MFA(Made For Advertising)サイトの本質的な問題点とは何か。マーケターはMFA排除のために何ができるのか。Index Exchange最高顧客責任者のジェシカ・ブレスラフ氏に話を聞いた。
MFA(Made For Advertising)サイトの氾濫はデジタル広告のエコシステムを破壊しかねない深刻な問題だ。広告表示だけを目的とした低品質なWebサイトが優良なパブリッシャーが得るべき収益をかすめ取り、広告主の投資をムダにする。
世界最大級の独立系アドエクスチェンジ企業であるIndex Exchangeにとっても、MFAサイトの存在は看過できない問題だ。同社はMFA排除にどう取り組んでいるのか、最高顧客責任者を務めるジェシカ・ブレスラフ氏に話を聞いた。
――プログラマティック広告業界におけるIndex Exchangeの立ち位置について、あらためて教えてください。
ブレスラフ 当社はあらゆる画面、あらゆるフォーマットを通して、パブリッシャーには収益の向上を、マーケターには消費者へのリーチをもたらすマーケットプレイスを提供しています。私たちは、広告主とパブリッシャーのエコシステムにハーモニーを取って価値を生んでいくことを重視しています。今Index Exchangeとして非常に強化している分野の一つが、プレミアムな入札に対して直接的な関係性を構築していくということです。 そのためにMFAをどこまで削除できるかが非常に重要だと思っています。
――そもそもMFAの問題点とは何でしょうか。
ブレスラフ まず、業界全体にとって、デジタル広告の効果を脅かすものであるということです。価値創造を妨げるMFAは業界にとって非常に破壊的なものです。また、パブリッシャーにとっても大きな課題です。広告のサプライチェーン全体にMFAサイトが浸透することで、プレミアムなサプライからMFAサイトに広告費がどんどん移行しているのが現状です。そのため、われわれIndex ExchangeはとにかくMFAをなくすべく、積極的に行動を取る必要があると考えています。
――クリックベイトのような無価値なコンテンツが増えることは、消費者にとってもストレスになりますね。
ブレスラフ MFAがわれわれに突きつけている課題はさまざまです。MFAがもたらすパフォーマンスというのはバニティメトリクス(虚栄の指標)にすぎません。マーケターがMFAの表層的な数字に惑わされれば、サプライの価値を見誤ることになります。 また、本来であれば然るべきところに表示されるべきブランド広告が非常に低品質で粗悪なサイトに掲載されているのも非常に大きな課題だと思っています。
――ブランドセーフティーやアドフラウドなど、デジタル広告の品質はここ数年、広告主を悩ます大きな課題です。MFAは従来とはまた違う問題があるのでしょうか。
ブレスラフ MFAは従来とは若干違う問題であると私は思っています。というのも、MFAサイトは詐欺サイトや無効なトラフィッカーとしてリストアップされないことが多いのです。信じられないほど低品質でユーザーエクスペリエンスも最悪でも、実際にインプレッションを生み出しているところが厄介です。MFAについてはいくつかの団体が共同でスタンダードを作ろうと試行錯誤していますが、いまだに標準的な定義というものがありません。ただ、やはり業界が一丸となって、しっかりと規制をしていくことが必須だと思っています。
――なぜ今MFAが急に増えてきているのか、背景についてどうお考えになりますか。
ブレスラフ 一つの要因として、生成AIの台頭があると思います。非常に簡単に何千ページものコンテンツをどんどん作り上げてしまう。われわれとしてはしっかりポリシーを持って、テクノロジーと人の相互作用を駆使し、エコシステムからMFAを排除していきます。
――MFA対策として具体的にどのようなアクションを取ればいいのでしょうか。
ブレスラフ いくつかステップがあります。まず1つ目が、SSPでしっかりと意思決定をして、アドエクスチェンジからそのMFAを排除していくことです。これは、メディアに対しての支出をプレミアムのパブリッシャーのみに絞っていくということでもあり、Index Exchangeが踏み出した重要な一歩だと自負しています。2つ目に、バイサイドがドメインリストからサイトリストへ移行していくということがあります。これは非常に複雑なアクションではあるのですが、MFAをしっかりと排除してコントロールしていくという意味では、必須の取り組みになると考えています。3つ目に、業界間における協力体制をしっかりと築いていくことも重要なポイントだと思っています。 まさに今こそがアクションを取るべきときです。Index Exchangeとしては、今申し上げた全てのステップに対してコミットしています。
――業界全体での取り組みが重要であり、広告主も状況が改善するのをただ待っていればいいというわけではないのですね。
ブレスラフ そもそもメディア予算をコントロールしているのは広告主です。DSPなど、どのパートナーと組むのかも広告主で自ら選べることです。強い問題意識を持って、MFAを完全になくすべく、さまざまな意思決定をしていくことが重要だと考えております。広告主がまずしなければいけないのは、ご自身の広告予算が何に使われているのか、しっかり理解するということ。多大な広告支出がプレミアムなパブリッシャーに然るべき形で使われることで、ジャーナリズムがしっかりと機能して、投資したものが投資しただけの効果を生むという視点を持っていただくことが大切かと思っております。
――プレミアムなパブリッシャーを低品質のMFAから守るという視点も重要だと思います。しかし一方で、最近では既存の著名なパブリッシャーのトラフィックを悪用してMFAと変わらないような質の低いコンテンツを供給していた例もあったようですが。
ブレスラフ Index ExchangeはMFAが入ってこないよう、ドメインに対する監査を続け、ツールと人材をしっかり投入しています。これは継続的なシナリオです。私たちは常に疑わしいコンテンツをレビューし、モニタリングする必要があると考えています。どんなサイト、どんなパブリッシャーから供給されたものであれ、MFAの居場所は一切ないということは、はっきりと申し上げておきます。
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