CMOが生き残るための鍵は「生産性」――2025年のマーケティング予測10選【中編】Marketing Dive

不確実性が高まる中でもマーケターは生産性を高め、成果を出す必要がある。「Marketing Dive」による10の予言の中編をお届けする。

» 2025年01月18日 14時00分 公開
Marketing Dive

 世界の広告費が1兆ドルに近づくなど、マクロの状況は好調に見える。しかし、CMO(最高マーケティング責任者)は十分なリソースを与えられていない。規制が急増する中でのデータ管理など、さまざまな課題もある。米国の政権交代など外部環境の変化も無視できない。

 ますます不確実性が高まる中でもマーケターは生産性を高め、成果を出す必要がある。先に進むためには道しるべが必要だ。「Marketing Dive」による10の予言の中編をお届けする。

2025年のマーケティング予測10選


マーケティングにおいて「生産性」がますます優先される

予言3

CMOは膨れ上がる任務を管理するために生産性を優先する


 より少ないリソースでより多くの成果を上げなければいけないプレッシャーが強まる中で、CMOは、生産性向上にさらに力を入れることが期待されている。従来のブランド構築に専念するような狭い枠組みでの運営に戻るという期待は脇に置かれるだろう。CMOが膨れ上がる業務を遂行したいのであれば、この変化を受け入れる必要がある。

 McKinseyのパートナーであるビリャナ・ツベタノフスキー氏は「かつてのマーケティングが大文字の『M』で始まるMarketingだったとすれば、今は全部が大文字のMARKETINGになったという感覚です。つまり、CMOの役割が爆発的に広がっているということです」と言う。

 Gartner for Marketersのバイスプレジデント兼主任研究員のユアン・マッキンタイア氏によれば、CMOにとって最も重要な資質の一つは、協調性と商業志向のマインドセットだ。Gartnerの調査では、マーケティングの意思決定者の55%が、自分たちのキャンペーンの投資対効果を十分に正当化できていないことが「ときどきある」または「常にある」と回答している。これが、成長への注力がこれまで以上に重要視される理由だ。

 「多くのCMOが同じ問題に悩まされています。それはFOFO(Fear of Finding Out)と呼ばれ、発見されることへの恐怖を意味します。朝起きて、ファネルの上部または下部で3000万ドルまたは4000万ドルを無駄にしていたことにに気付くのは、決して良いことではありません」とマーケティング支援会社Knownの共同創設者兼社長であるロス・マーティン氏は語った。

 コンサルティング会社Spencer Stuartによると、2024年のCMOの離職率は例年並みだったが、この役職に就く人の多くはAIがもたらす最大のチャンスの一つに気付いていない。McKinseyの別の調査結果によると、現在生成AIのユースケースを拡大しているマーケティング担当者の数は、依然として1桁台前半にとどまっている。

 「誰もが生成AIについて話していますが、うまく活用できている人はまだほとんどいません」と、Spencer Stuartの北米におけるマーケティング、営業、コミュニケーション担当責任者向けコンサルティングを率いるリチャード・サンダーソン氏は、メールで述べた。

予言4

ソーシャルメディアの流行がマーケティングの手法として定着する。


 ソーシャルメディアの世界ではTikTok禁止の可能性が迫り、X(旧Twitter)からのユーザー離脱が続き、AIへの注目が最高潮に達するなど、不確実性の波に直面している。しかし、それでも広告主たちはこのチャンネルへの投資を減らしてはいない。米国におけるソーシャルメディア広告支出は、2025年に820億ドルを超え、前年の750億ドルから増加すると予測されている。

 ブランドがソーシャルメディアでの成功を追求する中で、ニッチなクリエイターとの関係を深めたり、TikTok Shopを通じたソーシャルコマースへの大規模な投資を行ったりすることが、今後のトレンドになると予想されると、Billion Dollar Boyの戦略シニアマネージャーであるクリストファー・ダグラス氏は述べた。同氏はまた、「brat summer」のような一時的なソーシャルメディアの流行がより多くのブランドに取り込まれ、アーンドメディアの潜在能力を引き出すために活用されるだろうと予想している。

 また、α世代のような注目されるオーディエンスにリーチすることを期待して、ブランドは従来のソーシャルメディアでの存在感をさらに押し広げようとしている。その一例が、現在注目されている「アンヒンジド(無軌道)」なコンテンツの制作であり、これが長期的な戦略に影響を与える可能性がある。

 「α世代に対して、非常に本物らしく、飾らず、『私たちはブランドではなく、仲間だ』という姿勢で関わることの価値が、より認識されていくと思います」と、ダグラス氏は語った。

