マーケティング職のDEIに逆風 なぜ多様性が低下しているのか?Marketing Dive

DEIへの攻撃が業界に影響を及ぼしているようだ。ANAのボブ・リオディスCEOは「揺らいではならない」と訴えるが……。

» 2024年03月12日 08時00分 公開
[Peter AdamsMarketing Dive]
Marketing Dive

 全米広告主協会(ANA)、包括的多文化マーケティング連盟(AIMM)およびSeeHerの最新年次報告書で、マーケターの多様な人種の割合が昨年減少し、増加傾向にあった数年来の傾向が逆転したことが明らかになった。

 2022年には多様な人種が広告業界のほぼ3分の1(32.3%)を占めていたが、2023年には30.8%に減少した。ヒスパニック系およびラテン系従業員の割合は、2022年の10.9%から2023年には9.5%に減少し、米国人口に占める同グループの割合18.73%との差が拡大している。

それでも女性マーケターの活躍は進む

 ただし一部の分野では進展が見られる。シニアレベルのマーケティング職の民族的多様性は27.9%に達し、この6年間の調査史上2番目に高い数値になった。女性も引き続き広告・マーケティング職をけん引し、2023年には過半数を占めている。

 ANAのマーケティング人材のリプレゼンテーション(※)に関する最新の評価はDEI(多様性、公平性、包括性)が非難の的になっている新たな兆候を示している。マーケターは2020年の人種平等を求める大規模な抗議デモをきっかけにDEIを優先課題に掲げたが、米国内の論争が激化するにつれ、このコンセプトは激しい反撃を受けており、一部のブランドは政治運動の矢面に立たされている。

※編注:組織の人材構成が人種や性別などの多様性を正しく反映していること。

 その結果、多くの最高ダイバーシティー責任者が冷遇され、マーケティング部門がDEIの取り組みを後景に置き去りにしていることをANAの報告書は示している。同時に、景気変動が原因でブランドや代理店ではレイオフが行われ、リプレゼンテーションに悪影響を与え、前進を妨げる可能性がある。

 ANAの報告書は、2023年に経験したリプレゼンテーションの減少を実質的なものと位置付け、これまでの傾向を大きく覆しているため、状況を是正するよう責任者に促している。マーケターの多様性は、2019年の27.6%から2022年には32.3%に増加している。

 「[多様性、公平性、包括性、帰属意識]に対する長期的なフォーカスが揺らいではならないことは明らかだ」と、ANAのボブ・リオディスCEOは報告書に添付された声明で述べた。この調査は、女性のリプレゼンテーションに焦点を当てた業界団体の部門「SeeHer」と、より広範な多文化および包括的なマーケティング目標に焦点を当てた「AIMM」とで提携して実施された。

 「この調査結果は、私たちのコミュニティーが多様性をさらに強化し、多様性が今後も全ての人にとって重要な人材戦略であることを裏付けている」とリオディス氏は続けた。

 2023年のマーケティング・広告の業種別では、アジア系が10.3%、ヒスパニック系またはラテン系が9.5%、アフリカ系アメリカ人または黒人が7.2%だった。これらのグループの中で、アジア系従業員だけが米国の人口で占める割合より多い。ANAが引用した国勢調査データによると、全米の約12.05%が黒人またはアフリカ系アメリカ人だ。

 AIMMの共同設立者であるギルバート・ダビラ氏は声明で「この調査結果は、業界におけるDEIの現状を明らかにし、多様な人材を採用し、惹きつけ、維持するために努力しなければならないことを物語っている。消費者との確かなつながりを促進し、創造性と革新性を育み、最終的にはビジネスの成長を促進するために、業界が多様な労働力を育成できるようにすることは、私たちの共同責任だ」と述べた。

 マーケティング分野でのDEIのマクロ的なイメージは課題に直面しているが、トップレベルでは前進が見られた。シニアレベルのマーケティング職におけるリプレゼンテーションの躍進とともに、CMOは17.3%の民族的多様性を達成し、ANAがこの調査を開始して以来最高の数字となった。

 また、ANA理事会および業界団体の一部のメンバー企業が共有する多様性ベンチマークによれば、シニアマーケティングリーダーの半数以上(57.7%)が女性であり、これも調査史上最高の数字となった。また、新入社員の女性比率は68.9%と過半数を占め、マーケティング・広告が依然として女性にとって魅力的なキャリアパスであることを示している。

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