中里:駅で買い物をする人の背景に、さまざまな心理があることが分かりました。中でも3つのパターンが浮き彫りになりましたので、順番にご説明しますね。
まず、40代男性の会社員(既婚)は、カフェを利用するときの気分としてこの写真を選んでくれました。
土肥:ん? スイッチを押している写真ですが……カフェとどう関係があるのですか?
中里:会社員の男性はこの写真を選んだ理由をこのように言っていました。「駅で溜まったため息を全部吐き出して、話したくないことを家に持ち込まずに帰りたい」と。男性は人事部に所属されていて、職場で精神的に辛いことがたくさんあるようでした。そこで会社と家庭の間にある駅で気分を切り替えようとしているのではないでしょうか。私たちはこうした心理を「スイッチ系」と名づけました。
土肥:夕方、カフェに行けば、ボーッとしているサラリーマンがいますよね。仕事をしているわけでもなく、ただボーッとしている。彼らはスイッチをオフにしていたんですね。
中里:ですね。オンとオフを切り替えることで、心理的なバランスをとろうとしているのでしょう。
2つめの写真を見ていただけますか? これは20代の働く女性が選んだモノです。
土肥:道路で誰かが寝そべっていますね。危ないなあ……この写真を選んだ女性は、何かリスクを冒したい気分なのでしょうか?
中里:これは駅ビルを利用するときの気分ですね。駅で過ごすときには、計画をきちんと立てずに、偶然を楽しむような気分になっている。新しい出会いを潜在的に探しているのでしょう。
百貨店だと、例えば「靴を買う」といった目的がある人が多いですよね。でも駅は目的もなく来ている人が多い。モノを買いたいという人もいるのですが、別にいいモノがなければ買わなくて帰ってもいいと思っている。駅での買い物にはあえて目的を持たず、モノとコトの新たな出会いを求めようとする――そんな心理があるようですね。これを私たちは「出会い系」と名づけました。
土肥:なるほど。
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