多くのBtoBマーケターが見落としがちなことの1つに名刺管理があります。BtoBマーケティングはリードを獲得することに始まり、確度の高いリードは営業にパスしつつ、確度の低いリードに対してはメールやコンテンツを発信しながら育成する、というステップを踏みます。しかし、このプロセスを辿ることに注力し過ぎると、見落しまうことがあります。“営業名刺”こそ隠れたホットリードだという点です。
本連載では、名刺を活用してBtoBマーケティングの成果や費用対効果を向上させるヒントをお届けします。名刺をデータベース化し、社内で名刺データを共有するだけで、人脈の共有したり、案件を発掘したり、メールマーケティングの配信母数を増やすことができます。名刺は顧客接点と人脈の証です。営業が個人で抱えがちな未案件化顧客情報や、社内で可視化されづらい人脈を利用して、営業を強くするノウハウや概念をご紹介できればと思います。
まず、BtoBマーケティングにおけるプロセスの全体像を確認したいと思います。さまざまな切り口や考え方があるとは思いますが、今回は次のようなステップで考えます。
マーケティング部では、(1)リードを集めることに始まり、(2)確度の高いリードからアポイントを獲得します。アポイントを獲得した後は、(3)各営業が訪問し、顧客へのヒアリングや提案をします。営業は、訪問した見込み顧客の中でも、(4)受注見込みが高く、案件化した顧客に対しては、商談を進めクロージングします。一方で、(5)案件化しなかった顧客については、営業担当者が個人で定期的にフォローアップすることもあれば、手をつけずに放置することもあるでしょう。
マーケティング部門では、広告やコンテンツを配信したり、展示会への出展やセミナーの開催を通してリードを獲得します。また、獲得したリードに対して電話をしたり、メールをしてアポイントを獲得し、営業先を増やすことまで担当することも多いようです。リードの基本情報や受注見込み、ヒアリング内容やアプローチ結果は、マーケティング部門向けのデータベースに記録/蓄積されます。
一方で、営業部では、後半の(3)〜(5)のステップを担当します。各営業は、訪問した見込み顧客の受注見込みが高ければ、案件として商談を継続して受注を目指します。商談内容や案件の進捗状況などはいわゆるSFAに登録され、営業KPIとして管理されたり、マネージャーとの情報共有に利用されます。
このように、BtoBマーケティングプロセスにおいて、マーケティング部門と営業部門という2つの部署がそれぞれ役割を分担しています。
ここで問題にしたいのは、マーケティン部門がアポイントを獲得したものの、営業が訪問した後に案件化しなかった顧客、つまり(5)の訪問済み未案件化顧客です。実は、この訪問済み未案件化顧客こそが隠れたホットリードの源泉になります。
一度訪問した顧客は、タイミングや提案を改めることで、再案件化したり、受注する可能性が大いにあります。なぜならば、一度顧客を訪問したということは、顧客のビジネスモデルやニーズ、決裁者について知る機会があるからです。その分、次回の提案がしやすくなっているはずです。
例えば、全くの新規顧客と一度訪問したことのある顧客では、後者の方が受注率が高くなります。顧客のビジネスモデルを理解していたり、キーマンのミッションやニーズ、予算期が分かっている分、再アプローチすべきタイミングを逃さなければ、刺さる提案ができるはずです。
また、受注率だけでなく、コストがかからない点も訪問済み未案件化顧客を攻略する理由になります。多くの場合、ゼロからの新規開拓はテレアポやWeb広告といった非効率な工数やコストがかかります。一方で、訪問済み未受注顧客の攻略にはそういったコストはかかりません。
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