JAROに寄せられた「広告への苦情」は50年分でどれくらい? 業種別、媒体別の傾向は?「苦情の50年史」を公開

設立50周年を迎えた日本広告審査機構(JARO)が、これまでに寄せられた苦情を取りまとめた「苦情の50年史」を公開した。

» 2024年10月02日 19時00分 公開
[ITmedia マーケティング]

 日本広告審査機構(JARO)は10月1日、設立50周年を記念して、これまでに寄せられた広告に関する苦情を取りまとめた「苦情の50年史」を公開した。

 民間の広告自主規制機関として1974年度にスタートしたJAROが初年度に受け付けた苦情は54件。それが2017年度には1万件を超え、直近の2023年度は1万874件だった。50年間累計では約26万件の苦情がJAROに寄せられたことになる。

50年間の苦情件数推移(画像提供:JARO、以下同)

10年刻みで見る苦情トレンド コロナ禍を節目に変わったこととは?

 初年度は8月末に事務局業務を開始し、秋口には苦情が寄せられ始めた。初年度に受け付けた54件の苦情・問い合わせの内容は、消費者を誤解させるような「うそ・大げさ・まぎらわしい」広告に関するものが多くを占めた。その後、受け付け件数は徐々に増加し、1990年代にはテレビや折込の苦情が急増した。2000年代にはブロードバンド、スマートフォンが普及し、その後の広告・表示の状況を変えていく大きなきっかけとなった。2010年前後はリーマンショックや東日本大震災があり、一部の苦情が増加したものの、全体的には減少となった。しかし、直近の10年間では違法なインターネット上の広告・表示が急増し、新型コロナ期のメディア接触の増加もあって、2020年度には1万5100件の最多件数を記録した。

 なお、2014年度にそれまで試験運用していたWebフォームからの受け付けを正式に計上したため、その後の受け付け件数が大きく伸びた(試験運用期間は2006年9月から2014年3月までで、その間の受付件数は計1万4371件)

 媒体別の苦情件数の推移を見ると、初期は新聞が最多だったが、1990年度にテレビが新聞を超え、1993年度から折込も急増した。2003年度以降はテレビの1位が続き、右肩上がりだったインターネットが2019年度に1位となった。

 業種別では、当初は不動産、食料品(健康食品含む)、旅行、人事募集など「ウソ・大げさ・まぎらわしい」広告が多かったが、不快・子どもに見せたくないなどの広告表現に関するものも増え、現在では年度にもよるが、両者の差は縮まっている。

 10年刻みで見たトレンドは以下の通りだ。

  • 1974〜1983年度 体制確立期:第一次・第二次オイルショック、激しい物価高騰、環境問題などが起こり、消費者運動も活発化した時期で。法令が新設・改正され、業界の自主基準作りや企業の消費者窓口の設置が進んだ。
  • 1984〜1993年度 苦情伸長期:昭和から平成へと元号が変わり、初めて消費税が導入された時期であり。苦情の受け付け状況は1984年度1390件から1993年度3725件へ、10年間で3倍近くに伸びた。業種では人事募集、内職、会員募集などが多く、求人や内職の募集に見せかけ、弱みにつけこんで金銭をだまし取ろうという詐欺的な手口が横行した。
  • 1994〜2003年度 苦情伸長期2:インターネット黎明期に当たる時期で、Windows 95の登場やモバイルの3G、ADSLのサービス開始によりインターネットが普及し、電子商取引(EC)が本格化していった。JAROも2001年度に分類コードを改定し、媒体別「インターネット」を新設した(それまでは「その他」に計上。2001年度のインターネットは238件)。
  • 2004〜2013年度 苦情安定期:2011年3月の東日本大震災により多くの企業がCMを自粛し、団体のCMが繰り返し放送される事態となった。「CMがしつこい」との声が多数寄せられるとともに、根拠なく放射性物質への効果をうたった商品の苦情も見られた。また、この時期は通信サービスに関連するものも目立った。携帯電話の複雑な料金プラン、インターネット回線やIP電話の「工事費無料」などである。消費者行政にも大きな変化があり、2004年に消費者保護基本法が消費者基本法に改正され、2009年に消費者庁、消費者委員会が設置された。2013年には健康食品表示の指針となる「いわゆる健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」も公表されている。
  • 2014〜2023年度 ネット苦情急増期:インターネット広告費がテレビ広告費を超えた2019年度にJAROの苦情受け付け件数も同様にインターネットがテレビを上回った。特に同年度は前年度比42%増、翌2020年度は36%増と急増した。しかし、2021年度には一転減少し、その後はインターネットとテレビの苦情件数は同水準となっている。業種別では、デジタルコンテンツ(ゲームやマンガアプリなど)の性的表現や恐怖表現に継続して苦情が寄せられた。また、美容・健康商材を中心に詐欺的な定期購入契約が急増した。ECサイトに誘導する広告などにはアフィリエイターが関わることが多く、JAROでも消費者に注意喚起を行った。新型コロナウイルス感染拡大も大きな変化をもたらした。メディア接触時間の増加、ネット上の不適切な広告・表示の増加により、2020年度にはインターネット上の化粧品、健康食品、オンラインゲーム、配信サービスなどを中心に苦情が急増し、受付件数は1万5100件と最多を記録した。2020年度には悪質な事例の増加によりJARO審査結果分類基準を改定し、最も重い「警告」よりさらに強く適正化を求める「厳重警告」を新設した。運用初年度の2020年度は「見解」27件中、厳重警告は15件で、その14件にアフィリエイトプログラムが関わっていた。広告主だけでなくアフィリエイターに対しても「見解」を発信した。

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