サードパーティーCookieの廃止が迫る今、あらためて注目を集めるのが「コンテクスチュアルターゲティング」だ。具体的にはどのような技術なのか。マーケター視点でパフォーマンスへの影響を解説する。
サードパーティーCookieの廃止が目前に迫っている今、マーケターはデジタル広告のターゲティングにおいて従来同様の精度を維持させるためにどのような手法が存在し、それらがどれほどパフォーマンスに影響があるのかを理解する必要がある。この連載では今世の中に普及し始めているCookie代替手法について、その内容を解説すると同時に、当社マイクロアドの顧客事例も紹介していく。
今回取り上げる「コンテクスチュアルターゲティング」とは、広告の配信先となるWebサイト内のコンテンツを解析し、内容に合った広告を掲載するための技術である。DSPなどとは基本的な考えが異なりユーザーをターゲティングしないため、サードパーティーCookieのような識別子は必要としない。
この技術自体は2000年代からすでに存在しており、決して新しいものではない。それがなぜ最近になって再度注目を集めているのかといえば、主に2つの理由がある。
1つ目は、この連載のテーマでもあるサードパーティーCookieの廃止である。従来のWebマーケティングで主流となっている「行動ターゲティング」は、基本的にサードパーティーCookieに依存することで費用対効果の高い広告配信を実現してきた。今後その根幹が崩れることで、既存の広告パフォーマンスへの影響が懸念される。しかし、コンテクスチュアルターゲティングであれば、先述の通りサードパーティーCookie廃止の影響を受けることはない。つまり広告パフォーマンスをこれまで通り維持することができる。
2つ目は、技術の進化による精度の向上である。コンテクスチュアルターゲティングには記事内に含まれているキーワードそのものを指定するだけでなく、記事全体の文脈を読み取って関連性の高さを判断し、ターゲティングを行う方法なども存在している。デジタル広告におけるRTB(リアルタイム入札)のエコシステムでは、0.1秒にも満たないわずかな時間でコンテンツ内容を読み取り、最適な広告を判断する必要がある。近年のAI技術などの発展により、コンテンツの中身を読み取る精度が上がっていることで、結果的に広告効果の改善につながっている。
では、実際にデジタル広告の運用において、コンテクスチュアルターゲティングはどのように活用されているのか。当社マイクロアドでの事例を紹介しよう。
この手法の特徴の一つが、ユーザーのモーメントすなわち興味の瞬間を捉えられることだ。マイクロアドでは2022年2月に広告配信プラットフォーム「UNIVERSE Ads」においてコンテクスチュアルターゲティングの提供を開始して以来、既に200を超える商材で利用実績がある。ユーザーが関連する記事を閲覧している、つまり興味を持っている瞬間を捉えて広告配信を行うことでCTRなども向上し、サイト内のセッション率(※)を約200%改善した事例もある。
※広告を経由したサイト(LP)へのユーザー来訪率。
当社は非常に多くのキーワードや興味カテゴリをあらかじめ用意しているため、広告主の業界や業種に偏りはなく、さまざまなマーケティングシーンでコンテクスチュアルターゲティングが利用されている。
この手法で広告効果をより高めるためには、商材に適したユーザーとの接触タイミングを考えてプランニングすることが重要である。例えば自動車の広告であれば自動車メディアやレンタカーの情報サイトへ、コスメの広告であれば美容情報をまとめたメディアへ配信を行うといったことだ。
あるアルコール飲料ブランドの訴求では、アルコール関連の記事だけでなくユーザーがお酒を飲むシーンを連想しやすいレシピ投稿サイトなどへの広告配信を中心にプランニングを行った。広告配信の結果、KPIであったリーチ単価が目標に対して260%と大幅達成し、ブランドリフトにおいてもプラス5.4%という好結果となった。
このように、ただ広告を配信するだけではなく、どのようなコンテンツが広告効果の最大化に寄与するかを考えたプランニングが重要である。
ここからは、コンテクスチュアルターゲティングを利用する際の注意点に触れていく。
まず1つ目が、従来の行動ターゲティングと比較してデモグラフィック属性(年齢・性別)などのターゲティングについては、広告の精度がどうしても落ちるという点である。男性が触れやすい記事、女性が触れやすい記事などは存在しているものの、コンテクスチュアルターゲティングで捉えるのはあくまで”誰かがメディアに訪れた瞬間”のみだ。そのため、サードパーティーCookieなどを用いて過去の行動履歴を参照してデモグラフィック情報を推定しているターゲティング手法と比較すると、判定の精度は落ちる傾向にある。商材によってはデモグラフィック情報が重要なこともある。そのような場合は、広告効果を最大化するために他の技術を組み合わせた配信を行う必要がある。
潜在層や新規ユーザーへの訴求が目的である場合にも注意が必要だ。興味を持っている瞬間を捉えることで反応率を高められるのがコンテクスチュアルターゲティングの特徴だが、これは逆に言うと、興味を持って関連するメディアを訪れているユーザーにしかリーチできないということでもある。広告の効率化を求めるあまり商材に関連性の高いコンテンツばかりに絞って配信を行ってしまうと、配信が顕在層に偏り、新規ユーザーへのリーチを広げることが難しくなる。広告効果の最大化はもちろん重要だが、そればかりを求めるのではなく、リーチ効率の最大化との両方を考えたプランニングを行うことが重要である。
今回は、以前から活用されてきたコンテクスチュアルターゲティングについて、その特徴と活用方法について解説した。昨今のデジタルマーケティング業界において、サードパーティーCookieの廃止の影響は決して小さいものではなく、一つの手法で全てを代替できるものは存在しないだろう。コンテクスチュアルターゲティングもあくまで一つの手段でしかない。基本的には「いつ」「誰に」「どんな」広告を届けるかを考え、それを実現できる技術がどれなのかを正しく理解し、活用しながらマーケティングを行っていく必要がある。
次回は近年採用する事業者が増えている「共通IDソリューション」について、その特徴と活用方法、当社の導入事例を交えて紹介する。
小林 匠太郎
こばやし・しょうたろう マイクロアド プロダクト戦略部 部長。2014年よりマイクロアド入社。入社後は営業本部にて西日本統括などを歴任し、2023年よりPostCookie対応の責任者として営業本部より異動。自社プロダクトであるUNIVERSEの企画、推進を担う。
マイクロアドは、ビッグデータを基盤としたデータプラットフォーム「UNIVERSE」を軸に、広告配信プラットフォーム「UNIVERSE Ads」と、媒体社の広告収益化プラットフォーム「MicroAd COMPASS」を展開している。ポストCookie時代へ向けた対応として、Cookieを代替する各種ソリューションを自社のプラットフォームへ順次導入している。
詳細はこちら→マイクロアド Post Cookieソリューション情報サイト
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