B2Bマーケティングエージェンシーの各国代表が集うIDN(InterDirect Network)。今回は同組織の役割や現在直面する課題について解説。
日本におけるB2Bマーケティングの第一人者として知られるシンフォニーマーケティング代表取締役の庭山一郎氏。2017年4月には米国視察を敢行し、ITmedia マーケティングで掲載したレポート「庭山一郎の米国B2Bマーケティング紀行」が好評を博したが、翌5月にはInterDirect Network(以下、IDN)の年次イベント「InterDirect Managers Meeting 2017」に参加するため欧州へ渡った。前編「英語の国で生まれたB2Bマーケティング、欧州各地の最新事情」では、欧州各国におけるB2Bマーケティングの現状が語られたが、後編ではいよいよ、今回の旅の目的であるIDNのエグゼクティブ会議について報告してもらおう。
IDNは、世界各国の独立系マーケティングエージェンシーが協業してそれぞれの国を越えたキャンペーンをサポートすることを目的として、1988年に誕生しました。設立の中心となったのは、オランダを代表するマーケティングエージェンシー創業者のピーター・バンデンバスキン氏です。
世界のマーケティングエージェンシーは、広告代理店やコンサルティングファームと同じように2つに大別されます。1つは顧客のグローバルキャンペーンを世界中で同時に展開できるリソースを持つエンタープライズエージェンシーです。OgilvyOneやMerkle、Wundermanなどがこれに該当します。これらの会社は世界中に拠点を持ち、数千人のスタッフを抱えています。いずれも元は独立系でしたが、現在は大手広告代理店グループの傘下に入っています。
もう1つはブティックエージェンシーと呼ばれるもので、スタッフ数が30人から150人くらいの規模の会社です。小規模なので経営幹部が直接顧客を担当することが多く、顧客企業の製品のマーケティング戦略や販売計画にも関わり、顧客企業のマーケティングチームと一体になってワークします。しかし、ブティックエージェンシーにはリソースの問題で顧客のグローバルキャンペーンをサポートすることが難しいという課題がありました。
IDNは各国のブティックエージェンシーが加盟し、密接に協業することで、それぞれが抱える顧客企業のグローバルキャンペーンをサポートすることを目的に設立されました。そのために創設者のバンデンバスキン氏が考えたコンセプトが「1カ国1エージェンシー」です。加盟資格があるのは、各国を代表する実績を持つ独立系のブティックエージェンシーだけ。IDNが事前に審査し、選ばれたエージェンシーを招待する方式を採っています。
現在は欧州諸国に米国、さらにはアジア諸国も加わり、世界30カ国のマーケティングエージェンシーが参画しています。日本からは私の会社、シンフォニーマーケティングが、約6カ月の選考期間を経て2017年2月に正規のメンバーとなりました。
IDN加盟社の社員数は合計すると2100人を超え、クライアントは600社を超えています。この密接な関係の中で、国をまたいだキャンペーンのナレッジやそれぞれの国内でのナレッジ、そして最新のテクノロジーやサービスなどの情報を共有し、それぞれの顧客企業に提供するサービスレベルの向上に役立てています。
実際、IDNのケーススタディーを見ると、そうそうたる大手エージェンシーとのコンペに勝利しているのが分かりますし、その成果も非常にレベルが高いものです。
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