プレミアムチケット販売の「LUXA」が実践、ECにおける“おもてなし”とは? Webサイトで“お声掛け”を実現(1/2 ページ)

「Web接客ツール」として注目を集める「KARTE」を導入したECサイト「LUXA」の事例から、Webサイトにおけるプッシュ型の“おもてなし”について考察する。

» 2015年10月05日 08時00分 公開
[野本纏花ITmedia マーケティング]
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 世界で初めてWebサイトが生まれてからはや20年以上が過ぎたが、今なおWebサイトは「プル型メディア」と位置付けられる。基本的には誰かがアクセスしてくるのを待つ他ないということだ。メールやSNSを活用してプッシュの情報配信をすることはあっても、それはあくまでもWebサイトの外で行われていること。リアル店舗でいうところの“ビラまき”や“DM”とさして変わりはない。しかし本来、コンバージョンを促す施策が本当に必要なのは、「来店中=Webサイトを訪問している間」なのではないか。本稿では、「Web接客ツール」として注目を集める「KARTE」を導入したECサイト「LUXA」の事例から、Webサイトにおけるプッシュ型の“おもてなし”について考察する。

期間限定プレミアムチケット販売サイトの課題

 LUXAは、いわゆる「フラッシュマーケティング」の技法を用いたユニークなECサイトだ。有名レストランの食事券や高級旅館の宿泊券、花火と夜景を楽しむクルージングのチケットといった、本来値引きされることが少ない商品を、一定の期間に限り最大90%オフというお得な価格で提供している。

 商材の入手方法は共同購入ではなく、レストランであれば客足の少ない日を選ぶといったように、過剰在庫を安く仕入れて特別価格で提供するモデルを採用する。このため、もともと安売り前提で品質を下げたものをつかまされるということがなく、同サイトのキャッチフレーズである「お得に贅沢体験」が実現できるというわけだ。

 運営元のルクサはもともと、会員制転職支援サイトを運営するビズリーチの1部門としてスタート。分社化した後、2015年4月にKDDIの子会社になった。LUXAの会員数は本稿執筆時点で30万人以上を擁する。

 品数で勝負する一般的なECサイトと異なり、高級志向で品数を絞ったLUXAでは、商品の価値と安い価格をてんびんに掛けたときに生まれる驚きによって、衝動的な購買を促すことが1つの肝になる。従来、主にその役割を担ってきたのはメールやSNSにおけるプッシュ配信だが、冒頭で述べたようにそれらは結局Webサイトの外部で行われることで、全てがWebサイトへの流入に結び付くわけではない。うまくWebサイトに導くことができたとしても、そこから先はユーザー次第だ。リアル店舗であれば、店員の“声掛け”に背中を押されてレジへ向かうことも少なくないが、ECではそうはいかない。

 「そこで、Webサイトまで来ていただいた方に対して、直接メッセージを届けられる仕組みがあれば、購買促進につなげる上で大きなメリットだと考え、『KARTE』を導入しました」と、ルクサ マーケティング部長 高桑 諭氏は話す。

 KARTEとは、プレイドが提供する“Web接客”を実践するためのツール。Webサイトの訪問客をリアルタイムに分析して、一人一人に最適な接客を実現する。KARTEでは、ユーザーがWebサイトを訪れたときからリアルタイムで分析が始まる。「どこから来たのか」「初めての訪問者なのか、既存顧客なのか」「購買履歴はあるのか」といった情報を瞬時に判断し、あらかじめ設定された条件が当てはまった場合、ユーザーが見ている画面上に特別なメッセージを表示する。

ユーザーに最適化したメッセージをポップアップ表示

 LUXAでは、KARTEが2014年9月にクローズドβ版を公開した当初から活用を始めているという。例えば、LUXAでは初めに購入してから2日後の23時59分までに追加購入すると送料が安くなる「おまとめ配送」というサービスを提供しているが、普通に商品ページを見ているだけではなかなかそれに気付かない。そこで最初の購入があったときにすかさずこれを紹介し、次の購入を促している。 

 KARTEで配信するプラスαの情報は、迷っているユーザーの背中を押す。ルクサ マーケティングチームの鈴木吉貴氏は、実際の効果について「施策によっては、コンバージョンレートで2〜3%増、売り上げが1.3倍くらいまで伸びたものもあります」と話す。施策はA/Bテストを行った上で統計的に有意差が出ているかを判断をし、効果が見込めるものについては全体に適用するようにしている。

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