現在、同社はさらなるVoC分析に取り組んでいる。その例が、「ECサイト」や「SNS投稿」の分析だ。
これまでのFAQやコンタクトセンターへの問い合わせでは、自社製品を使用した顧客の声しか取得できなかった。しかし、ECサイトのレビューやSNS投稿を分析することで、他社製品に対する顧客の声も把握できるようになっている。
堀田氏は、SNS分析を実際の商品開発に生かした、コーヒーメーカーの事例を紹介してくれた。リニューアル商品の開発で企画担当者がサイズ設計を検討していた際、ダッシュボードによる競合分析が威力を発揮したという。
「前機種では、他社商品と比較して機能面で高い評価を得ていましたが、サイズに関してはネガティブな評価が目立ちました。そこを『感覚』ではなくきちんと数値化して確認できたことで、企画の立案から提案までスムーズにいったのです」(堀田氏)
分析結果を受けて開発したコーヒーメーカーは、サイズを大幅に縮小。「すっきり置けるコンパクトなサイズ感」として発売した。発売後の売れ行きもダッシュボードで継続して確認できるため、商品企画→開発→発売→販売確認というサイクル全体をデータで追えるようになった。
すでに高い成果を出している同社のVoC分析だが、生成AIが注目を集め始めている今、どのような方向に進化していくのだろうか。
堀田氏によると、現在はより効率的な分析に向け、生成AIを活用したさらなる高度化に取り組んでいるという。
「販売状況や販売ランキングなどの市況データ要約、FAQで解決できなかった問い合わせ内容の要約と改善案提案、FAQに寄せられる『役に立たなかった』という顧客コメントからの改善案提案など、さまざまなケースでAI活用を試行しています」(堀田氏)
例えば「FAQの品質向上」への活用について。従来は、顧客がFAQで解決できなかった場合、理由を特定するために担当者が全ての文章を読み込む必要があった。AIを活用することで、解決できなかった原因を自動抽出し、人間では見落としがちな細かな矛盾や不整合まで客観的に発見できるようになっている。より効果的に解決に導くFAQの構築が可能となった。
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