しいと信じています。ただ、入札やオークション機能でもそうですが、テストに必要不可鉄な部分が著しく制限されている状況であることを念頭に置けば、より多くの時間が必要なのは当然のことです。このエコシステムの全ての関係者がこの変化に備え、プライバシーを保護するソリューションを受け入れるためにはまだやるべきことがたくさんあり、今年の第4四半期までのスケジュールでは適切な準備期間とは言えませんでした。
われわれはプライバシーサンドボックスの準備状況を客観的に評価しながら、プライバシーサンドボックスの取り組みへの支援を続けます。強調したいのは、業界の準備とはプライバシーサンドボックスAPIの準備だけでなく、エコシステムが適切に機能するために不可欠な関係者、例えばSSPによって構築される必要があるAPI周りのツールの準備も意味するということです。タイムラインが延長されたことで、これまでそうしてこなかった関係者にも関与する余地が増えました。
一度に全てをテストすることはできません。PrimeAudienceの親会社であるRTB Houseのようなテストを行う多くのリーダーによって提唱された段階的な手順を踏んで、サードバーティCookieの廃止へと少しずつ進んでいく必要があります。
Googleがクッキーの廃止を来年頭まで遅らせることを発表しました。これによるCriteoの戦略への影響や変更はありません。当社は引き続き、サードパーティ・クッキーの廃止に対応する多面的なアプローチ(アドレサビリティ戦略)を推進してまいります。具体的には、アドレサビリティ戦略における3つの柱として、ハッシュEメール(HEM)などのファーストパーティーデータの活用、リテーラーやソーシャルプラットフォームなどといったクローズドな環境での消費者へのリーチ、そしてGoogleのプライバシーサンドボックスでのテストに注力しています。Criteoは、全てのステークホルダーにとってオープンで細分化されていない、より効果的なエコシステムのために、プライバシーに配慮しながら規模と互換性の両方を兼ね備えたソリューションの開発に注力し続けることをお約束します。なお、2024年の業績見通しについては、2024年5月2日に予定しております2024年第一四半期の決算報告にて、アップデート致します。
GoogleがサードパーティCookieの廃止を明日実施しようが、2025年に遅らせようが、行動を起こすべきは今です。何かしらの代替ソリューションの導入に着手しているマーケターは、そうでない他社よりもすでに競争優位に立っています。ファーストパーティデータ戦略を持つブランドにとっては、今後デジタル広告を進めていく上で有利になるでしょう。弊社は、マーケターがあらゆる広告チャネルでリーチ、フリークエンシー、データ、プライバシー保護の管理を可能にする「Unified ID 2.0」のように業界全体に向けたIDソリューションを優先的に提供していきます。これは、インターネットにとって重要なアップグレードとなると考えます。
Googleは先日、Chromeブラウザにおけるサードパーティクッキーの規制を再度延期すると発表しました。当初の予定では2023年末にサードパーティクッキーを廃止する方針でしたが、プライバシーサンドボックスと呼ばれる新たな仕様が各方面から懸念を示されており、仕様の見直しと関係者への説明に時間を要するためだと説明しています。
プライバシーサンドボックスは、Googleは自社だけでなくアドテクベンダーやその他の事業者にとってもメリットのある仕様にする必要があるとしていますが、以前からヨーロッパの市場庁からは「Googleに有利な内容になっているのではないか」という指摘もあがっています。広告業界からは、公平性への懸念が根強くあるのが現状です。
Googleとしても、プライバシーサンドボックスの仕様策定では、自社の利益だけでなく業界全体のエコシステムを考慮したバランスの取れた内容にすることが求められます。正直、営利企業であるGoogleにとって、自分たち以外にもメリットが大きい仕様を作ることが求められている状態というのはとても難しい意思決定が求められている状態であるのではないかと思っているので今後の対応はさまざまな意味で興味深いものになっています。
一方で前回サードパーティークッキーの利用停止が延期された時と比較して異なる部分もあります。
