激動する広告業界において、今後より重要な役割を果たすことになると考えられる「リテールメディア」とは?
Eコマース事業者を含む小売業が提供する広告サービス。購買に近い接点で消費者にリーチすることで、効果の高い販売促進やブランド認知を実現するものとして期待される。小売業者の視点からは、自ら広告サービスプロバイダとして機能することで、新たなマネタイズの機会とするメリットがある。
リテールメディアはEコマースを展開するWebサイトやモバイルアプリ、店頭ディスプレイ(デジタルサイネージ)、その他の小売りチャネルにおけるさまざまな広告を含む。
購買データをはじめ、デモグラフィック、回遊行動など、小売業が保有する豊富なファーストパーティーデータを活用することで、個々のブランドがターゲットとする消費者にリーチし、パーソナライズされた広告機会を提供することが可能になる。また、購買意向が強まる場所に広告を出稿することで、売り上げへの直接的な貢献が期待できる。また、広告接触から購入までの履歴を可視化することで、広告主はキャンペーンの効果を正しく計測することが可能になる。こちらは主にオンラインで期待される役割だが、リアル店舗においてもIoTやコンピュータビジョンなどの技術を使った行動解析に挑むサービスも表れつつある。
調査会社eMarketerによれば、2022年の米国におけるリテールメディア広告の市場規模は408億ドル(約6兆円)。前年比31.4%の高い成長率を記録している。CARTA HOLDINGSがデジタルインファクトと共同で実施した調査によると、日本における同年のリテールメディア広告市場は135億円。2026年には805億円規模に拡大する見込みだ。
メディアとして価値を発揮するためには、リーチ可能なオーディエンスとして一定のボリュームが求められる。このため、大手Eコマースプラットフォームや小売業大手がサービスを提供することが多い。
米国で有名なサービスとしてはAmazon.comが提供する「Amazon Ads」やWalmartの「Walmart Connect」、Targetの「Roundel」、食品宅配大手Instacartの「Instacart Ads」、などがある。
日本で使えるサービスとしては「Amazon Ads」や楽天の「RMP - Connect」などの大手プラットフォームの他、Criteoの「Criteoリテールメディア・ソリューション」やNTTドコモ子会社DearOneの「ARUTANA」など、小売業者を束ねたアドネットワークも選択肢に数えられる。
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