――2社が提携したことで、業界に与えるインパクトも大きいと思います。どのような点で影響力を発揮したいと考えていますか。
築地 日本のクリエイティブ業界の労働形態を変えていきたいですね。一般的な会社員は、残業したり土日に働いたりすればその労働分の対価を受け取ります。でも、クリエイターは納品ベースゆえ、どれだけ働いても対価は変わらないのです。そうした慣習が根付いてしまっているからか、クライアントもクリエイターの時間を使うことに無頓着になりがちです。金曜夕方に「月曜までに修正お願いします」と悪気なく連絡してくる。
――一般的に、クリエイターはお金に執着がなさそうな印象があるかもしれませんね。悪くいえばビジネス感覚がないということになるかもしれませんが。
伊達 自分の対価が正しいのかどうか、判断できるクリエイターは少ないかもしれませんね。しかし、正しい対価が分からないのは発注側も同じで、そちらも問題です。実際問題としてビジネス感覚を持つクリエイターを育成するのはなかなか難しいので、交渉はエードットのビジネスサイドで補完して、きちんとお金が回るようにしたいと考えています。クリエイターには、収益や対価を心配することなく、自分の好きなものを自由に作ってほしい。
築地 理想をいえば、クリエイターはクリエイターとして、お金の話など気にせずどんどんとがってほしいという思いもあります。10万円だからこのレベル、100万円だからこのレベルと、金額によって仕事のやり方を変えてしまうのは良いクリエイターとはいえない。どんな案件でも、常に120%で取り組めるようにしてあげたい。
――近年、クリエイティブエージェンシーの買収案件が増加していますが、この流れをどう捉えていますか。
築地 私たちと同じように、ガワだけでなく根本に関わりたいという思いが業界全体で強くなっているのでしょうね。開発が関わってくると、どうしても1〜2年スパンのプロジェクトになるので、安定したキャッシュフローなければ耐えられない。企業体力を増強するためにどんどん合併を進めているのだろうなと思います。
――エードットの上場も、企業体力を増強するという目的があったのでしょうか。
伊達 その側面はあります。プロダクト開発に携わるような、スケールの大きい案件をやりたいのであれば、自社も大きくならなければいけない。
例えば大企業と一緒に大規模案件を進めようとしても、こちら側が小さ過ぎるとデューデリジェンスで弾かれてしまい、そもそも稟議が通らない。大企業と対等に渡り合うためには上場するのが一番だと考えたのです。
築地 私もプロダクト開発に携わりたいと思い始めてから、制作会社が上場する意味を理解しました。クリエイティブの範囲が拡張されてきた今の時代だからこそ、上場することで持てる夢が増えるなと。
伊達 全ては、やりたいことが制限されないためなんですよね。だからこそVC(ベンチャーキャピタルからの)提案は全て断ってきたし、上場しても自己資本比率を下げないようにしているのも、同じ理由からです。
BIRDMANを含むエードットグループのクリエイター陣には、誰からも指図されず、安心してクリエイティビティーを発揮してほしいですね。
水落 絵理香
みずおち・えりか フリーライター。CMSの新規営業、マーケティング系メディアのライター・編集をへて独立。関心領域はWebマーケティング、サイバーセキュリティ、AI、VR/ARなどの最新テクノロジー。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.