コカ・コーラ×生成AI、スターの熱愛報道に便乗してバズった保険会社 2023年の米国ベストキャンペーン【中編】Marketing Dive

Marketing Diveが選んだ2023年の優れた広告クリエイティブ。今回はCoca-ColaとState Farm Insuranceの取り組みについて紹介する。

» 2023年12月10日 09時00分 公開
Marketing Dive

 2023年は、ノスタルジーやポップカルチャーをテーマにしたキャンペーンに積極的に取り組んだ広告主たちが成功を収めた。Marketing Diveは2023年の優れた広告クリエイティブを厳選して紹介している。

 前回のMcDonald'sとMattelに続き、今回はCoca-ColaとState Farm Insuranceの取り組みについて紹介する。


Coca-Cola:マーケ×生成AI活用の道を切り開く

 生成 AIに関する話題は、マーケティング、テクノロジー、カルチャーの全体にわたる2023年最大の物語になった。しかし、ハイテク大手や代理店持株会社が巨額の投資を行ったとしても、ほとんどのブランドは、クリエイティブな取り組みに生成AIを完全には取り入れていない。

 注目すべき例外がCoca-Colaだ。同社は「ChatGPT」や「DALL.E」などを手掛けるAIソフトウェア開発会社OpenAIと提携した最初の広告主として、早くから生成AIブームに飛び乗った。具体的にはOpenAIおよび経営コンサルタント会社Bain & Companyと共に「Create Real Magic」プラットフォームを立ち上げ、フェスティバルでの音楽やラスベガスの球体型施設「Sphere」の映像ジャック、デジタルホリデーカードの作成に、生成AIを活用してきた。

Coca-Colaは2023年11月、体験型イベント「Destination Y3000」をラスベガスで開催。AIと共同で開発した新フレーバーの「Coca-Cola Y3000 Zero Sugar」のプロモーションのため、AI技術を活用た映像でSphereの外壁のLEDスクリーンに「3000年の世界」を映し出した(出典:Coca-Cola)

 Coca-ColaはAIを使って新しい飲料を作り出してもいる(最近の決算発表によれば、強力な初期結果を確認している)。Coca-Colaのグローバルカテゴリーのプレジデントであるセルマン・カレアガ氏は、同社が消費者向けと非消費者向けの両方でテクノロジーの応用を模索し続けているとMarketing Diveに語った。

 「人々が夢中になり、ブランドに優れた体験を生み出すことができると感じる限り、私たちは間違いなくこのツールを使い続けるだろう。また、社内でプロセスの一部を構築すしてより早く何かを作り、より良いインサイトを利用することができるようにするためにも、やはりこのツールを使い続けると思う」(カレアガ氏)

 生成AIがバズからユースケースに移行する中、カレアガ氏が「私たちには進行中の他のエキサイティングなプロジェクトもある」とほのめかしたように、2024年以降も独自の魔法を生み出そうとしているマーケターがCoca-Colaの先導に続くことが予想される。

State Farm:「ジェイク」とテイラー・スウィフトの今カレの母との邂逅

 State Farmは、プロフットボールリーグNFLのカンザスシティ・チーフスでタイトエンドとして活躍するトラビス・ケルシーと歌手のテイラー・スウィフトの交際を巡る話題に便乗したキャンペーンを展開した。2023年10月1日のフィラデルフィア・イーグルスの試合中、State Farmのマスコットであるジェイク(※1)がトラビス(とイーグルスのセンターであるジェイソン・ケルシー)の母親であるドナとの2ショットをソーシャルメディアで公開したのだ。ゲーム中、ジェイクはドナと一緒に座り、前の週にドナとテイラーが交わした瞬間(※2)を再現した。

※編注1:State FarmのテレビCMに登場する架空の人物(現在の演者は俳優のケビン・マイルズ)で、ソーシャルメディアなどでは同社のスポークスパーソン的な役割を演じている。

※編注2:米カンザスシティのアローヘッドスタジアムで2023年9月24日に開催されたカンザスシティ・チーフス対シカゴ・ベアーズの試合において、ドナとテイラーが一緒に観戦する様子が報じられ、広く話題を呼んだ。

 この企画では2人がチキンナゲットを食べるなどの場面もあった。これは、テイラーの個人的な友人である俳優でプロデューサーのライアン・レイノルズが経営するクリエイティブブティックのMaximum Effortとのコラボレーションによって実現した。全ては非常に短い期間でまとまった。

 State Farmのマーケティング責任者を務めるアリソン・グリフィン氏はMarketing Diveとのインタビューで、「本当のところ、そのようなことは何年、何十年も前から条件を整えた場合にのみ起こるものだ。ボトルの中で雷が偶然起こることはまれだ。ブランドはそのようなことが起こるように、工夫を凝らして適切な条件を整える必要がある」と語った。

 グリフィン氏によると、ドナとジェイクのまさかの出会いはブランドに利益をもたらし、その効果はケーブルテレビ広告1700本分に匹敵するということだ。また、オンラインでもState Farmの指名検索が15倍に増加するなど、その試合中に放映されたState Farmの広告は通常より効果的であることが証明された。

 テイラー・スウィフトの世界ツアー「THE ERAS TOUR」は41億ドルを稼ぎ出す見込みであり、これはソロツアーとしては史上最高の興行収入となる。非常に強力なスター性を持つ彼女は近年、マーケティングの寵児となっている。カンザスシティの試合を観戦中にテイラーがチキンナゲット付けている調味料に関するツイート(※)が拡散された後、Heinzは24時間以内に「Ketchup and Seemingly Ranch」という新しい調味料を考案した。

※編注3:「テイラー・スウィフトはチキンにケチャップとランチに見えるもの(Seemingly Ranch)を付けて食べていた!」という、あるファンのポスト(外部リンク/英語)がXで広く拡散された。ここで言う「ランチ」は米国で人気のランチドレッシング(バターミルクまたはマヨネーズをベースにし、さまざまなハーブやスパイスを組み合わせて作られるクリーミーなドレッシング)のこと。

2023年の米国ベストキャンペーン


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