以前と比較するとITPのサードパーティークッキーの利用の制限がさらに厳しくなったり、WindowsやFirefoxでのサードパーティークッキーの規制が強化されたことで、サードパーティクッキー規制による広告収益への影響は大きくなっており、実際、すでにサードパーティクッキーが制限されている環境では、媒体社の広告単価が下落しているというデータもあります。
規制強化のスケジュールは不透明な部分もありますが、現時点で発生しているサードパーティークッキーが使えないブラウザに対する対応は進めていくことが求められていると思います。以前の延期した時と異なり広告収益や広告効果という側面でサードパーティクッキーに依存しないソリューションを模索して導入していく必要がある会社は増えてきていると思います。
ここまで複数の市場参加者からサードパーティーCookie廃止までのプロセスに対して、さまざまな懸念が噴出していたことは事実であり、延期の判断自体は致し方ないと捉えています。一方で、前回の延期と異なる点としては、すでに1%のブラウザでサードパーティーCookieが規制され、代替策となるGoogleの「プライバシーサンドボックス」は利用可能な状態に入っており、市場参加者が実際にテストを開始している状況にあることです。
今回の延期判断は、そのような状況において、市場参加者のPostCookieへ取り組む姿勢が本格化してきたことの裏返しであり、より現実的なスケジュールへ落とし込んだ結果だと捉えています。
ITmedia マーケティングに寄稿した連載第1回「サードパーティーCookie廃止のXデーは? 訪れる変化と、今マーケターが取り組むべき対応」でも述べた通り、インターネットの歴史を振り返ってもサードパーティーCookieの廃止論自体は後戻りすることはないと考えられるので、当社としての戦略には大きな変更や影響はありません。延期された期間において、より多くの企業と共に代替施策のトライアル導入を進め品質向上に努めることで、プライバシー保護を前提とした、新しいデジタルマーケティングのエコシステム構築に貢献していきたいと考えています。
Appierでは2012年の創業以来、AIを活用したマーケティングのソリューションを企業に提供しており、戦略的にファーストパーティデータを活用することで将来のトレンドを予測し、企業が顧客とのやり取りをパーソナライズすることの重要性をご提案しております。昨今のデータプライバシーに関する懸念が高まるにつれ、クッキーのトラッキングやデバイスIDの使用といった従来のマーケティング方法は実行不可能となり、ファーストパーティデータとコンテキスト情報に基づくインサイトを活用する方向へとシフトしています。この手法は、マーケティングキャンペーンの効果を高めるだけでなく、変革するプライバシー規制にも合致しています。Appierでは、AIを活用したユーザー行動の分析を通し、個々のユーザーの嗜好に合わせ、リアルタイムで予測を立て、レコメンドなどをWeb表示することが可能です。また、LTV (顧客生涯価値) の高いユーザー行動を学習した当社のAIアルゴリズムは、ファーストパーティデータだけを頼りに、潜在的な新規顧客を効率的に特定してエンゲージします。このユニークな能力は、リアルタイムの予測力、複数のチャネルに散らばる異なるデータを統合する能力、そして変化の激しいデジタルマーケティング活動において、パフォーマンスの最適化に焦点を当てています。
実はITmedia マーケティングは2021年6月にGoogleが2度目の延期を発表した際にも各社のコメントを掲載した(関連記事:「Google、ChromeでのサードパーティーCookie廃止を2023年まで延期 アドテク各社がコメント」)。翻弄されるマーケターと業界関係者の苦労は察するに余りあるが、各社が述べているように、進む方向性自体は全く変わっていない。ITmedia マーケティングも、ポストCookie時代のデジタル広告についてはこれまで以上に積極的に情報発信していく方針だ。
2024年4月26日7時更新。マイクロアドとAppierのコメントを追加しました。
2024年5月1日13時更新。RTB HouseとPrimeAudienceのコメントを追加しました。
2024年5月1日17時更新。Index Exchangeのコメントを追加しました。
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