ウェルチのCMOが語るリブランディング 脱「ぶどうジュースの会社」なるか?Marketing Dive

Welch’s(ウェルチ)が製品の品揃えを拡大する中で、CMOのスコット・ウトケ氏はブランドの進化をけん引している。そのために採用するのが、ミレニアル世代などのグループにより響くマーケティング戦略だ。

» 2025年02月17日 09時00分 公開
[Peter AdamsMarketing Dive]
Marketing Dive

 近年、Welch’sのマーケティング戦略は大きく変化している。かつては、テレビCMで子どもたちが登場する広告で知られていたが、現在ではロゼトラック(移動式ワインバー)や、ニューヨークのボデガ(ワインや食料品を販売する雑貨店)の奥に隠された秘密のポップアップ秘密のバーを展開するなど、体験型マーケティングを積極的に取り入れている。

伝統があることは昔ながらのマーケティングに縛られる理由にはならない

 ミレニアル世代に寄り添う方向転換の背景には、「Welch’sと言えばぶどうジュース」というイメージを超えたブランド価値の構築がある。Welch’sはリブランディングを行い、製品ラインアップを拡充している。2024年8月には砂糖不使用のジュース「Zero Sugar」シリーズを発表し、缶入りカクテルの販売も開始した。マサチューセッツ州コンコードに本社を構えるWelch’sは150年以上の歴史を持ち、現在もブドウ農家の協同組合が所有している。しかし、それが「昔ながらのマーケティング」に縛られる理由にはならない。

 マーケティングの陣頭指揮を執るのは、スープ缶ブランドのCampbell’sやチーズブランドKraftなどのCPG(消費者向けパッケージ商品)大手を経て、約4年前にWelch’sに入社したCMOのスコット・ウッキー氏だ。Marketing Diveは2025年1月下旬、ニューヨークで開催されたWelch’sのポップアップバー「Zero Bodega Speakeasy」にて、ウッキー氏に独占インタビューを実施。ブランド戦略の方向性、代理店との関係、リテールメディア(小売企業が運営する広告メディア)について語ってもらった。

 なお、インタビュー後、Welch’sはスパークリングジュースのクリエイティブエージェンシーの選定を見直し、AOR(指定広告代理店)モデルからの脱却を決定。これまでリブランディングを含む広告業務はFitzcoが担当してきたが、今後はより柔軟な体制へとシフトするという。

 「ジュース、スプレッド(ジャムなど)、スパークリングなど、当社のさまざまなプラットフォームは、それぞれ異なるクリエイティブニーズを持っています。そのため、単一のAORとの契約から、より各カテゴリーのニーズに合ったパートナーを見つける方向に戦略をシフトしました。特にスパークリング事業では、新鮮なアイデアと創造性を取り入れ、ブランドをさらに成長させる機会を楽しみにしています」と、ウトケ氏はフォローアップメールで説明した。

 以下のインタビューは、内容を明確かつ簡潔に伝えるため、編集を施している。

10年前と比べて認知獲得のアプローチはどう変わったか

――Welch’sがブランドをリニューアルしてから1年ちょっとが経ちました。戦略的な目標は何でしたか。また、その目標の実現に向けた進捗状況はいかがですか。

ウトケ ブランドの見た目やメッセージが長いこと変わっていませんでした。消費者に話を聞くと、ブランドに愛着を持っている一方で少し堅苦しい感じを抱いており、「何か新しいことをしてほしい」と期待していることが分かりました。そこで、ブランドの再定義が必要だと考えました。

 まず着手したのがパッケージデザインの刷新です。全てのパッケージに本物の果物の画像を追加し、ロゴを変更し、農家のストーリーをパッケージ側面に載せるようにしました。これには1年半ほどかかりました。さらに、新たな広告キャンペーン「Let’s Fruit Stuff Up」を展開し、Welch’sを「ぶどうジュースの会社」という枠を超えた存在として認識してもらうことを目指しました。

 次に、イノベーションエンジンを始動させたいと考えました。まず新フレーバーの開発に着手し、その第一弾としてパッションフルーツのスパークリング(ジュース)を発売しました。そして最大の挑戦となったのが「Zero Sugar」シリーズのローンチです(外部リンク/英語)。これはWelch’sの歴史上、最も大きな投資を伴う新商品展開となりました。

Welch’s史上最大規模となった「Zero Sugar」のキャンペーンは2024年秋から全米で展開された(画像はWelch’sのプレスリリースより)

――10年前や15年前と比べて、大規模なメディア投資のアプローチはどのように変わりましたか。

ウトケ 基本的にはブランド認知と試飲機会の創出を目的としていますが、現在では大部分の広告費をデジタルに投資しています。故に、これまでとはやり方が異なります。

 もう1つのポイントは、消費者に製品への関心を高めるにはどうしたらよいかということです。例えば、テレビ広告も実施しましたが、ケリー・クラークソンとの提携による番組内スポット広告や、商品が登場する形の露出が中心です。また、ポッドキャストにも挑戦しました。ダックス・シェパードの「Armchair Expert」と提携し、「Zero Sugar」に関連した音声広告を展開しました。

 さらに、現在行っている「Zero Bodega」のような体験型イベントも実施しています。Welch’sはもともとユニークなブランドなので、その個性を生かしながら、新しい形で消費者にブランドを体験してもらうことを目指しています。

(続く)

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