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» 2020年08月17日 19時00分 公開

ブランドを守るだけじゃない:Momentum×Moat 有力ベンダーが語る広告ROIを高めるアドベリフィケーション (1/2)

近年、アドフラウド(広告詐欺)やブランドセーフティーへの関心が高まっている。アドベリフィケーションは取引の透明性確保のみならず収益の観点からも重要だ。エキスパートの議論に耳を傾けてみよう。

[三ツ井香菜,ITmedia マーケティング]

 近年、インターネット上に配信する広告をコントロールする「アドベリフィケーション」への関心が高まっている。その背景には、広告枠を自動で買い付けするプログラマティックな広告取引において、広告がブランドを毀損するようなWebサイトに表示されて消費者のクレームにつながったり、不正な手法で稼がれたインプレッションやクリックに対して報酬を支払ってしまったりと、企業の不利益につながる問題が浮上してきたことにある。

 アドベリフィケーションに取り組むことは、企業やブランドを守ることにつながる。その一方で今、広告の費用対効果を高めるという視点からもアドベリフィケーションを評価する機運が高まっている。

 本稿では、SupershipグループのアドベリフィケーションベンダーであるMomentum代表取締役の高頭博志氏と日本オラクルで「Oracle Data Cloud」のパートナーマネージメントを担当する西川明里氏が「Supership Day vol.1〜With/Postコロナに求められるデジタルトランスフォーメーション(DX)戦略〜」(2020年6月開催)において語った「アドベリフィケーションの現在地点とこれから」のハイライトを紹介する。

日本オラクルの西川明里氏(左)とMomentumの高頭博志氏(右)

アドベリフィケーションにおける3つの観点

 アドベリフィケーションとは文字通りAd(広告)のVerification(検証)のことだ。具体的には以下の3つの観点でインターネット上に配信される広告を検証する。

  • ブランドセーフティーの観点:ブランドリスクがないか
  • アドフラウドの観点:広告の詐欺が行われていないか
  • ビューアビリティーの観点:広告がどれほど見られているか

 ブランドセーフティーの観点では、例えば著作権を侵害するコンテンツやエログロコンテンツ、犯罪や差別を助長するコンテンツなどに自社の広告が掲載されていないかを検証する。実際、ある大手企業の広告が人種差別的なコンテンツに掲載されてしまい、それがSNSで炎上したことによってさらに多くの消費者の目に触れることになってしまったという不幸な事例もあった。

 アドフラウドは、不正な媒体がコンピュータプログラムでインプレッションやクリック数を水増しし、報酬をだまし取ろうとする手法だ。そういった不正な媒体は反社会的勢力とつながっている可能性もあり、支払った報酬がサイバー犯罪の温床になるというリスクも懸念される。また、実際には広告が人間に見られていることはないのに広告料金だけは請求されているのだから、投資の観点からいっても全くの無駄ということになる。日本国内にけるアドフラウドによる支出は8〜20%に上るといわれる。この支出を削減するだけで広告の投資対効果の向上が見込める。

 ビューアビリティーは視認性という意味だ。実際に人間がページが閲覧していたとしても、それで広告がユーザーの目に止まるとは限らない。広告がスクリーンにきちんと表示されているかどうかを計測しないことには、広告の効果を正しく評価することはできない。米国の広告標準化団体MRC(Media Rating Council)は、静止画では50%の領域が1秒表示されていること、動画では50%の領域が2秒表示されることを以て1ビューアビリティーと定義している。日本オラクルの資料によるとWebサイトおよびアプリにおける視認可能な広告表示率は5割前後にとどまっている。

現在のアドベリフィケーション手法

 アドベリフィケーションへの取り組みは、2つのアプローチがある。1つは、品質が確かな面のみを狙って購入していく方法。つまり、特定のメディアの純広告枠を相対取引で購入して掲載先をコントロールすることだ。しかし、直接取引ができる媒体の数には限界がある。幅広くリーチを狙っていかなければいけないという課題がある中で、あらゆるメディアと相対取引するのは難しい。そこで最近は「ディールID」と呼ばれる秘匿性の高いパスワードを用いて特定のメディアとだけ取引をするPMP(プライベートマーケットプレース)と呼ばれる手法が使われ始めている。

 もう1つは、実際に購入した面の品質を検証する方法だ。広告の掲載を許可するホワイトリストと広告の掲載を除外するブラックリストを作って対策する。ただしこちらも、日々増え続けるインターネットの広告在庫を全て人力で振り分けるのは極めて困難だ。

 そこで有効になるのが、「プレビッド」と「ポストビッド」の2つだ。

 プログラマティック広告においては、ユーザーがメディアにアクセスした瞬間にDSPへの入札の依頼が発生する。プレビッドは、入札を実施する前にアドベリフィケーションのデータを活用して広告を掲載してもいい面かどうかを判定し、制御を行うものだ。NGと判定されれば入札は行わない。つまり、無駄な広告費用の支出を抑えられる。

 ポストビッドは、入札した後に広告の検証を行う手法だ。配信された広告が実際に視認されたか、インプレッションがコンピュータでなく実在する人間によるものだったか、広告の掲載ページにブランドリスクはなかったかなどを、後から検証する。これらの検証データを用いることで、入札戦略をより良いものにできる。以後同じメディアからビッドリクエストがあった場合に、実績に問題がなければ広告が出稿され、NGであれば入稿された広告とは別の、ブロッキングバナーが表示される。

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