インタビュー
» 2020年01月24日 08時00分 公開

経営統合の真意を聞く:エードット×BIRDMAN デジタルクリエイティブ界の強力タッグが目指す「広告のいらない世界」 (1/2)

プロデュースカンパニーとして急成長中のエードットが総合クリエイティブプロダクションであるBIRDMANを子会社化した。両社が描く未来の広告とクリエイティブの在り方について聞いた。

[水落絵理香,ITmedia マーケティング]

 エードットは広告・SP(販促)を中心にさまざまなプロデュース事業を手掛けるスタートアップとして頭角を現し、急成長を遂げている。2018年にローソンが発売した「悪魔のおにぎり」のパッケージ企画を手掛けて脚光を浴び、2019年も食材宅配サービス「Oisix」と映画「クレヨンしんちゃん」のコラボレーションによる三部作の交通広告キャンペーンを実現するなど、大きな話題を呼んだ。同年3月には東証マザーズへの上場も果たし、今この領域で最も勢いのある企業の一つといえるだろう。

 エードットは7つの子会社を擁する。その中で2019年10月にグループ入りしたのが、デジタルに強みを持つクリエイター集団のBIRDMANだ。

 BIRDMANはこれまで、Webを中心にデジタルサイネージ、IoT(モノのインターネット)など最新技術を駆使して広告クリエイティブの世界に革新をもたらし続けてきた。カンヌライオンズをはじめ国内外のデジタル広告賞における受賞歴は約400。日産自動車「Intelligent Parking Chair」やNIKE「NIKE UNLIMITED STADIUM」、直近では故人の名前を呼びかけると遺影が出現するスマート仏壇「コハコ」なども手掛け、守備範囲をますます広げている。

 近隣業界においては博報堂によるIDEO買収やAccentureによるDroga5買収など、大手企業がクリエイティブ機能を取り込む動きも見られるが、エードットとBIRDMANの2社が連携する意義とは何なのか。エードット代表取締役の伊達晃洋氏とBIRDMAN代表取締役の築地ROY(ロイ)良氏に聞いた。

伊達晃洋氏(右)
1984年島根県出身。島根県立松江東高校卒業後に上京。

フリーターをへて2005年から3社で広告・プロモーションの経験を積み、2012年にエードットを設立。店頭プロモーションを皮切りに事業を拡大し、2019年3月に東証マザーズ上場を果たす。子会社であるカラス、噂、円卓、BIRDMANの取締役も務める。
築地ROY良氏(左)
1973年シドニー出身。グラフィックデザイナーからFlashにはまりインタラクティブ制作を始め、2004年にBIRDMANを設立。「Installing Crazy Ideas Everywhere」というミッションを掲げ、少しでも社会や世界を面白くしていきたいと思っている。最近ではメーカー企業やスタートアップとコラボレーションし、新たなプロダクトやサービス、体験や価値を生み出すコンサルティングも行っている。


広告よりも、広告しなくても売れる商品を作りたくなった

――BIRDMANがエードットの傘下に入るに至ったいきさつを教えてください。

築地 そもそもの動機としては、広告ではなく、プロダクトやサービスを作りたいと思ったということがあります。一番の転機となったのはMTGが手掛ける「SIXPAD STATION」に携わったこと。EMS(Electric Muscle Stimulation:筋電気刺激)機器とIoT、AR(Augmented Reality:拡張現実)などを取り入れた近未来型トレーニングジムという試みに企画開発段階から入り込んだことで、ガワ(見た目)をよく見せるための広告を作るだけでなく、もっと商品そのものの魅力を上げることに取り組みたいと感じるようになったのです。

 従来であれば、例えば自動車を売るための広告企画のオファーがあったとして、その車をどう撮ればきれいに見えるのか、どのようなキャッチコピーを添えれば受け入れてもらえるのかを考えてきたわけですが、それよりもむしろ自分たちの手で魅力的な車を作って、極論広告なしでも売れるようにしたいというイメージです。

 ただ、開発段階から携わるとなると、それなりの資金が必要になるし、数カ月で完結するものでもありません。また、自分たちでプロダクトアイデアを練っても、受け入れ先となる依頼主がいなければ実現しない。BIRDMANは創業から15年間、ずっと営業なしで案件を受注できてましたが、逆にいえばアイデアを売り込むための営業リソースは持っていない。

――そこを補うためのパートナーが必要だったのですね。組む相手としてエードットを選択したのはどのような理由によるのでしょう。

築地 提携先を探していたところ、たまたまある方の引き合わせで伊達さんと知り合いました。他にも何社かの方とお会いしたものの、実際話してみて、組むならエードットだなと確信しました。

 M&Aなので買収金額は重要ではあるのですが、それよりも優先していたのはBIRDMANの社員が喜んでくれるかどうかでした。初めてここ(エードット本社)を訪問した際も、「ここは、営業時間中にいきなりドローンを飛ばしても許してくれるだろうか」などと想像してました(笑)

――クリエイターに発想が生まれたらすぐ行動できる環境なのか、と。

築地 そこを許容してくれるかどうかは、実はすごく大事なことです。許容できない会社の傘下に入ってしまうと、当社のクリエイターの良さをつぶしてしまう。

 もっといえば、それを許容してくれた上で良いシナジーが生まれそうな会社を望んでいました。足し算ではなく掛け算になるような。その点で、エードットは最高の結婚相手といえると思いました。

――一方で、エードットとしては今回どのような狙いがあってBIRDMAN買収に手を挙げたのでしょうか。

伊達 エードットは、(博報堂出身のクリエイターである牧野圭太氏がCEOを務める)カラスをはじめ、さまざまなクリエイティブ組織を既に保有していましたが、そこからさらにもう一歩、違うジャンルに踏み出したいと考えていました。

 2019年3月に上場したことで、今後の事業展開にレバレッジをかける必要があったからです。これまで通りでも、現状が10だとして5をプラスするくらいの成長はイメージできる。でも、10を30にするぐらいの事業展開をしたかった。BIRDMANと組めばそれぐらいの成長が見込めると思えたのです。

 また、先ほどROYさんが話した「ガワだけでなく商品開発から携わりたい」という思いを僕も持っていました。

 根底にある価値観は同じだけど、エードットとBIRDMANは持っているスキルが全く違う。例えば、僕たちはテーマパークのアトラクションを開発する案件を取ってくることはできるし、構想もできるけど、実現するために何をすればいいのかは分かりません。でもBIRDMANはその術を知っている。両社の強みが組み合わさることは、プラスの作用しかないと感じました。

 ROYさんとお話ししてから、かなり熱烈にアプローチしたので、返答を待つ間は片思い中の中学生みたいにソワソワしましたね(笑)

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