愛されるブランドになるマーケティングの秘訣は「ギャップ萌え」?はてな×ライフネット生命セミナー

2012年10月4日、はてながマーケターや広報担当者向けに「はてな×ライフネット生命 ソーシャルメディアマーケティングセミナー」を開催した。セミナーでは、ライフネット生命のマーケティング担当者が、愛される企業になるためのキャンペーン施策やコンテンツ制作の考え方、ソーシャルメディアの運営体制などを語った。

» 2012年10月26日 08時00分 公開
[山田竜司,ITmedia]

 「『愛されるブランド』になるためのマーケティング施策とは何か」――。はてなとライフネット生命はともにインターネット上でのファンが多い企業として知られている。はてなの「はてなブックマーク」(はてブ)はインターネットで話題の記事を探すサイトとして定着し、ライフネット生命は「ハトが選んだ生命保険に入る」や、ライフネット生命×Webクリエイター「CONTENTS BATTLE!」などユニークなプロモーションでも有名だ。セミナーでは、はてなとライフネット生命がタイアップした「CONTENTS BATTLE!」の狙いや効果などが語られた。

インターネットユーザーを楽しませる「オモシロ企画」の効果とは

ライフネット生命 マーケティング部 部長代行 岩田慎一氏

 岩田慎一氏はライフネット生命のWebマーケティング施策全般を担当している。施策を考える上で意識しているのは「今、保険を検討している人」と「将来保険を検討する人」を分けて考えることだ。すでに保険ニーズが顕在化している人向けには、リスティングやSEOなどを用い、いかに効率よくコンバージョンさせるかという目標にむけてPDCAを回す、王道のWebマーケティングを実施している。一方、今は保険を必要としていない人向けには保険ニーズが顕在化した際、いかにライフネット生命を思い出してもらえるかを意識し、インターネットでバズになることを狙った「オモシロ企画」を実施している。果たして「オモシロ企画」にはどんな効果があるのだろうか。

 「先日、2年前にデイリーポータルZと実施した『ハトが選んだ生命保険に入る』を見てライフネット生命を知り、それがきっかけで保険に加入いただいた方の話を聞いた。そこで改めて実感したのは、コミュニケーションの深さの重要性だ。Webで『オモシロ企画』を実施すると、ユーザーは自ら『はてブ』や『いいね!』をつけて企画を拡散させ、友人にクチコミで伝える。自分で起こしたアクションや友達から薦められたコンテンツの閲覧は、例えば、バナーを10回見るという行為よりも、深いコミュニケーションをとることができ、会社を知ってもらったり、覚えてもらう上で効果が高いと感じている」(岩田氏)。

 インターネットのプロモーション施策では何らかのコンバージョンが大きな指標であることが多いが、ライフネット生命が考えているのはあくまで「保険ニーズが顕在化する時」に向けたブランディング施策だという。確かに40社以上あるという国内の生命保険会社全てを比較検討する人は少ないだろう。「保険ニーズが顕在化した際、いかに最初に想起してもらえる会社になれるかどうか。社長や会社を面白がってもらうことが、自社サイトにユーザーを呼び、会社の理念や商品に共感していただくことにつながっていく。また、ライフネット生命をおもしろい企画をやる会社として知っていただく一方、『安心して子どもを産み育てることができる社会を作りたい』という(真面目な)理念も併せて伝えることで、大きなギャップを感じ、結果として、会社のことを理解し記憶するユーザーが多いと感じている」(岩田氏)。「ライフネット生命への好感は、ネット用語のいわゆる“ギャップ萌え”(※意外性に魅力を感じること)に近いのかもしれない」(はてな山田氏)。会社としてぶれない経営理念やビジョンを示す一方で、「オモシロ企画」のような企画に参加して、人を楽しませるプロモーションを実施するギャップにユーザーは魅かれるのではないだろうか。

ソーシャルメディアと親和性の高い社内体制とは?

はてな 営業部マネージャー 高野政法氏

 出口社長、岩瀬副社長のTwitterや公式のFacebookなどの活動を通じ、ソーシャルメディアの使い方が巧みなことで知られるライフネット生命だが、社内体制はどのようになっているのだろうか。「PRは社員全員でするものという意識がある。社員が交代で毎日ブログを書いて情報発信しているので、弊社への転職者は『自分もブログやソーシャルメディアをするのだろう』と思っている」(岩田氏)。これに対し、はてなの山田氏は「はてなのマーケティング部や営業部でも、ネットの話題をキャッチアップする目的で、はてなブックマークの人気エントリーや新着エントリーを毎日チェックするようにしている。『ネットにどっぷり浸かること』がバズを引き起こすコンテンツを生み出す秘訣」と語っていた。

キャンペーンコンテンツを「残す」ことで得られるもの

はてなセリフと出口社長のキャンペーンを企画した、はてな マーケティング部 山田聖裕氏

 「ライフネット生命のバズを起こす」というテーマで、ネット企業数社がFacebookのいいね! 数を競う、Webクリエイター「CONTENTS BATTLE!」(2012年4月開始)という企画も話題を呼んだ。現在、キャンペーンは終了しているので投票はできないが、投稿コンテンツは今も残ったままだ。なぜキャンペーンのコンテンツを残すという判断をしたのだろうか。「最近、2〜3年前のコンテンツが改めてヒットするという現象を体験している。弊社には新卒募集用のサイトがあるが、あるブログの投稿から1000以上リツイートされ、改めて盛り上がった。新卒採用活動は終わっていたので本来は流入はあまりないのだが、サイトに載せていたコンテンツや動画を見てライフネット生命をより多くの人に知ってもらうことができた。多くのWebキャンペーンはキャンペーン終了後にページを閉じてしまうが、アーカイブとして残すことでまたどこかで火がつく可能性を感じている」(岩田氏)。ライフネット生命でWeb企画を実施する際、社長や副社長が登場するコンテンツが多く、サービスや商品についてほとんど触れていない。そのため、サービスのアップデートがあっても情報が変わることがないため、メンテナンスコストがかからない。実際、「はてなセリフ」の企画もキャンペーン終了当時の5月では15万ほどだったPVが、ブログやまとめサイトの影響で、10月現在では18万を超えているという。 

 「さまざまなマーケティング手法が話題になるが、キャンペーンなどで掲載されたコンテンツを残しておく、という価値が語られることは少ない。『はてなセリフ』を実施した後、ユーザーが投稿したコンテンツを利用して、ブログやまとめサイトでライフネット生命が紹介されることが増えた。ユーザーが自主的に作成したもので、好意的な内容が多い」(はてな高野氏)。こうして投稿された好意的なユーザーコンテンツは、マーケティングコミュニケーションにおいて、非常に有効なツールとなるだろう。

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