Marketo×DataRobotの連携で見えた「AIドリブンマーケティング」の未来属人的になりがちなリードスコアリングを自動化(1/2 ページ)

「AIの民主化」でマーケティングはどう変わるのだろうか。【訂正あり】

» 2018年11月12日 06時00分 公開
[冨永裕子ITmedia マーケティング]

 マルケトとDataRobot Japanは2018年10月にパートナーシップを締結し、「Marketo」と「DataRobot」の連携を実現した(関連記事)。実はこれは2017年のマルケトユーザー会における交流が発端なのだという。マルケトの石野真吾氏(ソリューションコンサルタント)が前職のSansanにおいて一ユーザーであった頃、電通デジタルの有益伸一氏(ソリューションディベロップメント事業部 デジタルイノベーショングループ マネージャー)がDataRobotの存在を教えたのがきっかけだ。

 本稿では、2018年11月2日に行われたマルケトの年次カンファレンス「The Marketing Nation Summit 2018」における、石野氏と有益氏、DataRobot Japan データサイエンティストの中野高文氏によるパネルディスカッションから、AI駆動型B2Bデジタルマーケティングの最新の知見を紹介する。

【訂正:2018年11月12日9時10分 初出時、写真のキャプションにおいて有益氏と中野氏が入れ替わっていましたので訂正しました】

左から石野氏、中野氏、有益氏

Sansanで実践した世界初のユースケース

 冒頭で石野氏は、今回のDataRobotとMarketoの連携は日本から世界初のユースケースを発表することができた「渾身の成果」であると強調した。同氏はマルケト入社以前、Marketoを使って世界で最も収益を挙げた人に贈られる「Revvie Award」を受賞した実績を持つ最高峰のパワーユーザーでもある。石野氏は10月の発表の前に至る以前、古巣のSansanに在籍していたころにDataRobotを知った。その後、MarketoとDataRobotの連携でどのようなことができるか、独自に検証してきたという。

 DataRobotは、機械学習の自動化によりスキルレベルを問わず誰もがより良い予測モデルを作り、ビジネスに展開できる「AIの民主化」を提唱している。Marketoも難しい操作の必要ないプロダクトを目指してきたという共通点がある。

 DataRobotの機械学習を適用した領域はリードスコアリングだ。マーケティングオートメーションにおけるスコアリングは基本的にルールベースが基本だ。そのため「この人は部長だから50点」「見積書をダウンロードしたから80点」など、点数を付けるためのルールはマーケターが勘と経験で決めることが多い。石野氏はユーザーの立場で、リード件数が増えれば増えるほど、人間だけでは論理的なルール運用が難しくなるという悩みを抱えていたという。

 リードの数が増えれば比例してルールの数も増える。少ないルールを運用する分には何とかできても、新しいキャンペーンを実施するごとに複雑なルールを見直さなくてはならないのは大きな負担になる。この悩みを解決したのが、DataRobotだ。中野氏は「世界トップクラスのデータサイエンスの専門家集団であるKaggler(カグラー)が開発したものでありながらも、プログラミングや統計知識がなくても使えるプラットフォーム」と、DataRobotの特徴を紹介した。その予測モデリングは「データをアップロードする」「何を予測するかを決める」「開始ボタンを押す」の3ステップで終わる。しかもさまざまなアルゴリズムを試して複数のモデルを作り、その中から最も精度が高いものを選んで実行することができるのだ。

 MarketoのデータベースからAPI経由でデータをDataRobotに渡すと、DataRobotは予測モデリングを実行し、結果をAPI経由でMarketoに戻す。Sansanではこの連携をリードスコアリングに使い、どのリードに注力すべきか、DataRobotの予測を基に決めるように変えた。以前はテレビCMのように新しいキャンペーンを展開するごとにスコアリングルールを見直さなくてはならなかったが、DataRobotが過去にアポ取りにつながったリードのデータを学習し、Marketoにアポ取りの確度が高いリードを予測して返すようにした。これにより、マーケターは予測結果を見て「確度が85%だからインサイドセールスに渡して、すぐに電話をしてもらう」といった判断ができるようになった。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

関連メディア