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» 2023年12月17日 09時00分 公開

ペプシ125周年のブランド大刷新、タコベルは商標闘争で愛され度上昇 2023年の米国ベストキャンペーン【後編】Marketing Dive

Marketing Diveが選んだ2023年の優れた広告クリエイティブ。今回はDunkin’とPepsi、Taco Bellの取り組みについて紹介する。

Marketing Dive

 2023年は、ノスタルジーやポップカルチャーをテーマにしたキャンペーンに積極的に取り組んだ広告主たちが成功を収めた。Marketing Diveは2023年の優れた広告クリエイティブを厳選して紹介している。

 前回のCoca-ColaとState Farm Insuranceに引き続き、今回はPepsi、Dunkin’、Taco Bellの取り組みについて紹介する。


Pepsi:「未来を築くために過去を祝う」でマドンナのCM復刻も

 2023年はブランドの刷新が流行しているが、春に14年ぶりとなる全面的なデザインの刷新を発表したPepsiほどの例はほとんどない。新しい外観の正式な導入は、1か月にわたるマーケティング大作戦の一環として、秋のブランド125周年を祝うタイミングに合わせて行われた。

 ペプシのリブランディングは何年もかけて行われた。ソーダの落ち着いた配色は、シャープな黒のトーンと組み合わせたエレクトリックな青の色合いに置き換えられた。砂糖ゼロの商品を強調するこのリニューアルで、Pepsiのマーケターはミニマルなブランディングから一転、より派手で鮮やかな外観を採用した。これは他の企業でも最近採用されているテーマであり、Pepsiが主張する「破壊者」の評判を受け入れることを意味するものでもあった。

 ペプシで商標担当シニアディレクターを務めるジェニー・ダンジ氏によれば、それぞれの要素は「ペプシの未来を築くためにペプシの過去を祝う」ことを意図している。

 Pepsiは2023年8月、テレビCM、ソーシャルコンテンツ、SMSプロモーション、そしてポップアップレストラン「Pepsi 125 Diner」のコンセプトを含む体験型施策と、多岐にわたる125日間のプロモーションを開始した。この件のマーケティングにおいて力点を置かれたのがノスタルジーだ。それは数十年前のコラボの再構築や、マドンナのようなスターによる過去のCMの復活など、さまざまな形で現れている。Pepsiの商標担当シニアディレクターのジェニー・ダンジ氏によると、それぞれの要素は「ペプシの未来を築くという奉仕におけるペプシの過去」を祝うことを目的としているという。

 「私たちはこのリブランドに全力を尽くしており、非常に良い反応を得ている。人々はPepsiを欲しがっており、Pepsiのことが大好きだ。人々は非常に明確に、これこそが自分の知っている、愛してきたペプシだと認識している。私たちは今回のリブランディングで、これまでPepsiのことが頭になかった視聴者にもPepsiが魅力的に映っていると考えている」とダンジ氏は語った。

「Pepsi 125 Diner」のコンセプト(出典:Pepsi)

Dunkin':ベン・アフレックやアイス・スパイスと描くブランド愛

 スーパーボウルでは、有名人のカメオ出演やおふざけ小芝居があふれる中、ブランドとアンバサダーの両方の強みを生かしたコラボがあった。ハリウッドスターのベン・アフレックが、Dunkin'のCMを監督し、そこに出演もしたのだ(編注:アフレックが実在するドーナツ店の店員としてドライブスルーで接客し、来店客を驚かせるという内容。映像の最後にはアフレックの妻のジェニファー・ロペスも登場した)。

 このパートナーシップは、幼少期をボストンで過ごしたアフレックの地元の朝食スポットへの愛に関して長年語り継がれてきたミーム(編注:アフレックがDunkin'で買ったドーナツのパックと飲み物を抱えるオフショットが有名)に正当性をもたらすと同時に笑いを取ることに成功した。Dunkin'はそれだけにとどまらず、4月にはCM第2弾を制作。こちらは、Dunkin'の店員に、アフレックが彼の幼なじみであり俳優のマット・デイモンと間違えられるという内容だ。デイモンはアフレックの制作会社Artists Equityにおけるパートナーでもあり、Dunkin'は最近、同社と正式に提携している(編注:このCMはデイモンとアフレックが共演し、アフレックが監督も務めた映画『AIR/エア』の公開と同時期にオンエアされた)。

