2024年、広告業界において生成AIはますます活用が進む可能性がある。Googleもその恩恵を受けようとする1社だ。だが生成AIには広告主に対するリスクもはらんでいる。
調査会社Forrester Research(以下、Forrester)の調査レポート「Predictions 2024: Media And Advertising」によると、企業の収益が安定し、経済の不確実性が後退しているため、最高マーケティング責任者(CMO)は楽観的で投資の準備が整った状態で新年を迎えることになりそうだ。同社は、2024年を「大手メディアが活気を取り戻す瞬間」と表現し、ここ数年の不安を振り払う準備が整ったマーケティング状況を描いている。マーケターは失敗を覚悟でリスクを取り、人工知能(AI)技術やゲームなどの分野で新しいアプローチを試そうとするだろう。だがそのほとんどは既に、支配的なメディアパートナーの支援を受けている。
大統領選挙や夏季オリンピックのような大きな周期的イベントなどに後押しされる2024年の米国広告市場は、マーケターにとってチャンスと障害の両方をもたらすだろう。Forresterはこの点について、政治分野におけるディープフェイク広告を懸念している。同社は、サプライサイドとデマンドサイドのプラットフォームがこの問題に対処する直接的な手段を講じるまで、ブランドやその他の肖像が流用、悪用され、「危機的なレベル」に達する可能性があると指摘する。ブランドが2024年に「なりすまし」されることを避けるために、広告プラットフォームに広告の内容を確認するクリエイティブスキャンを要求することを提案した。
ディープフェイク広告で悪用される可能性があるにもかかわらず、2024年は生成AIに対するブランドマーケターからの投資がさらに増える可能性が高い。Meta Platforms、Google、Amazon.comなどのプラットフォームもAIを活用した広告機能を強化している最中だ。Forresterは「Googleは広告主とユーザーの両方にとって『真実の情報源』であり続けるため、生成AIによってウォールドガーデンの周りの“堀”を深くする態勢を整えている」と指摘する。
Forresterの別の調査によると、Webを利用する成人の73%は、疑わしいChatGPTの回答を確認するためにGoogleを頼りにしている。そのためGoogleは、ChatGPTの統合によってMicrosoftのBingに一部のクエリを奪われたとしても、検索における支配的なプレーヤーであり続けるために生成AIを使用する可能性が高い。Forresterはマーケターに対し、このような変化を踏まえてSEOのコンピテンシーを向上させ、全体的な検索マーケティングを実践するよう提案している。
生成AIに関する初期の実験では、好ましくない生成結果や、事実と異なる情報を生成する「ハルシネーション」がソーシャルメディアで広まることが示唆されてきた。生成AIの急速な普及には落とし穴がないわけではない。それでも、AIに関する意思決定者の3分の1以上(37%)は、「マーケティングコンテンツの作成」が今後12カ月の間、企業における生成AIの最も重要なユースケースになると回答している。Forresterはこうした結果を基に、「少なくとも1人のマーケターが、AIを使ったことでスーパーボウルや夏季オリンピックなど広告の大舞台でつまずき、慎重に行動しなかったことを公に謝罪しなければならなくなる」と予想している。
(「TikTok、CTV、ゲーム Z世代の心をつかむ最適解は?――Forresterの2024年広告業界予測【後編】」に続く)
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