 インフルエンサーエージェンシーのBillion Dollar Boyが実施した調査(外部リンク/英語)によれば、広告主の70%が今後1年で長尺コンテンツの制作を増やす計画を立てており、長尺コンテンツへの注力もも見込まれている。

 「2025年に長尺コンテンツを優先することは、ニュースレターを購読し、長時間の動画を視聴し、長めのポッドキャストエピソードを進んで聞くような、高いエンゲージメントを持つオーディエンスとブランドがつながる助けになるでしょう」と、Billion Dollar Boyのタレントパートナーシップディレクターであるソフィー・クラウザー氏はメールでコメントした。

予言5

ファーストパーティーデータが引き続き重要視される中、コラボレーションが鍵となる


 Cookieのない未来という予測は、2024年7月にGoogleがChromeでのサードパーティーCookieの廃止を取りやめ、オンラインプライバシーに関する「新たな道」を模索すると発表したことで、大きな打撃を受けた。ターゲティングとトラッキングの未来を見極めるために何年も取り組んできた広告主、代理店、アドテクプロバイダーにとって、このニュースは衝撃的なものだった。

 「その日、私の魂の一部が文字通り死んでしまいました。本当に残念なことです。しかし、Cookieの廃止は行われていないものの、私たちは以前と同じように効果的に事業を継続できるよう、将来を見据えた取り組みをしなければなりません」と、独立系メディアエージェンシーのNovusでデータ戦略およびイノベーション担当シニアバイスプレジデントを務めるマリ・ドクター氏は語る。

 Googleの次の一手が何であれ、プライバシー規制は今後も進化し続けるだろう。連邦の制定があってもなくてもだ。故に今後は既存の顧客への理解を深めるだけでなく、より広範な層の行動を把握するためにも、安全で倫理的なファーストパーティーデータの収集を優先する必要性がある。

 「マーケターの仕事は少々複雑になりますが、同時に楽しくもなります。なぜなら、地理、郵便番号、DMAを利用するような、昔ながらのマーケティングのやり方に戻るようなものだからです。私たちは長い間ワンツーワン(のターゲティング)を模索してきましたが、今はそれを少し解きほぐす必要があります」(ドクター氏)

 データプライバシーに関する懸念とファーストパーティーデータの必要性が高まり続けていることから、データクリーンルームが再び脚光を浴びる可能性があるが、マーケターはそれが万能薬ではないことを理解する必要がある。テクノロジーのためのテクノロジーだけを追求したデータクリーンルームは「分析麻痺」につながる可能性があるとドクター氏は説明する。

 「『クリーンルームに投資しよう』ではなく、『何を解決しようとしているのか』に投資する必要があります」とドクター氏は語った。

予言6

ロイヤルティープログラムとマーケティングのさらなる連携


 ファーストパーティーデータに対するより大きなコントロールを奪い取ろうとする動きにより、ブランドはCRM(顧客関係管理)、CDP(顧客データプラットフォーム)、およびそれらの機能をサポートするパートナーシップエコシステムに関連するマーケティングテクノロジーを再考するようになったた。マーケティングチームは、2025年に競合他社から抜きん出るため、電子メールなど、これまで魅力がなかった顧客維持チャネルへのアプローチをより創造的にする必要がある。

 「CRMとロイヤルティープログラムの連携や、過去の顧客に再度購入してもらうための取り組みにますます重点が置かれています」と、オンライン食料品マーケットプレイスHive Brandsのマーケティング担当副ディレクターであるマルコ・ブスタマンテ・ナドー氏は語る。ナドー氏は、より多くのマーケターがCRMとロイヤルティーをブランド中心の視点で捉え、情報を提供してくれる顧客に価値を提供し始めていると付け加えた。

 しかし、Forrester Researchによれば、米国のB2C企業の10社中8社のCMOは、ロイヤルティーとマーケティングテクノロジーに関し、依然として別々のデータソースに依存している。チャネルの重複を排除することは、今後数カ月間でより高い効率性を実現する上では比較的容易な方法かもしれない。

 Forrester Researchのバイスプレジデント兼主席アナリストであるジョー・スタンホープ氏は「本当の狙いは、ロイヤルティとマーケティングの取り組みを支えるデータを同期させることです。顧客インサイトとエンゲージメント履歴を共有し、一貫性のある確かな顧客プロファイルを持つことが重要です」と語る。

 スタンホープ氏によると、マーケティングとロイヤルティーの融合により、データとアクティベーションパートナーシップに対するマーケターのアプローチも再構築されている。CMOがより多くのデータ関連の業務を担当するようになる中、代理店はCRMなどの分野でサービスを強化している。

 「これはある意味で、マーケティング戦略のより広範な変化を示している。単なるキャンペーン的な考え方ではなく、カスタマージャーニーを考えるようになってきているのだ」とスタンホープは語った。

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