 その後、第3弾ではより若い消費者とのエンゲージメントを図るために、アフレックが新進気鋭のラッパーであるアイス・スパイスに、人気商品の「パンプキンマンチキンドーナツホール」をアイスコーヒーにブレンドした期間限定のドリンクのネーミングと宣伝を依頼した。Dunkin'のCMOのジル・マクヴィカー・ネルソン氏は、この取り組みを実現できたのは同社のマーケティングチームが「ポップカルチャーのスピード」で動いた結果であると、メールでコメントしている。

 「ブランドをカルチャーと結び付けることは、単にブランドやセレブのキャッシュのためにトレンドを追い求めることではない。私たちは、こうした瞬間を利用して、Dunkin'を日常の儀式として常に意識させ、次世代のコーヒー愛飲者との親近感を生み出している」(ネルソン氏)

 「アイス・スパイス マンチカンドリンク」は、Dunkin'のドーナツホール(穴の部分に相当する丸型のドーナツ)と、「マンチカン」として知られるアイス・スパイスのファン層の両方からインスピレーションを得たもので、アフレックとデイモンが脚本を共同執筆した1997年の『グッド・ウィル・ハンティング』を見たことがない消費者向けの施策である。

 「ベン・アフレックとアイス・スパイスのキャンペーンは、誰も想像していなかったスターの力によるコラボレーションだ。パンプキンスパイスの季節をワンランク上にするとても楽しい方法だった。彼らのつながりとDunkin'への純粋な愛情が共有されたことで、このCMはあらゆる層の視聴者の共感を呼んだ」とネルソン氏は語った。

Taco Bell:「Taco Tuesday」の商標解放の戦いにNBAのスター選手も参戦

 Taco Bellは、2023年に「Taco Tuesday」(編注:毎週火曜日にタコスを食べに行く米国の習慣)という言葉を特定の業者による商標の束縛から解放してどのタコス店でも使えるようにすることを目指すキャンペーンを実施した。キャンペーンにはオンライン請願やRedditでの議論など、さまざまな内容が含まれていたが、レブロン・ジェームズまでもがその行動に加わった(編注:ジェームズは2019年、オフシーズン中に家族でタコスパーティーを開いた「It's Taco Tuesday」動画をInstagramで共有して大きな反響を呼んだ)。30秒間のCMでは、このバスケットボールのスター選手がTaco Tuesdayに言及しようとするたびに「ピー」音がかぶされた。

 2023年7月、Taco Bellはついに同業のTaco John'sが1989年から米国の全州(ニュージャージー州を除く)で保持してきた商標を放棄させることに成功した。ライバルチェーンは1店舗当たり100ドルを、子どもを持つレストラン従業員を支援する非営利団体「Children of Restaurant Employees(CORE)」に寄付すると発表し、Taco Bellにも同様の対応を求めた。

 2023年9月12日、商標の解放を記念してTaco BellはDoorDashと提携し、500万ドル分のタコスの無料配達プレゼントを企画した。これは企画に参加する家族経営の零細タコス店に注文されたタコスの代金をTaco BellとDoorDashが負担するというもので、2022年から続く両社の関係を、取引の枠を超えて高めた。

 Taco Bellで最高デジタル責任者を務めるデーン・マシューズ氏は、「それ(編注:商標の解放)を祝う最も確実かつ最速の方法は配達だった。Taco Tuesdayを利用するタコス店に接近し、彼らの力を増幅させ、祝いたいのであれば、それを実現するための最もシンプルで分かりやすいプラットフォームがDoorDashだった」と、Advertising Weekで語った。

 Taco Bellは、商標の解放をはるかに超えた取り組みで目覚ましい成功を収めた。ハッシュタグ「#TacoTuesday」は、14件の投稿で103人のクリエイターから110万ドルのアーンドメディアバリュー(EMV)を生み出した。CreatorIQのデータによると、この印象的なパフォーマンスにより、#TacoTuesdayはEMVで16番目に成功したブランドのハッシュタグとなった。

 この取り組みの成功は、ファストフード業界におけるTaco Bellの強力な地位を物語っている。マシューズ氏はAdvertising Weekで「これが、バーガーが大勢を占める業界でタコスのカテゴリーとタコス文化が繁栄し続けるための方法だとわたしたちは信じている」と語った。

2023年の米国ベストキャンペーン


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