「Adobe Symposium 2017」でAdobe Systems 会長・社長・CEOのシャンタヌ・ナラヤン氏は、クラウドビジネスへ移行した同社自身の経験から、デジタル変革の意義について語った。
2012年に立ち上げた「Adobe Creative Cloud」を皮切りに、ビジネスの主戦場をクラウドと定め、パッケージソフトウェア販売からサブスクリプション(課金)モデルのサービスへと舵を切ったAdobe Systems(以下、Adobe)。「Adobe Symposium 2017」のために来日したAdobe 会長・社長・CEOのシャンタヌ・ナラヤン氏が、同社がかつて経験した困難、そして再成長への道について語った。
ステージに立ったナラヤン氏は冒頭、次のように切り出した。
「世界中でデジタル変革が起きている。テクノロジーは速いスピードで私たちの生活を変えているが、それによりプレッシャーと恐怖心も生まれている。そして、この変革はAdobe自身も経験してきたものだ」
Adobeはクリエイティブ支援ツールのデファクトスタンダードとなる製品を提供し、多くのクリエーターに使用されてきた。それは今日に至るまで変わらない。しかし、2008年にナラヤン氏がCEOに就任したとき、同社は岐路に立たされていた。画像編集と加工ツールである「Adobe Photoshop」をはじめ、DTP(デスクトップパブリッシング)ツールの「Adobe Indesign」やPDF作成ツールの「Adobe Acrobat」など、Adobe製品は各ジャンルにおいて圧倒的に高いシェアを誇り、同社は市場のリーダー的な存在であり続けていた。しかし、成長が鈍化し始めていたのだ。
「過去の成功によって、私たちの成長はずっと続くものと思ってしまっていた。しかし、間違っていた。モバイルがデスクトップのソフトウェアにとって代わろうとしていた。私たちがWebサイトを作るためのツールに注力している間に、Webサイトを簡単に構築できるようなサービスを提供する企業がどんどん出てきて、私たちを追い抜いて行った」
現状維持は戦略ではないとナラヤン氏は言う。ならばどうするか。自問自答した結果、「コンテンツのリーダーから、コンテンツとデータのリーダーになる」と決めた。コンテンツに関わるビジネスはこれまで通り行っていくが、制作の部分だけでなく、コンテンツを管理し、その効果を測定し、収益化するところまで全て支援しようと、ビジネスを拡張することを決めた。こうして、「オポチュニティへのドアを開いた」のである。
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