移動をしているときに「これ食べたいな」と感じたことがある人も多いのでは。なぜ人は移動中にモノを買いたくなるのか。人の移動に注目し、分析をしているジェイアール東日本企画 駅消費研究センターの担当者に話を聞いた。
何気なく歩いていて、こんな買い物をしたことはないだろうか。ディスプレイに並んでいるスイーツがおいしそうだったので、ついつい買ってしまった――。
もちろんスイーツでなくてもいい。それはジュースでもいいし、本でもいい。歩いているときに買うつもりはなかったのに、衝動的に買ってしまう。なぜ人は“移動中”に買い物をしてしまうのだろうか。
こうした人の移動に注目して、生活者の購買行動などを分析している会社がある。その名は「ジェイアール東日本企画 駅消費研究センター」。さまざまな調査を行った結果、移動者のどのようなことが見えてきたのか。同センターの中里栄悠(なかざと・えいゆう)さんに話を聞いた。聞き手は、Business Media 誠編集部の土肥義則。
→人はなぜ駅で買い物をするのか? 潜在意識を分析した(前編)
→本記事(後編)
土肥:「ジェイアール東日本企画 駅消費研究センター」では“移動者”のことを分析され、これまでさまざまなことが分かってきました。東京駅30キロ圏内に住む人の約半数は「週1回以上」駅関連の商業施設で買い物をしている。また駅で買い物をする人の深層心理なども、前編では紹介してきました。
“移動者”を研究したことで、どのような効果が生まれたのでしょうか。成功事例などがあれば、教えてください。
中里:成功事例をご紹介する前に、まず私たちの生活環境のお話をさせてください。首都圏ではお店が氾濫していますよね。ドイさんが通勤されている途中に、コンビニは何店ありますか?
土肥:えと……3店ですね。ちょっと寄り道すると、もう2〜3店あります。
中里:私も通勤途中に、コンビニが5店あります。コンビニ以外にもスーパーや駅ビルがあります。ちなみに私の家は商店街の先にあるので、お店の数を数えることができません。もちろん人によって違いはありますが、昔と比べると現代人は無数の店舗に囲まれて生活している。「店に行こう」と思って行くというよりも、店のほうから近づいてくるといった感じ。都市生活者はいわば“大きなショッピングセンター”の中で生活をしている、と言ってもいいのではないでしょうか。なので私たちの移動中というのは、常に「潜在的な顧客状態」にある、と思うのです。
またスマートフォンの普及によって、情報がリアルで入るようになりました。それは生活者のブランドへの態度がリアルタイムで変わることも意味しています。例えば、Aというブランドの靴がいいので買おうと思っていたのに、購入直前にFacebookを見たら友だちが「Bというブランドの靴をオススメ」していることが分かった。その情報を見て「Aをやめて、Bを買おう」となってしまうのが、いまの時代ですね。であれば、買い物の直前には必ず移動があるわけですので、移動シーンの生活者を狙えばいいのではないか、と考えたわけです。
土肥:なるほど。
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