米ヤフーは現地時間2013年5月20日、Tumblrの買収を正式に発表した。買収額は約11億円だという。これを受け、一部のTumblrユーザーが、これまでTumblrにアップしていたコンテンツをWordpressに移行する騒ぎもあったそうだ。
両社の公式発表によると、「ヤフーはTumblrにパーソナライズ技術や検索機能のプラットフォームを提供し、Tumblrは月間3億のユニークビジターによるコンテンツを提供する」としており、「この買収により、Tumblrの経営/サービスや今後の展開については、これまでどおりの体制を維持していく」と表明している。ただ、ニューヨークタイムズなどによると、「従来のPCベースのWebサイトからの脱却が遅れ、広告収入の伸びもいまひとつのヤフーが、広告事業強化に向けてTumblrを買収した」という見方が強いようだ。
ClickZ.comではこの発表を受け、“How Will Yahoo's Purchase of Tumblr Affect Advertisers?”(「ヤフーによるTumblrの買収は、広告主にどのような影響を与えるか」)というコラムを掲載した。メディアエージェンシー、IT企業(ウェブブラウザの開発/提供)、マーケティングコンサルティングと、3つの視点から今回の買収について語っている。
まずメディアエージェンシー・MEC社では、今回の買収を好意的に捉えている。第一に、Tumblrにとっては、広告主に対して広告効果を明示できるインフラを整備できること。第二に、ヤフーの方は、18〜34歳のユーザー層を一気に取り込める点だ。この年代は、広告ターゲットとしての価値もさることながら、ヤフーの弱点でもあるモバイルアプリのヘビーユーザー層という点でも大きなメリットがある。ただ、ソーシャルブックマークとブログを融合した“何でもあり”のTumblrの自由さを愛するユーザーが離れていかないように、統合は慎重に進めた方がいい」というスタンスだ。
対して、「今回の買収は、ヤフーにしかメリットがないのでは」という見解を示すのが、Webブラウザを開発/提供するPerk社だ。特に懸念しているのが、Tumblrがヤフーの広告戦略に組み込まれることで、「もしヤフーがTumblr上で過剰な広告販売を展開するなら、ユーザーは、SvbtleやMediumなどほかのプラットフォームに流出するだろう」と見ている。ユーザーがこの買収による価値をどのように評価するのか、そしてTumblrから離脱するかどうかは、今後の動き次第だが、一方で「ヤフーとTumblrで、ユーザーにストレスをかけないインストリーム広告を開発していくことができるのでは」というポテンシャルも感じているという。
マーケティングコンサルティングのMXMは、「優れたネイティブ広告なら、Tumblrのユーザーにもそれほど悪影響がないのでは」と楽観視している。FacebookやTwitterでは、ネイティブ広告の導入以来、離れたユーザーも多少はいたかもしれないが、「現在、コンシューマーは、『コンテンツに対する支払いが必要』ということを理解し始めている」と同社はいう。その支払い方法が、広告になのか、それともプレミアムの閲覧契約という形になるのかの違いだ。
いずれにしろ、Tumblrの機能や使い勝手、そして独自性を失わず、いかに両社がマネタイズしていくかが、買収成功のカギになりそうだ。
※本記事は、ClickZ.comの記事“How Will Yahoo's Purchase of Tumblr Affect Advertisers?”(「ヤフーによるTumblrの買収は、広告主にどのような影響を与えるか」)を抄訳/編集した記事です。
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